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ばんぱいあヴァンパイア  作者: 葉月
最終章 ツナグミライ
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携帯電話 vorbesc.鎹・進藤

つい6時間程前に即興で書いたので、話の内容と相違ないか心配だけど見直す気持ちは私にはない。その後の話に食い違いが出てきたら消してしまおう。それか、『もし⭕ボックス』的な話として置いておこう。


暗い話が続くので、楽しくない楽しくない、楽しい話書きたいなって思って思いついたから書きました。


時間軸的には、最終章入ってすぐ、ぐらいになるのかな。多分。


分かってる、分かってるよ。続きでしょ。

だってこっちのが楽しいんだもの。本編が暗いんですよ。暗いんだよ、お前ら。



「私は知ってるわよ」


俺の前に座る瀬川が、それが『普通』だとでもいうようにそう言った。喫茶店。俺達四人は勉強中。瀬川が携帯を弄り始めたのを見て、「そういえば」と思い聞いてみたのだ。


進藤も携帯を持ってるのか、と。


「俺は知らないぞ」


俺は知らない。

進藤の携帯番号もメルアドも。携帯を持っていた事さえ知らなかった。確か二年の最初の頃は持っていなかった筈なのだが。いつから持ち始めたのだろう。そんな俺の言葉に、進藤が口を開いた。


「教えてないからね」


進藤が教科書とノートから目を離さずに淡々とそう言い放つ。小日向が「そこ、間違ってますよ」と進藤に言う。「どこ?」と進藤は訝しみ顔だ。


教えてないからね、って。


「酷くないかっ!俺達友達だろ!」

「………」


進藤が白い目で俺を見る。

何だその目は。


「友達じゃなかった、ということね」


瀬川が椅子に凭れて携帯から目を離さず弄りながら冷たい声で言った。俺の隣で小日向が「空ちゃんっ」とたしなめるかのように慌てた様子で瀬川の名を呼ぶ。


「友達だと思ってたのは俺だけだと言う事かっ!」


あの時、「友達だろ」と言ったあの時から俺の中では友達関係が相互に築かれていると思っていたのに、まだ友達だと思われていなかったとは。まだ、友達だと思っていたのは俺だけなのか。


