エピローグ
しばらくして、彼は眠った。泣き疲れたようだ。寝たことをしっかり確認する。本当に幸せそうに寝ていた。
僕は、村で唯一電話をかけられるところへいった。公衆電話のようなものだ。
そこから、エルタ村に電話をかける。エルタ村にも、一ヶ所だけ公衆電話のようなものがあるのだ。
呼び出し音が数回なってから、エルタ村の村長が電話に出た。僕からの電話を待っていたのかもしれない。
「ロアです。」と言うと、村長は黙り込んだ。
僕は通話料が高いので、手っ取り早く終わらせるために、簡潔に話をする。
「彼…僕のところに残るそうです。…よかったですよ。意地でも村に帰りそうだったんで。
これで契約は完了ですね。明日には薬が届くと思います。
……彼には、あなたたちが彼を救うために村を追い出したと言っておきました。その方がいろいろと都合がよかったんでね。
彼は、あなたたちに愛されているとわかって…とても幸せそうでしたよ。
涙を流して喜んでました。本当にあなたたちのことが大好きだったんでしょう。
まさか、自分が病気が治る薬と引き替えに僕に売られたなんて。…夢にも思わないでしょうね。
まぁ…幸せですよね。結果的には、自分を犠牲にしてあなたたちを救ったことになるんですから。
彼にとってはこれ以上ないほど幸せで………きっと本望ですよ。
それから最後にもうひとつ。……安心していいですよ。彼が村に帰ることもなければ、あなたたちが生きていると知ることもないんですから。
彼はあなたたちにうられたんですから。僕がしっかり面倒をみますよ。…あなたたちの分も。
‥…彼は死ぬまでずっと……僕と一緒です。」