表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
BACK  作者: 松本 和
5/9

第4話

「ここに僕と一緒にいればいいんだよ。…一生。」

ロアは本気で言っていた。笑いながらの言葉でも、ナイフを押しつけられているような威圧感があった。



「い…いやだ!俺は…帰るんだから!…薬を持って、あの村に戻るんだ!」


あの村には俺の育ての親がいる。可愛がってくれていた近所の人がいる。友達もいるし先生もいる。



いくら暴力をふるわれたからって、それは変わらない。あの村に戻りたい。これは偽りなんかじゃないんだ。



「君がわかってくれるまで何回でも言うけど、君は村までたどりつけないよ。

途中で死んでしまう。」 


俺がここにのこると言わないからか、(たぶんそうだ)さすがのロアもだんだんとイライラしてきたようだ。


「…戻ったって、誰も君を歓迎しないんじゃないかな?追い出されたんだよ?…ケガをしながらだし、途中で死ぬ確率の方が高かったんだから……村の人たちは君が死んでも何とも思わないよ。」



「―お前に!……何がわかるんだよ!?」別にロアを殴ってやろうとか、そんなことを考えたわけではなくて……気付いたらそうしていた。自分をコントロールできない。



「さっきっからベラベラと!…お前は知ってるように思ってても、何にもわかっちゃいないよ!


わかってたまるか!俺がどんだけあの村好きかも…どんだけあの人たち好きかも…どんだけ村に戻りたいかも…お前は何もかもわかってないんだ!



わかったように言うなよ!お前にはわからないはずだろ?あの人たちにだって理由があったんだよ!?」



完全に抑えがきかない。本当は、ロアがあってるってわかってるんだ。ずっとわかってた。…酸性雨の中を歩いてるときにはそのことしか考えられなかった。



それでも…抑えずにはいられなかった。…俺はどこかで、それでも…と思っていたんだ。信じていたい自分がいた。



くそっ!なんでこんなことになるんだよ!…俺は目を力強くこすった。そうしなければ、涙があふれてしまうからだ。あわてて俺はロアに背を向けた。



俺におもいきり殴られたロアはしばらくだまって座っていた。俺に殴られて床に倒れこんだ状態から体を起こしただけの格好だ。


…やりすぎたかも。俺がロアに謝ろうか…と迷いはじめたときやっとロアが口を開いた。


「ねぇ。ちょっとこっち見てよ。」まったく怒っているという感じはなかった。だから俺は安心しきっていた。とりあえず謝るか…俺も悪かった。



振り向くか振り向かないか。というよりも、ロアが俺の頬を殴れるようになった瞬間だ。俺の頬に勢い良くロアのこぶしがぶちあたった。



油断しきっていたこともあって、俺はロアよりも遠くに吹っ飛んだ。…その結果、本でできたタワーにぶつかってしまった。



その衝撃で本の雪崩がおきて、俺はたちまち本に埋もれてしまった。殴られたのも痛かったが、この本もかなり痛かった。



俺は両手で必死に本をどかした。どうやらロアは手伝ってくれていないらしく、そのおかげで俺は、思っていたより長い間本に埋もれていなければならなかった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