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ばんぱいあヴァンパイア  作者: 葉月
番外編 Povestea suplimentar
53/109

瀬川空

番外編『Povestea suplimentar』


吸血鬼さん。

の、話ではありません。

すみません。書きづらいんです。


横道のが楽しい。と思いPovestea suplimentar話を色々書いてたら収集がつかなくなってきました。


一回目『瀬川空』なのですが。


二回目三回目と色んな人が続いちゃう感じになっちゃったので、この話は後程移動させます。


『瀬川空』終わり後、


吸血鬼さんの話が始まります。











『進藤は消えた』

『何よ、消えたって。意味分かんない』

『空ちゃん………』

『…何なのよ。私にはさっぱり分からないわ!進藤さんが消えたってどういう事?昨日はいたじゃない!学校にも来てたじゃない!鎹君、貴方昨日進藤さんと一緒だったんじゃないの?何よ消えたって。意味分かんない』

『空ちゃん…、ちょっとま』

『瑛士君が私を止める権利なんてないっ。瑛士君も何か知ってるんでしょう?鎹君と一緒。…みんな、皆知ってる。私だけが蚊帳の外。…私だけが何も知らないなんてもう嫌。私だけが何も知らずに何もしないだなんて、もうたくさんっ!!』







もうたくさんだ。

秘密も、嘘っぱちも、

私だけが知らない真実も。


皆が隠す何かを私だけが知らない現実も、もうたくさん。



「空ちゃん!」


鎹君から話を聞いた後、怒って飛び出してきた私を瑛士が追いかけてくる。


「空ちゃん、ちょっと待って!」

「待たないわよ!この嘘つきっ!」


私は真剣な話をしたのに。

いなくなった進藤さんが、どうしていなくならないといけなかったのか。いなくなった進藤さんのために、私が出来ることはないかって。

私には何も言わない、こんないなくなり方なんて絶対に許さないって思って。


だから、聞いたのに。


あろうことか、鎹君、そして瑛士までもが私に嘘っぱちを吐いた。


進藤さんは『吸血鬼』なんだって。




「空ちゃん!」

「しつこいわねっ!もう嘘つきには何も聞かないわよ!」


吸血鬼、って。

嘘をつくにも、もっと別の上手い嘘があるだろう。上手い言い訳があるだろう。

それを二人は『吸血鬼』の名を出した。


バカにするのもいい加減にして。


「空ちゃん!」と瑛士に腕を掴まれる。振り返り瑛士を見る。私の腕を掴む、そんな瑛士の顔を見ていたら悲しくなってきて、そして胸が苦しくなる。


「…瑛士君がそんな嘘、つくとは思わなかった」


いつだって真面目な瑛士。

ドジな所や抜けてる所は多々あるけど、私にはいつだって真摯に付き合ってくれていたのに。

そんな瑛士が進藤さんのことに関しては私に言わないことがある。

そして今日、その進藤さんのことについて、瑛士は最低な嘘をついた。


「進藤さんが吸血鬼だ、なんてどうしてそんな最低な嘘つくの?」


私が吸血鬼が好きだから。

吸血鬼の話が好きだったから。

だから、吸血鬼の名前を出せば騙されるだろうって、そう思ったの?


「言い訳言うぐらいなら、もうちょっと頭使いなさいよ」

「言い訳でもないし嘘でもないよ」

「進藤さんが吸血鬼だって?そんなの嘘以外に何でもないじゃない。本当に私には言えないことだって言うんなら、そうハッキリ言えばいいじゃない。そんな分かりきった出鱈目言われるぐらいなら、まだ黙ってて貰っていた方が良かったわ」


進藤さんの秘密も。

瑛士や鎹君が隠す何かも。


知りたい。

知りたいし、分かりたいし解りたい。


だから許せないのだ。

そんな私の気持ちを『進藤さんは吸血鬼』だと訳の分からない法螺話でバカにした瑛士や鎹君が。


そして傷付きもした。

瑛士がそんなことを私にしたことに。

誰よりも一緒にいて、誰よりも側にいてくれて、誰よりも私のために動いてくれた、私にとって誰よりも大事な人である瑛士がした行為。


瑛士がそれをしたということが私をさらに傷付けた。誰よりも信じてた瑛士だったから、私は酷く悲しいんだ。


「もういいわよ。何も聞かないから」


何も聞かない。

私はこの先ずっと色んな不信感を持ったまま過ごして行くんだ。


「ちょっと空ちゃん」

「嘘っぱちも秘密ごとも隠し事も、いっぱいすればいいじゃない」

「空ちゃ」

「私の両親みたいに、いっぱいいっぱいすればいいじゃないっ!」

「空ちゃんっ!!」


嘘も秘密も、私のため?

