四話
「……」
目が醒めた。でも、まだ眠りたい。微睡みに身を委ねベッドで寝返りをうつ。そこではたと気が付いた。
ベッド?あれ?私って確かエルフの里でフェニックスと朱雀と戦ってた気が……いや、倒したな。で、倒した後に一枚パピルス紙が降ってきてレメゲトンだって気が付いて。もう一つは巻物が降ってきたんだよ、確か。それ回収して生き残りのエルフを捜して集めて治療して……記憶がない。ん?自力で帰ってきた?いやいや、そんなはずはない。んー?
私が回らない頭をフル回転させていると下から物音がした。物音が気になり机に置いてあった不思議ポーチと蒼杖槍とグリモワールを手にして部屋から出て下に降りる。それでこの場所がギルドであると気が付いた。どうやら音の発生源は二階にある食堂のようだ。
食堂に入ると子供と大人が対立していた。
「どうして僕達を助けたんですか?」
「俺達が到着した時には既に助けられていた。文句なら助けたやつに言いな」
「では、その方は?」
「ここにいる」
何やら不穏な空気になってきたので私が出ることにした。すると、冒険者と睨みあっていた子供が私の方を向いた。その瞳には憎しみが宿っていた。
「何故僕達を助けたんですか?」
「おや、君達は生きたくなかったのかな?」
「ッ!!仲間が死んだのに僕達だけ生きるなんて!!」
「……美しい仲間愛だね。だけど私、そう言うの嫌いなんだよね。何故かって?君達は親に守られ生き残ったんだ。親が君達に生きてほしいと願い守られた命だよ。それなのにここで死んだら親が体を張って守った事が無駄になる。君達は皆のために老衰してお土産話持っていかないと皆に怒られるよ」
若いね〜。まぁ、実際にまだ幼いけどさ。この子供達は自分達がどうやって助かったのか知らないからそんなことが言えるんだよね。親に守られて生き残った小さな命。その大切さと重さを理解してない。こう言う説教は私にはむかんのに。片っ端から殺すことしか脳にない私にはさ。
「貴方に!!残された者の気持ちがわかるんですか!?」
「……」
君達に言われなくても残された者の哀しみはわかってるよ。
私の心に闇が侵食する。そして、記憶(記録)を呼び覚ます。
何もしてないのに、存在するだけで、私から愛しい者を奪い、殺すのは誰だい?僕から、俺から、私から、全てを奪うのは君達だろう?まさか、忘れたとは言わせないよ。僕の、俺の、私の、子を殺したのは誰?妻を、夫を、殺したのは誰だ?私達が、僕達が、俺達が、何をした?殺してやる!!私から、僕から、俺から、全てを奪う者は殺してやる!!
「カイト!!」
「!?」
「おい、どうしたんだ?急に殺気をばらまくなんて……まだ本調子じゃないのか?」
どうやら思考が闇に呑まれていたようだ。殺気がただ漏れていたようで私に声をかけたエーベハルトや冒険者達は顔をしかめ、子供達は青ざめていた。失敗した。
「すまない、少し昔のことを思い出してしまった」
「昔って……」
「迷惑をかけたな」
「……」
深く追求されないように拒絶の言葉を口にする。それにエーベハルトは追求できず口を閉ざした。
「まぁ、とにかくだ。お前達の他に生き残った大人がいる。それと話をするといい。それでも死にたいなら私が殺してあげる」
「カイト!!いくらなんでもそれは!!」
「本人達が死にたがっているならそうさせればいい。私が殺せば冥王や死天使も文句は言わないよ」
エーベハルトの言いたいこともわからなくはない。それでも彼らが死を望むなら生かした私が殺すだけ。
「は?」
「私は受付に行くよ。後はよろしくね」
私は逃げるように食堂を後にして一階の受付に顔を出した。