拾った卵からヒヨコが生まれたが知らないばばあもきた。
異世界に転生した私は、森の奥で小さな小屋を建てて暮らしていた。
魔法は少し使える。
料理もできる。
薬草にも詳しい。
ただ一つ問題がある。
「……この卵、何?」
ある日、森で拾った巨大な卵。
白くてつるつるしていて、私の腰くらいの大きさがある。
「食べられるかな……」
コンコン。
卵を叩いてみた。
すると――
コンコン。
中から叩き返された。
「…………」
もう一度。
コンコン。
コンコン。
「生きてる!?」
慌てて卵を床に置く。
すると卵が、
ピキッ。
「え?」
ヒビが入った。
ピキピキピキッ!
そして――
「ぴよ!」
黄色いヒヨコが飛び出してきた。
「…………」
「…………」
私とヒヨコは見つめ合った。
するとヒヨコが言った。
「腹が減った」
「しゃべったぁぁぁ!?」
「うるさい。頭に響く」
「ヒヨコが文句言った!」
「ヒヨコではない」
「どう見てもヒヨコだよ!」
ヒヨコは胸を張った。
「我は伝説の聖鳥である」
「……名前は?」
「ぴよ」
「結局ヒヨコじゃん!」
「違う!」
その時だった。
ドンッ!
突然、玄関が開いた。
「おーい!」
入ってきたのは、杖をついたおばあちゃん。
「……誰?」
「誰って、あたしゃこの森に八十年住んでるばばあだよ」
「自分でばばあって言った!」
ばばあはヒヨコを見る。
「ああ、孵ったんだね」
「知ってるの?」
「知ってるも何も、そいつの親を知ってる」
ヒヨコが固まった。
「……ばばあ」
「なんだい?」
「余計なことを言うな」
「お前、昔から生意気だねえ」
ばばあは杖でヒヨコの頭をコツン。
「ぴぎゃっ!」
「何する!」
「口の利き方を教えてるんだよ」
「ヒヨコに教育してる……」
私は呆然とする。
すると、ばばあが私を見る。
「ところでお嬢ちゃん」
「はい?」
「あんた、そのヒヨコを拾っただろ?」
「うん」
「じゃあ責任取らなきゃね」
「え?」
「そいつは一度懐いた相手から、絶対に離れない」
「……え?」
ヒヨコが私の足元にぴたっとくっついた。
「お前を母親にする」
「嫌だよ!」
「決定だ」
「勝手に決めないで!」
するとばばあが大笑いした。
「はっはっは!」
「何がおかしいの?」
「いやね」
ばばあはニヤッと笑った。
「その子を育てた人間は、必ず人生がめちゃくちゃになるんだよ」
「怖いこと言わないで!」
その瞬間。
小屋の外から、巨大な魔物の咆哮が響いた。
「グオオオオオ!」
「ひっ!」
私は震えた。
ばばあはため息をつく。
「また来たのかい」
「また?」
ばばあが外へ出る。
そして杖を一振り。
ドゴォォォン!
山ほどある巨体の魔物が、空の彼方へ吹き飛んだ。
「…………」
「…………」
ヒヨコが呟く。
「ばばあ、強すぎる」
「私もそう思う」
ばばあは何事もなかったように戻ってきた。
「さて、お茶でも飲むかね」
「どうしてそんなに平然としてるの!?」
「長生きすると慣れるんだよ」
ヒヨコが私の肩に乗る。
「母よ」
「母じゃない」
「腹が減った」
「さっき食べたでしょ!」
「成長期だ」
「どこが!?」
ばばあが笑う。
「ほら、お嬢ちゃん」
「何?」
「この世界で一番大事なのは、強さでも金でもない」
「……?」
ばばあはニヤリとした。
「図太さだよ」
「急に人生の先輩みたいなこと言う!」
こうして私は、
しゃべるヒヨコと、
最強のばばあと、
なぜか始まった奇妙な異世界生活を送ることになった。
――そして後日。
私は知ることになる。
このヒヨコが成長すると――
王国がひっくり返るほどの大騒動になることを。
そして、ばばあには――
さらに恐ろしい秘密があることを。




