23 過去に色々やらかしていたようです。
霊を見た人の一般的な反応。
エミリー・マートン。
俺に付き纏う怨霊さんは自分の事を賢者と名乗っていた。実際、その知識は豊富で、制限付きとはいえ、様々な魔法を使いこなすのは賢者そのものだと思う。
「大怨霊ですかー。」
「知らないのか、いや、そんなわけあるまい。」
「北部出身なのでー。そもそも怨霊って何ってレベルなんですよねー。」
『お主、それで通じると思うな。わっち、これでも有名だからな、わっち。』
霊にいいも悪いもない、そこにいるだけで霊障を発生させる霊は、見つけたら祓うというのが基本だ。なので、そこにある背景や種類なんてものを気にしたことはなかった。そんなスタンスを一時的に戸惑うぐらいには、エミリーが異常なのだろう。
それでも名前を出すだけで、この反応になるとは思わなかった。
「はっ、だとしてもエミリーマートンだぞ。冗談でも口にしていい名前ではない。」
『そうじゃ、そうじゃ、冗談や酔狂でなく、わっちこそが大賢者エミリーマートンじゃ。』
「そう、本人がいってるんですよねー。」
『お主、この状況でも余裕そうじゃのー。』
喉元にが当たっている刃が妙に冷たい。どうあがいても詰んでる状況となれば、逆に冷静になる。いや、こんなことを考えている時点で冷静じゃないか?
「どういうことー?」
『いやー、わっちもあのときは、若くてな―。討伐しようとする連中と正面からやり合ったり、魔力の補充ために、魔法使いに憑りついたりはしたからなー。』
「そんなことよりも執事さんにまで見えているみたいですけどー。」
目だけ動かしエミリーを非難すると2人もその動きを追っている。だが、会話までは聞こえていないらしく、キョトンしたものとなった。大丈夫かな、そのまま勢いでぶすっとするのは勘弁ですよ。
『これはあれじゃな。呪いを祓われたことで、こやつらの霊感が鍛えられたのじゃろう。風邪から回復したら、免疫ができるみたいな感じで、こんな症例はわっちもはじめてみるが。』
「なるほどー?」
霊に関わると霊感が育つと聞いたことがある。掃除屋なんかにも、最初は全然だったのに、ある日急に感じ取れるようになったやつもいたっけ?そういうのが極端にでた結果ということだろうか。
「スカル殿のことは、信用しております。、その得体のしれない存在がいる以上、この手は引けませんぞ。」
「助けってもらったことはたしかだ。だが、この霊障すらそちらの手の内なのでは?あなたが創生教や隣国の関係者でないということを証明してもらいたい。」
そして、中途半場に見えるようになったことで、かえって警戒されることになり、俺の喉に穴が開きそうになっているわけだ。
うん、これは、怨霊だ、大怨霊だ。
『まて、八つ当たりでリムーブを放とうとするな、その兆候を誤解されて、ぶすりとされかねんぞ。』
「ちえー。」
たしかに、そんなことをしている暇があったら、早く誤解を解かなければならない。でないと首と胴体がバイバイしかねない。
ただ、鬼気迫る顔をしているお二人が冷静に話を聞いてくれるだろうか。エミリーの魔法でどうにかしてもらうというのもだめだろうか、ダメだろうな。この時点で何もしていないということは、不可能、あるいは面白がっているかのどちらかだ。
さて、どうしたものか、言葉に困り棒立ちになってしまう我々だったが、変化はすぐに訪れた。
「失礼します、お父様、お話は。」
「タチアナ、きては。」
「はっ?」
扉が開き、タチアナさんが入ってきたからだ。お茶やお菓子がのったワゴンを押して入ってきたところを見るに、病み上がりの父親やアルバートさんや俺たちに差し入れをとでも思ったのだろう。ノックもなしに入ってきたことはほめられたものではないが、めっちゃ助かった。
「お父様、アルバート何をしているんですか。」
「い、いやこれは。」
「お、お嬢様、すぐに。」
「ぎゃあ。」
いや助かってない、助かってない。タチアナさんにの登場に驚いたアルバートさんの剣がぶすっと刺さった。
「ああ、すみません。」
とっさに引いたので首が切れることはなかったけど、結構ざっくり刺さった。痛い、いや痛いじゃすまないって、熱い、うん、このレベルは・・・死ぬ?
『安心性、魔法で止血はした。痛みは一瞬だったはずじゃ。』
「あらー。」
と思ったときには、傷はふさがっており、溢れた血だけが残っている。
『ふふふ、お主がすぐに離れたから即座に治療ができたぞ。まあ、わっちが本気になればそもそもに刃刺さらないように、皮膚を硬質化することもできたが、それだと怪しまれるじゃろ?』
怪しまれるとか、今更じゃないか。できるのなら、怪我をする前にどうにかして欲しかった・・・。
「す、スカルさん、大丈夫ですか、血が、血が、こんなにー。」
「ああ、もう大丈夫ですからー。とりあえず生きてますからー。」
「すいません、すいません。」
涙目で縋り付くタチアナさんに喉もとを見せつつ距離を取る。まだ血が渇いてないので、タチアナさんの洋服を汚したら大変だからだ。
「回復魔法ですと。」
「あの傷を一瞬で、何という練度だ。とっさに身を引いた動きといい、やはり只者ではないな。」
いや、ただの祓い屋です。それとこの怨霊要りませんか?まじでいらないんだけど。あと、気持ちはわかるけど、そのの発言は。
「二人とも、何をしているんですか。」
「「あっ。」」
娘さんがめっちゃ怒ってますよー。
そのまま、2人は、タチアナさんに詰め寄られ、タジタジとなった。泣きながら、胸倉を掴む女性に、おろおろとする大人が2人。
『ううむ、こうなると、いっそすべてばらした方がよいかもしれん。この3人を無力化して逃げるという手もあるが。』
「やめてねー。」
そして、それを見守る男と怨霊。
もうなんなんだこれ。俺はさっさと報酬をもらってお暇したいんですけど。
スカル 「びっくりしたー。」
アルバート「ほんとです、びっくりして首をはねそうになりました。」
タチアナ 「いきなりのスプラッターに驚きました。」
エミリー 『実は、娘っ子が近づいても気づかないようにしかけてました。」
なまじ動ける人達が霊に出会った場合、こんなちぐはぐでわちゃわちゃした状態になる。と思う。




