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それなら、こいつと手を組みます ーー詐欺師扱いされて追放されたので、怨霊と手を組んで独立しましたーー  作者: sirosugi


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6 詐欺師扱いされて追放されたので怨霊と手を組むことになりました 後半

 コンビ結成?

 頭にきた、だからと言って、俺は何もできずに、相手を睨むことしかできかった。

 俺の態度が変わったことに怯んだギルド長であったが、立場や力の差を思い出したのか、すぐに傲慢な態度と怒りを取り戻した。 


「な、何だその顔は、おまえなんか、インチキでしかできない詐欺師。」

「そうですかー、じゃあ、俺は何もしないってことでー。」

 

 詐欺師呼ばわりは、傷つくからやめて欲しい。魔法の才能があると言いながら、俺が「リムーブ」しか使えないと分かると手のひらを返してきた大人たち。そいつらの侮蔑の視線と屈辱がよみがえるのだ。あれはほんとひどかったな・・・。


「はは、何を言ってんだ。お前みたいな底辺に何ができるって。だまってフラれた仕事をしてればいいんだよ。」

「だーかーらー、しないって言いましたよー。」


 ダメ押しにもう一度言ってやる。後先のことは考えず、ただ目の前の豚野郎を否定したくて、宣言する。俺が何もできないのは事実だし。

 そもそも、俺に仕事を振らなかったのはギルド長の判断だ。そして、何もしないと言うのは、ギルド長に対して言った言葉ではない、傍観していた周囲の野次馬たちに対してだ。このとき、俺は街を出る決意を固めていた。俺がいなくなった後、せいぜい、泥臭い仕事に頑張るといい。そう思っただけだが。

「キャハハハ」「ウフフフ」「ギリリリリ」

 さらに言ってやろうと思ったら、不意にギルド長が怯むとその背中の霊たちが楽し気に笑い声をあげ、密度を上げた。人の感情の機微に反応して霊障が増すことは多い。高ぶったギルド長に反応したのか、密度を濃くした霊たちの姿は、食堂に居合わせた野次馬たちもその姿をはっきりと見えるレベルになる。

「キャハハハ」「ウフフフ」「ギリリリリ」

 もともとよからぬ気配を感じ取っていた人達は、ギルド長は店に現れた時点で逃げ出していた。鈍い人達も今の状態にただならぬものを感じて、こそこそと距離を取っている。


「うわー、立派になったねー。」

『お主・・・。』

「俺にはなにもしてないよー。」

『いや、これお主が原因じゃからな。』


 この場で平然としているのは俺とエミリーだけ。いやエミリーだけだ。俺だってこの状況に混乱している。何もしていないのに、ギルド長がとんでもないことになっている。密度を増した霊、その霊障の大半をその身に受けるギルド長は、何が起こったからわからないまま、自分の身体の不調を感じているだろう。。例えるならば大量の蚊やヒルに血を吸われているようなものだ。死ぬことはないだろうけど、トラウマにはなるだろうな。


『なるほどなー、そもそもこの豚がお主の居場所にまで押しかけてきたのも納得じゃ。お主は霊にとっては大敵、出会ったら真っ先に逃げ出すべき相手なんじゃ。』

「そうなの?」

『自覚なしかー、まじもんのバカ者じゃな。』

 

 膨れている霊を見ながら、エミリーは俺の所為だと言ってきた。が不本意である。たしかに大量の霊を祓ってきたが、今回はマジで何もしてない。


『その何もしてないのが原因なんじゃ。おそらくは、お主にあった時点で、霊はお主から逃げ出そうと思った。しかし、ギルド長が無防備に仕事をした結果、仲間が増えて力が増した。それで調子に乗って、ギルド長の思考を誘導して、物理的にお主を排除しようとした。』

「それってエミリーもしてない?」

 やり方は違うけど、俺に祓われないように誘導していると言えるよね?あれ、無視?

『しかし、あまりにもな態度にお主がギルド長に怒りを覚えて、「何もしない。」と宣言した。やつらはその言葉を聞いて、身を潜めるののをやめたのじゃ。』

「なるほどー?」


 言い分は分からないまでもない。目についた霊はとりあえず祓うとうのは俺の習性だ。それはどんな状況、どんな相手でもとりあえず祓うというものだったが、昨日はギルド長の態度はあまりにひどかったのでスルーしてしまった。思えば「リムーブ」を取得してからはあの時が、初めてだったかもしれない。霊を見逃したのは・・・。


『おおかた、いつでも祓えると思っていたんじゃろ?』

「まあ、そうだねー。」


 暢気に会話をしている間も目に見えて密度を増していく霊たちだが、貴族家のレイチョルやエミリーと比べるとまだまだ。そこら辺の魔法使いさんたちが頑張ればなんとかなるレベル。


『それじゃ、それ。お主、意図的に奴らを無視しておるじゃろ。霊というのはそう言うのに敏感なのじゃ。お主がギルド長を嫌い、助ける気がないと理解したから、存分に吸い出し、濃さを増しておるんじゃ。なんなら、周囲の霊まで吸い寄せられておるぞ。』

「何それ怖ーい。」


 霊が群がる習性を持っているのは知っていた。複数の霊が集まることで霊障を増すことも知っている。ギルド長がこのあとろくな目にあわないだろうなってことは予想していた。だが、ちょっと意識を逸らしただけで、こんな元気になるなんて知らない。知らないよーこんなの。