そんなの、ソレが嘘じゃない。

私のためにと言い訳していた両親は、自分に都合のいいように物事を進めたかっただけだった。

ずっと、貴女のために離婚するのを我慢してた?

何ソレ。

貴女が高校を卒業したら離婚する?

違うでしょ。

私が卒業どうの、なんて問題にもなってない。両親はずっと、私のことなんて何も見てないし考えてもないし、分かろうともしていなかったじゃない。

それを今更私をだしにするのはやめてほしい。


薄汚れた汚い腐った言葉の数々。

体裁と見栄と詭弁で綴られた両親の話。

そんな渦の中から助け出してくれたのは瑛士だった。

瑛士が私を引っ張りあげてくれた。


「瑛士君は信じてたのに」


瑛士『を』私は信じたのに。


「空ちゃん。僕は空ちゃんにそんな酷いことしない」

「ついさっきしたじゃない」

「進藤さんが吸血鬼なんだって話は嘘じゃない。本当のことだよ」

「…………」


嘘が下手な瑛士。

その瑛士が『本当のこと』だと口にする。

だけど。


「瑛士君、嘘が上手になったね」


嘘だ。

進藤さんが吸血鬼だなんて嘘でしかない。


だって、吸血鬼だよ?

私の友達が吸血鬼だった、なんて言われても、そうなんだ、だなんて信じられるわけないじゃない。

一緒に勉強して、一緒に遊んで、同じクラスで授業を受けて、同じように笑ったり怒ったりしてたあの進藤さんが。


何かあるんだ、とは感じてたけど、それが『吸血鬼』だなんて。


「進藤さんと一緒にいて、嘘のつき方覚えたの?」

「空ちゃん。僕は嘘なんてついてないよ」

「…………」


真っ直ぐにその視線を私に向けて、瑛士は一度息を吐く。


そしてまた私を見て口を開いた。



「好きな人に、僕はそんなことしない」




『好きな人』



私はその言葉に目を見張った。



言った瑛士の顔はだんだん赤くなっていく。が、私に向けた視線はそらさなかった。


真っ直ぐに。

真摯な瞳で瑛士は私を見る。


「僕は、空ちゃんが、す、好きだからっ、つ、付き合いたいって、お、おおお思ってる女の子に、そ、そんな空ちゃんに、酷いことなんて、し、しないっ」


そう吃りながら瑛士が言う。

だけど、やっぱり耐えられなかったのか瑛士は私から目を反らしてしまった。顔は真っ赤だ。

そんな瑛士に、私は言う。

意地悪したかった訳じゃないんだけど。


「…瑛士君、…今、何て言ったの?」


瑛士が「ぅえっ!?」と変な声を出す。


「い、ぃえっと、だ、だからっ」


二度も言うのは恥ずかしすぎて駄目なのか、瑛士はいつも以上にあたふたとし、しどろもどろと何か色々言いながら、結局その言葉は言ってはくれなかった。



不器用な瑛士君。

嘘が下手な瑛士君。

真面目で、いつだって私の側にいた瑛士君。

信じられる人。



私は瑛士君からのその言葉を、ずっとずっと待ってたんだ。



「瑛士君」

「な、なにっ?」

「遅い」

「…うっ」


でもそんな瑛士君だったから、私は好きになったんだよ。

















「どうよ」

「何がよ」


お店のカウンター。

私は目の前で私のために飄々とお酒を作ってくれている進藤さんに、にやりと笑って言ってやる。


「私と瑛士君の馴れ初め話」

「いい話だったわ」

「それだけ?」

「何が?」


はい、できた、と私の前にグラスを置く進藤さん。一口飲む。


「…微妙」

「作れと言っといて微妙はないでしょ」


色々注文つけて、進藤さんオリジナルなお酒を、と言ったら出てきたもの。微妙な味だった。注文をつけすぎたのかもしれない。


「でも私、いまだに半信半疑なんだけど。進藤さんって、本当に吸血鬼なの?」

「そうだよ」

「…本当に?」

「…瀬川さん、信じられないなら信じなくていいから」


その言い方は酷い。

私は進藤さんをじとりと見る。

こうして見ていても、進藤さんに私達と違うような所は全く見られない。吸血鬼、なんて所は少しも感じられない。


「吸血鬼なんだったら、もっとミステリアスな感じ出してくれれば分かりやすいのに」

「…………」


そんな無茶な、と進藤さんの無言な目は語っていた。



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