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7.旅立ちと遺跡の足音

 夜明け前の微かな光が、ドリヴォルド大陸の東方の空に広がった。村の小屋から烟が細く立ち上がり、老人とライたちが、俺たちの旅の準備を手伝ってくれている。冷たい朝風が吹き、俺の白い髪が揺れ、額の角が微かに光を反射している。

「零様、ガレス様、これを持ってください」ライが走ってきて、二つの皮袋を俺たちに渡す。袋の中には、乾燥した肉、黒いパン、そして水差しが入っている。「爺さんが、遺跡地帯の道筋を地図に書いてあります。危険な場所には、印をつけてありますよ」

「ありがとう。お前も、村を守ってくれ」俺は皮袋を肩に掛け、ライの頭を軽く撫でる。少年は顔を赤らめて、ほんのり笑う。

 老人が近づいてくる。「中央の遺跡地帯まで、歩いて三日か四日かかる。途中には、黒牙の猟犬よりも強い魔物が棲んでいる。気をつけてくれ」老人は手から、古びた銅のアミュレットを俺に渡す。「これは、村の守りのアミュレット。闇の魔力を弱めてくれる。お前の魔力が暴走した時に、少しでも役に立てば」

「ありがとうございます」俺はアミュレットを首に掛ける。銅の冷たさが肌に伝わり、体内の魔力が少し鎮まるような感じがする。

 ガレスも装備を調えている。黒い鎧に光気を纏い、長剣を腰に収め、地図を手に持って確認している。「地図によると、最初の宿場は午後に到着するはずだ。そこで少し休み、明日遺跡地帯の入口に向かおう」

「うん」俺は頷く。体内の MP は 20/20 に完全に回復し、光気と魔力も安定している。戦いの疲れもすっかり取れ、冒険への期待が胸に膨らんでいる。

「さて、出発しよう」ガレスが先に歩き出す。俺は老人とライに振り返り、手を振る。「村は、お願いする」「お前たちも、無事に帰ってくるよ」老人が笑みを浮かべる。「真実を見つけて、世界を変えてくれ」

 俺は頷き、ガレスの後ろを追いかける。村の柵を越え、朝の光が照らす道を進む。背後には、村の灯りがだんだん小さくなり、やがて森の中に隠れて見えなくなる。

「お前は、この冒険が終わった後、何をするつもりだ?」歩きながら、ガレスが突然問う。「真実を知った後は……」俺は考える。「光と闇の無意味な対立を終わらせたい。魔族も人間も、不必要に戦う必要はない」

「俺もそう思う」ガレスは頷く。「教会の教えが偽りだとしたら、俺はその真実を、人間たちに伝えなければならない。勇者の使命は、人々を守ることだ。それは、光と闇の区別なく」

 俺はガレスを見て、少し笑みを浮かべる。勇者と魔族が、同じ目標を持って旅をする —— これは、誰も考えられない展開だ。だが、これが正しい道だと俺は確信している。

 朝の森は、夜とは全然違う雰囲気だ。鳥のさえずりが聞こえ、太陽の光が葉の間から差し込み、地面に斑模様を描く。魔物の気配は少ないが、俺たちは依然として警戒しながら進む。

「この森は、東方の連合領と中央の遺跡地帯の境界線だ」ガレスが地図を見ながら言う。「越えれば、人間の村は少なくなり、魔物や亜人が多くなる。さらに奥に進むと、古代の遺跡の廃墟が見え始める」

