六話
私は二階の食堂に顔を出した。さっきの事があるから顔を出しにくいが仕方ない。
意を決して中を見ると大人と子供のエルフ達が抱き締めあっていた。どうやら解決したようだ。
「カイト」
「あ、アルとエーベ。色々とありがとう。迷惑かけたね」
「本当にな」
名を呼ばれ振り返るとアルシュタートとエーベハルトがいた。私がお礼を言うとエーベが疲れたように溜め息を吐いた。
「支店長に呼び出されたんだろ?どうだった?」
「全部話したけど信じてなかったよ。まぁ、私はどうでも良いけど」
「だろうな。あのオッサン厄介事は嫌いだからな」
だろうな。エルフがいることもよく思ってないだろう。人間はこれだから嫌いだ。
私の言葉にエーベハルトは納得したように頷いた。アルシュタートも苦笑していた。
「で?お前、これからどうするんだ?」
「定住地を購入してさ。今日出発してそこに行くつもり」
「そうか……って今日かよ!?」
「いくらなんでも早すぎない?」
エーベハルトに今後の事を聞かれたから素直に答えたけど、エーベハルトとアルシュタートに驚かれて溜め息を吐かれた。一秒でも早く出ていきたいんだよ、ここから。
「あの支店長の態度が気に入らなかったから、さっさと出ていきたい」
「性急だね、カイト」
私が溜め息を吐くエーベハルトと苦笑するアルシュタートを眉間にシワをよせて見ていると話しかけられた。
「あの……」
「はい?」
「貴女がカイト様で宜しいでしょうか?」
話し掛けてきたのは大人のエルフだった。その後ろに子供達が隠れるようにいた。
「はい。私はカイト・カミガヤと申します」
「私はフィオリーナと申します。この度は我が里を救って頂きありがとうございます」
「いえ、全てを救えず申し訳ございません」
「いいえ。里の者全てを救えなくても未来ある子供達が無事でした。それだけでも感謝せねばなりません」
自己紹介をした私は里の人を救えなかった事を謝罪した。それに寛容な態度で許すフィオリーナは大人だと思った。
「これからのご予定はいかがなさるおつもりですか?」
「子供達がいるので無理はしたくありません。ですが……」
フィオリーナの言いたいことはわかった。子供達がいるから動けないけど、人間と住むには抵抗があると。下手すると売られかねないよね……。仕方ない。私が保護するか。
「もし、宜しければなのですが……私と一緒に来ませんか?急用で本日発たねばなりませんが、いかがでしょう?」
「カイト!!お前何言ってんだよ!!」
「よろしいのですか?」
「構いません」
「では、お願いしますね」
決まった。エーベハルトの抗議も虚しく決まった。てか、決めてたんだろうね。こんなに早く決まらないよ。普通。
この光景にエーベハルトとアルシュタートは顔を見合わせため息と苦笑した。
「カイト、俺達もついていく」
「まぁ、構わんよ」
「じゃあ、僕達は荷物を取りに行ってくるから」
「うん。私は受付で支払いとかしてる。フィオリーナ達は私が連れていくから」
「じゃあ、一階でな」
決まってからの行動は早かった。アルシュタート達は荷物を取りに部屋へ行き、私はフィオリーナ達を連れて一階に行った。受付で支払いを済ませ換金してお金を引き出した。その間にアルシュタート達が降りてきた。
「終わったか?」
「うん、大丈夫。それでさ、お願いなんだけど、フィオリーナ達を連れて買い物してきてくれない?服とか食料とか。私は馬と馬車の手配してくるから」
「わかった。そっちは頼んだぞ」
「ん。お金渡しとくね。あ、序でに服屋でこれ引き取ってきて。じゃあ、また後で」
ギルドから出た私達はふたてに別れた。私は外門へ行き、エーベハルト達は買い物へ行った。いや、押し付けて逃げた私。後でなんか言われそうだ。