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拾った卵からヒヨコが生まれたが知らないばばあもきた。

作者: 碧凛睡
掲載日:2026/08/29

異世界に転生した私は、森の奥で小さな小屋を建てて暮らしていた。

魔法は少し使える。

料理もできる。

薬草にも詳しい。

ただ一つ問題がある。

「……この卵、何?」

ある日、森で拾った巨大な卵。

白くてつるつるしていて、私の腰くらいの大きさがある。

「食べられるかな……」

コンコン。

卵を叩いてみた。

すると――

コンコン。

中から叩き返された。

「…………」

もう一度。

コンコン。

コンコン。

「生きてる!?」

慌てて卵を床に置く。

すると卵が、

ピキッ。

「え?」

ヒビが入った。

ピキピキピキッ!

そして――

「ぴよ!」

黄色いヒヨコが飛び出してきた。

「…………」

「…………」

私とヒヨコは見つめ合った。

するとヒヨコが言った。

「腹が減った」

「しゃべったぁぁぁ!?」

「うるさい。頭に響く」

「ヒヨコが文句言った!」

「ヒヨコではない」

「どう見てもヒヨコだよ!」

ヒヨコは胸を張った。

「我は伝説の聖鳥である」

「……名前は?」

「ぴよ」

「結局ヒヨコじゃん!」

「違う!」

その時だった。

ドンッ!

突然、玄関が開いた。

「おーい!」

入ってきたのは、杖をついたおばあちゃん。

「……誰?」

「誰って、あたしゃこの森に八十年住んでるばばあだよ」

「自分でばばあって言った!」

ばばあはヒヨコを見る。

「ああ、孵ったんだね」

「知ってるの?」

「知ってるも何も、そいつの親を知ってる」

ヒヨコが固まった。

「……ばばあ」

「なんだい?」

「余計なことを言うな」

「お前、昔から生意気だねえ」

ばばあは杖でヒヨコの頭をコツン。

「ぴぎゃっ!」

「何する!」

「口の利き方を教えてるんだよ」

「ヒヨコに教育してる……」

私は呆然とする。

すると、ばばあが私を見る。

「ところでお嬢ちゃん」

「はい?」

「あんた、そのヒヨコを拾っただろ?」

「うん」

「じゃあ責任取らなきゃね」

「え?」

「そいつは一度懐いた相手から、絶対に離れない」

「……え?」

ヒヨコが私の足元にぴたっとくっついた。

「お前を母親にする」

「嫌だよ!」

「決定だ」

「勝手に決めないで!」

するとばばあが大笑いした。

「はっはっは!」

「何がおかしいの?」

「いやね」

ばばあはニヤッと笑った。

「その子を育てた人間は、必ず人生がめちゃくちゃになるんだよ」

「怖いこと言わないで!」

その瞬間。

小屋の外から、巨大な魔物の咆哮が響いた。

「グオオオオオ!」

「ひっ!」

私は震えた。

ばばあはため息をつく。

「また来たのかい」

「また?」

ばばあが外へ出る。

そして杖を一振り。

ドゴォォォン!

山ほどある巨体の魔物が、空の彼方へ吹き飛んだ。

「…………」

「…………」

ヒヨコが呟く。

「ばばあ、強すぎる」

「私もそう思う」

ばばあは何事もなかったように戻ってきた。

「さて、お茶でも飲むかね」

「どうしてそんなに平然としてるの!?」

「長生きすると慣れるんだよ」

ヒヨコが私の肩に乗る。

「母よ」

「母じゃない」

「腹が減った」

「さっき食べたでしょ!」

「成長期だ」

「どこが!?」

ばばあが笑う。

「ほら、お嬢ちゃん」

「何?」

「この世界で一番大事なのは、強さでも金でもない」

「……?」

ばばあはニヤリとした。

「図太さだよ」

「急に人生の先輩みたいなこと言う!」

こうして私は、

しゃべるヒヨコと、

最強のばばあと、

なぜか始まった奇妙な異世界生活を送ることになった。

――そして後日。

私は知ることになる。

このヒヨコが成長すると――

王国がひっくり返るほどの大騒動になることを。

そして、ばばあには――

さらに恐ろしい秘密があることを。

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