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3.魔物襲来と、魔族勇者の戦い

 老人の手はしわだらけだけど、温かくて力強い。俺の黒い手と、老人の白い手が重なる瞬間、胸の奥の光気がさらに輝き、魔族の魔力も静かに呼応しているような感覚がした。

「魔物は、毎晩村の周りをうろついている」老人は手を引き戻し、眉を寄せて話す。「数日前には、畑の作物を全部食い荒らし、村人もけがをした。俺たちは農夫ばかりで、剣を握る力もない」

 周りの村人たちは、老人の話を聞いて、それぞれ顔を曇らせる。警戒する目は俺から離れたけど、依然として距離を置いている。魔族だという烙印は、一瞬では消えないのだろう。

「魔物は何だ?」俺は声を落として問う。ステータスの魔力が蠢いているのを感じ、戦う覚悟が胸の中で高まってくる。前世は平凡だったけど、今の俺は魔族であり勇者である。この力を使って、この村を守ることができるはずだ。

「黒い毛を生やし、牙が鋭く、足は四本で走る怪物だ」老人は指を村の外の森の方向に指す。「大きさは犬よりも大きく、速くて凶暴。俺たちは、夜は家に閉じこもっているだけだ」

「それは、『黒牙の猟犬』だ」

 突然、頭の中にその名前が浮かんだ。前世の記憶にはないけど、この世界の常識として、自然に知識が入ってきた。魔族の本能か、勇者の経験か、分からないが、この魔物の弱みも同時に浮かんだ ——「光に弱い」。

「光に弱い?」俺はその思いを声に出す。老人は驚いて俺を見る。「お前は、その魔物を知っているのか? 村の人は、ただ『黒い悪魔』と呼んでいるだけだ」

「偶然、聞いたことがある」俺は嘘をつく。この世界の知識が突然入ってくることを説明するのは面倒だ。「その魔物は光に弱い。勇者の光気で退治できるはずだ」

「勇者の光気……」老人は俺の金色の瞳を見つめ、頷く。「そうだ。昔見た勇者も、光の力で魔物を退治してくれた。お前が、俺たちを救ってくれるのか」

「俺は魔族だ」俺は再び言う。「光の力を使えるけど、どこかで魔力が暴走するかもしれない。村を傷つけてしまったら……」

「それは心配しなくていい」老人は笑みを浮かべる。「お前の目には、悪気がない。勇者の心が宿っていることは、俺が見抜ける」

 老人の言葉を聞いて、胸の中の不安が少し和らいだ。魔族としての罪悪感と、勇者としての責任感が混ざり合い、俺を前に進ませる。

「分かった。今夜、魔物を退治する」

 俺の言葉を聞いて、村人たちの表情は少し緩んだ。警戒する目の中に、少しの期待が混ざっているのが分かった。

「お前には、何か必要なものがあるか?」老人が問う。「水と少しの食料だけでいい」俺は答える。「武器は…… 俺の力で十分だ」

 老人は頷き、村の中に向かって叫ぶ。「ライ、食料と水を持ってきて!」

 すぐに、十代の少年が走ってきた。少年は俺の黒い肌と角を見て、少し怯えたように顔を逸らすけど、手に持った袋と水差しを俺に渡す。

「すみません……」少年は小声で言い、すぐに老人の後ろに隠れた。

 俺は袋を受け取り、中には黒いパンと乾燥した肉が入っている。水差しは陶器で、冷たい水が満たされている。

「ありがとう」

 俺は水を一口飲み、パンを少しかじる。干いた喉が潤い、体の力も少し戻ってきた。ステータスの HP が 15/15、MP が 20/20 のままだ。戦いには十分な状態だ。

「魔物は、日が暮れたら現れる」老人は俺の側に立ち、夕暮れの空を見上げる。「村の外の柵のそばに待っていてくれ。俺たちは、家の中からお前を支える」

「分かった」

 俺は食料を袋に入れ、村の外に向かう。村人たちは、俺の背中を見送る目線を感じる。その目線の中には、警戒、期待、不安 —— 様々な感情が混ざっている。

 村の外には、木で作られた低い柵が囲まれている。柵の外は、薄暗くなった森が続いている。俺は柵のそばに立ち、周りの動きを確かめる。

 風が吹くと、森の中から悪臭が漂ってくる。それは、腐った肉のような悪臭で、俺の魔族の鼻が敏感に反応する。

「来た」

 俺は手を握り締める。手のひらから、黒い魔力が微かに漏れ出す。同時に、胸の奥から温かい光気が広がり、魔力を制御しているような感じがする。【矛盾の共存】—— このスキルが、俺の力を調和させてくれているのだろう。