 俺は周りの風を嗅ぐ。魔族の鼻が、微かな闇の気配を感知する。「この方向に、闇の魔力の痕跡がある。ラザロスの手下か、闇の信者たちの足跡だろう」

「そうか。気をつけろ。彼らは、遺跡に先に到着している可能性もある」

 俺たちは、闇の気配を追いながら森の奥に進む。途中、数匹の魔物(オオカミの姿をした闇の獣)が襲いかかってくるが、俺の紫金色の光とガレスの光気で、すぐに退治した。

「お前の力は、だんだん安定しているね」ガレスは戦いの後、俺を見て言う。「最初は暴走するのが心配だったが、今は完全に制御できている」

「アミュレットのおかげかもしれない」俺は首のアミュレットを触る。「それに、お前がいるから、安心できる」

 ガレスは少し顔を赤らめて、咳をした。「…… 俺も、お前がいてよかった。魔族と勇者が手を組むなんて、以前は考えられなかった」

 午後の太陽が高く挂かった時、俺たちは森の出口に出た。その先には、小さな宿場が見える。宿場の周りには、少数の旅人や商人が集まっている。

「それが、途中の宿場だ」ガレスが指をさす。「ここで食事をし、休んでから、明日遺跡地帯に入ろう」

 俺たちは宿場に近づく。旅人たちは、俺の黒い肌と角を見て、少し警戒する表情を浮かべるが、ガレスの勇者の姿を見て、その警戒心を抑えている。

「二つの部屋と、食事をお願いします」ガレスが宿場の主人に話す。主人は俺を見て、少しためらうが、ガレスの光気を見て、頷く。「承知しました。部屋は二階に用意します。食事はすぐにお持ちします」

 俺たちは二階の部屋に入る。部屋は簡素だが、清潔で、外の風景を眺めることができる。俺は窓から外を見ると、宿場の外に、亜人の旅人(猫の耳を持つ女の子)が、魔物の素材を売っているのが見える。

「中央の遺跡地帯には、亜人たちも多く集まっている」ガレスが俺の後ろに立ち、同じ方向を眺める。「彼らは、遺跡に隠された財宝や古代の力を求めて、冒険している。一部の亜人は、遺跡の文字を読むことができるかもしれない」

「それなら、彼らに聞けば、ラザロスの足跡を知ることもできるかもしれない」俺は言う。

 その時、宿場の下から、喧騒が聞こえてくる。「闇の信者だ! 彼らが来た!」「魔物を連れている! 助けて!」

 俺たちは即座に窓から下を見る。宿場の入口に、黒いローブを身に纏った闇の信者たちが、数匹の魔物(黒い触手を持つ怪物)を連れて、旅人たちを襲っている。

「また彼らだ」ガレスは剣を握り、光気を集める。「ここで放っておけない。旅人たちは無辜だ」

 俺も手を握り締め、魔力と光気を調和させる。紫金色の光が手のひらから輝き始め、体内の魔力は安定している。

「分かった。一緒に戦おう」

 俺たちは部屋から飛び降り、闇の信者たちに向かって突っ込む。信者たちは、俺たちの出現を見て、驚いた表情を浮かべる。「魔族と勇者? なぜここに?」

「お前たちが無辜の人々を傷つける限り、俺たちは止める」俺は冷たい声で答える。

「愚かだ! ラザロス様の計画を邪魔する者は、全て滅ぼす!」一名の信者が叫び、手から黒い魔力を発射する。

 ガレスは光の盾を張り、魔力の攻撃を防ぎ、俺は紫金色の光を球にして投げ出す。光の球が信者に命中し、彼は悲鳴を上げて倒れた。

 魔物たちは凶暴になり、俺たちに襲いかかる。触手が高速で伸びてくるが、俺は光気で触手を切断し、ガレスは剣で魔物の頭を斬り落とす。

 戦いが始まった。宿場の旅人たちは、俺たちの戦いを見て、驚きと感謝の表情を浮かべる。魔族と勇者が手を組んで、闇の信者を倒す姿 —— これは、彼らにとっても、見たことのない光景だろう。

 俺は戦いの中で、信者の口からラザロスの名前を聞くたび、胸の奥の決意が強まる。この信者たちを倒し、明日遺跡地帯に入り、ラザロスを見つける。光と闇の真実を知るため、俺はこの冒険を続ける。

 闇の信者の悲鳴、魔物の咆哮、光の輝き ——宿場の広場で、光と闇の戦いが再び繰り広げられた。これは、中央遺跡への前哨戦であり、俺たちの冒険の新たな一頁だった。

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