『怖がっているようで、まったく余裕そうじゃのー。というか、気づいてて無視してるじゃろ。それがはっきりわかるから、霊にとっては一番の安置になっているぞ。ここ。」

「なにそれ、俺ってどんだけ危険人物扱いなんだよ。」

『もうあれじゃ、わっちらからすると、お主の周囲は致死レベルの猛毒が充満しているようなものじゃからな。並みの霊だったら認識されただけで消えるぞ。それが引っ込められたから、相対的に霊たちにとっては、安全で快適な場所だと思えるのじゃ。』


 わかんねー。ただ目の前でギルド長の顔が愉快な事になっているけど、助けようとは微塵に思わないのは事実だ。祓いの基本は霊を目視すること、そして、そこに力をぶつけるイメージだ。こうして、意図的に狙わないと意識したのは初めてだが、こんな結果になるのか。


『何事も使いようということじゃ。竜や獅子の巣の近く、餌にもならぬ小物が増えるようなものじゃ。』

「ごめん、よくわからないー。」


 それにしても、霊がこのように生物的な活動を見せるというのは初めてしった。なんともフレンドリーで味方っぽく思っていたけど、もしかして・・・。


『それは違うのじゃ。わっちはあくまで交渉じゃろ。奴らの場合は霊障によって思考を鈍らせただけだ。もともとお主にいい感情を持っていなかった豚の黒い感情を増幅させたのじゃ。』


 まあ、その辺はいいや。

「キャハハハ」「ウフフフ」「ギリリリリ」

 もはや立っていることもできず、膝立ちで土気色になっているギルド長が追ってこれないほど弱ったことを見届けて、俺は店を出ることにした。


「た、たしゅけ。」

「詐欺師に頼らないでくださいー。」


 苦悶の声を上げる。ギルド長を無視しし、俺は店を出た。先払いなので引き留められることもない。ことがことだけに、俺が犯人なんて冤罪も起きないだろう。

「キャハハハ」「ウフフフ」「ギリリリリ」

 俺が離れたことでさらにハッスルする霊たちにヒラヒラと手をふり、俺はその場を後にした。1人残されたギルド長はどうなるかは知ったこっちゃない。まあ死ぬことはないだろう。


「さあてー、どうしようなかなー。」


 これだけの騒ぎになれば、流石にこの街にはいられない。生まれてからずっと住んできた街であるが、あんな腐った組織に所属することは難しいし、心情的にも無理だ。


『もはや、旅にでるしかあるまい。もとよりそのつもりだったのじゃろ?』

「いやー、それはねー。」

『それならば、わっちを連れていけばいい。アイテムボックス以外にも色々と役立つぞ。』

 

 それはまた、魅力的な提案だ。一番の魅力はエミリーが抱えているあの財宝だが、それ以上にこれの知識は俺の知らないことばかりで、有益なものが多い。


「そんなこと言って、俺に憑りつく気じゃないのー。」

『そんなことはせんのじゃ。お主がその気になったら、わっちなぞ、ひとたまりもなく、祓われるて。』

「そう言ってー、逃げようと思えば逃げれるでしょー。」


 エミリーから悪意は感じられない。仮に悪意を持って何かされても、その時は全力で祓えばいい。

 俺もエミリーに敵意を持っていない。彼女もそれを感じ取っているのだろう。それでいて、都合が悪くなれば、のらりくらりと煙のように逃げ出すだろう。本気で逃げ出す彼女を祓えるかどうか、試してみたい気持ちがないわけではないが、実行するにはリスクが大きすぎる。


「ああ、そういうことかー。賢いねー。」


 不本意であるが、街を出るという決断をしてしまった以上、俺とエミリーは対等になった。彼女が抱えている財宝が保険である以上、俺は祓うことも余所に追いやることもできなくなってしまった。下手をしたら、他の祓い屋からかばう必要すらあるかもしれない。


『そう、難しく考えるな。旅は道連れ世は情けってやつじゃ。仲良くしようぞ。』


 なんともいい笑顔で、エミリーはそう言って手を伸ばしてきた。暢気というか、肝が据わっているというか、自分を消せる相手にこうして、手を差し伸べるとは・・・。

 お互いがお互いに必殺の手札を持っている以上、一方的に利用することは難しい。ならば敵対よりも友好を取る方がコスパがいい。それを分かっていても実行できるやつはそうはいないだろう。


「スカルット・フェルン。しがない祓い屋だ。特技はリムーブ、それ以外は出来ない。」

『エミリー・マートン。いにしえの時代を生きた賢者様じゃ。怨霊じゃないぞ。』

  

 改めて自己紹介をして、握手する。お互いの手が触れ合うことなく空をきるのはご愛敬だ。

 こうして、詐欺師扱いされて、ギルドをやめた俺は賢者、エミリー・マートンと手を組むことになった。これが俺の人生の転機となる。そんな予感はしていたが、エミリーが大陸中で語り継がれる大怨霊であることを知るのはもう少し後になってからだ。


スカル「お金に余裕があると転職の決断もしやすいよねー。」

エミリー『先立つものはだいじゃ。』

 有能な人が何もしないと、それはそれで被害が大きくなることってありますよねー。

 そんなわけで、序盤が終わり、次回からは気ままなに世界を旅する霊と霊能力者のコンビなお話です。

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