「…別に友達全員に教えないといけないわけでもないし」


進藤が言う。


「でも瀬川は知ってるじゃないかっ」

「…あのね、鎹君」


進藤が肘をついた手で頭を押さえる。


「というか、このメンバーの中で一番最初に知ってたの瑛士君だから」


やはり携帯から目を離さずに瀬川がそう言った。その言葉に一番最初に反応を見せたのは瑛士君こと小日向だった。ガタンッ、と体が椅子から少し浮く。


「ちょっ、空ちゃんっ!」

「何よ?本当の事でしょ」


じろりと瀬川が小日向を見る。


「そうなのか?」


ちょっと意外だった。俺は小日向を見る。


「いっ、いや、そうなんですけどっ、別にそれはそれでそれなんですよっ、別にこれと言った理由があったわけじゃなくてっ、何ていいますかっだから、別に僕はっ…」


あわわわわ、と何言ってんだかわからない小日向。結局何が言いたいのかわからない。進藤がため息を吐いた。


「小日向君には私が教えたの」


だからもういいだろ。勉強したいんだけど、と暗にその言葉に込めているようだった。


「瀬川には?」

「聞かれたから」


「聞いたから」と進藤の隣で携帯から顔を上げた瀬川が、にこりと笑顔で言う。その瀬川を進藤は睨む。


「俺には?」

「聞かれてないから」

「教えてくれ」

「………」


進藤は微妙な顔をして黙った。酷すぎる。


「友達だろっ!何で俺は駄目なんだよっ」


進藤はそんな俺から目線を逸らし、小さく「めんどくさ…」と言った。聞こえたぞ。声は小さかったが聞こえたぞっ。俺の耳はしっかりとその言葉を聞き入れたぞ。


「めんどくさいとか、…友達だろっ!」

「それが既にめんどくさい」


友達関係がめんどくさいと言うのか。


「酷いぞ進藤!小日向と瀬川には教えて何で俺には教えてくれないんだよっ!同じ友達だろっ!」


寧ろ瀬川より俺達の関係は長いはずだろ。一年の時、進藤と瀬川はそれほどの仲じゃなかったんだから。それに、吸血鬼のことも瀬川は知らない。知らないではないか。

すると瀬川がにやにやしながら口を挟んで来た。携帯は既に手には持っていない。


「そういえば進藤さん。あの『玲衣君』も進藤さんの携帯知ってるわよね?」

「…知ってるね」


進藤が諦めたかのように少ししてからそう呟く。玲衣も知っているらしい。本当に知らないのは俺だけではないか、と思ってしまうのも無理は無い。


「玲衣君も知ってるのか?」

「友達だからね」


俺はっ?!

と突っ込みたくなった。俺も友達だろ。友達だよな。友達だよなっ。


「教えてくれ」

「………」


やはり進藤は黙った。


瀬川の爆笑する声が店内に響き渡った。

















――――――――――――――――


「酷くないかっ!俺達友達だろ!」


私は鎹を見る。たかが携帯番号ではないか。何をそんなに熱くなっているのか。するとそんな鎹に「友達じゃなかった、ということね」と瀬川が余計な事を言った。勉強に飽きたのか、さっきから携帯を弄っている。


「友達だと思ってたのは俺だけだと言う事かっ!」と鎹。


だから、たかが携帯で何でここまで熱くなれるのか。携帯番号教えてないからって別に友達ではない、ということにはならないだろう。それに、別に鎹に教えなくてもこれと言って不憫な思いはしていないし。


「…別に友達全員に教えないといけないわけでもないし」

「でも瀬川は知ってるじゃないかっ」

「…あのね、鎹君」


どうしてお前はそんなに張り合う。

するとまた、瀬川が余計なことを言う。


「というか、このメンバーの中で一番最初に知ってたの瑛士君だから」


小日向がもの凄く動揺した。いや、別にそこまで動揺しなくても。それに、瀬川。瀬川が小日向を睨んでいる。やっぱりちょっと気にはしてたのね。そこ。


「小日向君には私が教えたの」


小日向を庇うように私は言う。


「瀬川には?」

「聞かれたから」


隣で瀬川が笑顔で「聞いたから」と言った。聞いた、というか無理矢理聞きだした、と言った方が当たっているのだが。教えるつもりは私には全く無かった。聞かれても最初は教えなかったのだから。


「俺には?」


鎹が言う。


「聞かれてないから」

「教えてくれ」

「………」


教えないといけないのだろうか。別にそこまで携帯使っていないのだが。それに…。


『友達だろっ』


鎹は何度も何度もそう口にする。もうホントどこまで気にいっているんだろう、と思うぐらい。

友達だから何だと言うのか。友達なら何が何でも教えなくてはならないのか。というか何度も何度も友達友達と、いいかげん煩かった。

それに、教えたら多分メールとか電話とか来るんだろうな…。この調子だと、何かいっぱい来そうだな…。


「…めんどくさ」


私は知らず呟いていた。鎹が耳聡くそれを聞いた。聞き流せばいいのに。


「めんどくさいとか、…友達だろっ!」


だからそれが既にめんどくさい。

そうこうするうちに、また瀬川が余計な事を言う。もう、絶対面白がっている。


「そういえば進藤さん。あの『玲衣君』も進藤さんの携帯知ってるわよね?」

「…知ってるね」

「玲衣君も知ってるのか?」

「友達だからね」


玲衣とはあれからも何度かメールのやり取りはしていた。


「教えてくれ」


鎹が言う。何かもう教えたら絶対めんどくさいメールとか電話とかありそうだから嫌だな、と思って私はその鎹の言葉に返事をすることなく黙った。



瀬川が爆笑した。


瀬川の爆笑する声が店内に響き渡った。






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