 森の中から、ガオーという凶暴な叫び声が聞こえてくる。足音が速く、複数の魔物が近づいてくることが分かる。

「三匹…… か」

 俺は目を凝らす。薄暗い中に、黒い影が三匹、柵の方向に向かって走ってくる。それは、老人が話した通り —— 黒い毛に鋭い牙、四本足で走る猟犬の姿。大きさは中型の犬よりも大きく、目は血走っている。

「黒牙の猟犬……」

 俺は一歩前に踏み出す。魔物たちは、俺の姿を見て、さらに凶暴に叫び、加速してくる。

「さあ、始まる」

 俺は深呼吸し、胸の奥の光気を呼び出す。金色の光が手のひらから輝き始め、黒い魔力と混ざり合い、紫金色の光に変わる。

「これが…… 俺の力か」

 驚きながら、光を魔物たちに向ける。紫金色の光が射線のように飛び出し、一番前の黒牙の猟犬に命中する。

「ガオーー!」

 魔物は悲鳴を上げ、体が光に包まれて、すぐに灰になって消えた。

 残りの二匹は、仲間の死を見て、一時的に足を止めた。だが、凶暴さが勝って、再び俺に向かって襲いかかる。

「速い」

 俺は身をかわす。魔物の牙が俺の肩に擦り過ぎ、悪臭が鼻につく。俺は反撃するため、手の光を強め、もう一匹の魔物に打ち込む。

 この時、魔力が突然暴走した。黒い魔力が光気を超えて膨らみ、紫金色の光が乱れ、俺の手から爆発するように広がる。

「っ……!」

 俺は胸が締め付けられるような痛みを感じ、一歩後ろに下がる。MP が 5/20 に下がったことを感じる —— 魔力の暴走で、力を浪費してしまった。

 残りの一匹の黒牙の猟犬は、その隙に俺に襲いかかる。鋭い牙が俺の腕に近づいてくる。

「くっ!」

 俺は即座に光気を集中させ、腕に光の盾を張る。魔物の牙が盾にぶつかり、ガサッと音が鳴る。牙は少し折れ、魔物は痛みで後ろに引けた。

「機会だ」

 俺は魔力を抑え、光気を全力で手に集める。金色の光が輝き、俺の金色の瞳と合わせて、闇の中で目立つ。

「勇者の光 —— 消えろ!」

 光を魔物に打ち込む。この回は魔力を制御でき、光が魔物の体を貫き通る。魔物は悲鳴を上げ、すぐに灰になって消えた。

 戦いは、わずか数分で終わった。俺は腕を振り下ろし、光を消す。MP は 3/20 になっていて、体は少し疲れたけど、HP は 15/15 のままだ。

「終わった……」

 俺は深呼吸し、肩を落とす。魔族の魔力と勇者の光気を使い分けるのは、まだ慣れていない。今回の暴走は、幸い村には影響がなかったが、次は注意しなければならない。

「お前! 大丈夫か?」

 老人の声が村の方向から聞こえてくる。老人と村人たちが、柵の内側から俺を見ている。

 俺は振り返り、頷く。「魔物は退治した。三匹全部だ」

 村人たちは、俺の話を聞いて、一斉に驚いた表情を浮かべる。その後、小声で話し合いを始め、やがて拍手の音が起きた。

「助かった!」「ありがとう!」「魔族だけど、本当に勇者だ!」

 声は小さいけど、誠実な感謝が伝わってくる。俺は黙って頷き、腕についた小さな傷を見る。魔物の牙が盾を擦り抜けて、少し皮を切っただけだ。

 老人が柵を開けて、俺の側に来る。「お前は、本当に村を救ってくれた。村で一晩休んでいてくれ。明日までに、お前のために食料を用意する」

「ありがとう」俺は答える。

 村人たちは、俺の周りに集まってくる。警戒心は薄れ、好奇な目で俺の角や肌、金色の瞳を見ている。

「お前の角、触っていい?」少年ライが、勇気を出して問う。俺は笑みを浮かべ、頷く。「いいよ」

 少年は、小心に俺の角に触れる。「柔らかい! 思ったより」

 周りの村人たちも笑い出し、緊張感が一気に和らいだ。

 俺は、この村の人々の笑顔を見て、胸の中に温かさを感じる。魔族だというだけで嫌われる世界だけど、ここには、俺を受け入れてくれる人がいる。

 だが、この平和は長く続くだろうか。黒牙の猟犬は退治したけど、この世界には、もっと強い魔物や、俺を敵視する人間、魔族がいるはずだ。

 魔族であり勇者である俺の戦いは、これから始まったばかりだ。

 夜風が吹き、村の灯りが暖かく輝いている。俺は、この暖かさを胸に刻み、明日への覚悟を固める。

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