五話
「すみません」
「はーい……ってカミガヤ様、もう大丈夫なんですか?」
受付に誰もいなかったので声を掛けたら奥から受付嬢が出てきた。
「えぇ、体調はバッチリです。ご迷惑お掛けしました」
「大丈夫なら良かったです。運び込まれた時はビックリしましたよ」
「ご心配お掛けしました」
受付嬢は私を見て驚いた顔をしていた。私は苦笑をして謝った。
「あ、そうです。アルシュタート様からクエストのアイテムを受け取りました。中身を確認させていただきました。納品数もありましたのでクエストクリアとなります。ギルドカードを出していただいてもよろしいですか?」
「ありがとうございます。後でアルにもお礼言わないとな」
受付嬢が思い出したように私に報告してくれた。それに驚きつつもギルドカードを受付嬢に渡した。エーベハルトとアルシュタートには迷惑をかけた。迷惑料として小さい昌石を贈呈しなくては。
受付嬢はギルドカードの更新をして私にギルドカードを返してくれた。
「カミガヤ様、支店長がお呼びなんでご案内します」
「お願いね」
私がギルドカードを仕舞うと受付の内側にある水晶から文字が浮かび上がった。それを確認した受付嬢が私の呼び出しであると提示して案内してくれた。一階の受付の奥にある個室。受付嬢はその個室の扉をノックした。
「支店長、カミガヤ様をお連れしました」
「入りなさい」
「失礼致します」
「失礼します」
入室の許可が下り、部屋に入る。厳ついおっさんがいた。
「お前がカイト・カミガヤか?」
「はい」
「俺はこのネフィリアギルド支店の支店長アガレスだ。取り合えず座れ」
「失礼します」
「茶を頼む」
「はい」
厳ついおっさんもといアガレスから座るよう促され、受付嬢はお茶を淹れるよう指示され退出した。
「嬢ちゃん、昨日の事を聞いていいか?」
「エルフの里についてですか?」
「そうだ」
私は昨日の事を思い出しながら話始めた。
「そうですね。事の始まりは近くの森を出た所で巨大な鳥に出会したことです。その場では戦闘にならず、巨大な鳥は森の奥に逃げていきました。私はそれを追って辿り着いたのが火の海になっているエルフの里でした」
嘘は言ってない。ただもう一匹火の鳥が居ただけ。二匹まとめて締め上げたし、巻物もパピルス紙も回収したからあの二匹はもう出現しない。あるとしたら他の書物やレメゲトンから出てくる奴等だろう。
「その鳥はどうした?」
「倒しました。倒した後、鳥は消えてしまいましたが……」
「嘘をついているとは思わんが……」
私の話を聞いて渋い顔をしているが、冒険者になるのが何も初心者だけじゃないって気が付けよ。
アガレスの態度がムカついた。ここからさっさとおさらばしよう。そう決めた私の行動は早かった。
「まぁ、信じる信じないは支店長に任せますが。それより、私からお願いがあります」
「お願いだぁ?」
「はい。お願いは何処か誰もいない土地があれば紹介していただきたいのです」
「土地は何件かある」
アガレスは立ち上がって書類が詰まっている本棚からファイルを取り出した。それを差し出された。私がファイルを受け取り開くと結構な数の建物があった。そこに受付嬢がお茶を持ってきた。
「……これ、いくらになりますか?」
「それは千リラだ」
「はい」
ファイルを見ていたら丁度良い物件を発見した。どうやら何もない土地でしかも海の上。立地条件が悪すぎる。しかし、私には関係ない。値段的にはお買い得。購入することに決めた。それをアガレスに伝えてお金を渡した。
「確かに。この土地のクリスタルを持ってこさせよう。場所はキアラ海溝だ」
「わかりました」
アガレスは金額を確認して受付嬢にクリスタルを持ってくるように指示していた。受付嬢は部屋を出てすぐにクリスタルを持ってきた。
「これは土地を使用するための鍵だ。これにギルドカードを読み込ませれば所有権が移行する」
そういって私からギルドカードを奪ったアガレスはクリスタルに私の情報を読み込ませた。クリスタルの中に幾何学模様が刻まれ、返されたギルドカードにもクリスタルと同じ幾何学模様が刻まれていた。
「それでお前に所有権が渡った」
「ありがとうございます」
よし。ならば早くここから出ていくだけだ。
「ご用はそれだけでしょうか?」
「あぁ」
「では、失礼致します」
私は早々に部屋を後にした。