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それなら、こいつと手を組みます ーー詐欺師扱いされて追放されたので、怨霊と手を組んで独立しましたーー  作者: sirosugi


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21 もっとやばい人がいました。

呪いの本命登場

 ところで、このくつろぎの時間は、タチアナさんの準備待ちだったりする。タチアナさんからすれば、今更だったようだが、貴族、それも街の領主の娘と分かった以上、ただの商人の恰好では失礼になると、アルバートさんを含めた使用人たちに説得され、着替えにいってしまった。


「では、私は、旦那様とお嬢様の様子を見てまいりますので、何か御用があればそちらの鈴をお鳴らし下さい。隣室に控えたメイドが参りますので。」

「いえいえー、のんびり待たせていただきますー。」


 そんなやりとりのあと、客室に取り残されてそこそこな時間が経っているのもやむなしだろう。


『あの娘っ子がじれている姿が想像できるのう。』

「大人しくしててねー。」

『わかっておる。わっちだって、下手な事をしてネタバレは避けたい。まあ、お主が望むならこの屋敷の秘密を探ってきてもよいぞ。」

「マジで余計な事はするなよ、悪霊。」

『うむ、ちゃんと弁えておるぞ、御主人様。』


 あとは報酬をもらって去るだけだ。貴族様の家庭事情に首を突っ込む気も、突っ込ませる気もない。


『そううまくいくかのー。お主だって気づいておるんじゃろ。』

「なんのことかなー。この家の霊障は解決したじゃないかー。」

『そんなわけあるまい、巧妙に隠しているが、本命は別にある。ほんとはすぐにでも祓いたいんじゃないのか。』

「ただの残滓だろー。」


 にやにやと笑うエミリーの言葉は事実だ。屋敷の壁と雰囲気に隔たれているがわずかに霊障が漏れ出している。それでも一般家庭のそれと比べれば大したものじゃない。放っておいても自然に消えるだろう。


『見ざる聞かざる言わざるとは、傭兵の美徳と聞くが・・・。お主、人がいい癖に、妙なところで意固地よなー。無頼ぶっているつもりかもしれんが、本気で面倒なら、そもそもここまで来てないじゃろうに。』

「そうでもないよー。流れに流れてって感じだしー。」

『そのメンタル、まるで賢者じゃのー。』

「はは、うけるー。」

 

 賢者の霊に賢者と呼ばれる祓い屋なんて俺ぐらいなものだろう。そんなことを思っていたらコンコンとドアがノックされた。


「スカル殿、今、よろしいでしょうか。」

「いいですよー。」

「失礼します。お嬢様がお呼びでして。」

「はいはい、行きますよー。」


 ノックと共に入室したアルバートさんに笑顔でうなづき俺は立ち上がる。相手が貴族との謁見となれば、色々と作法があるのだろう。別室に案内されるのは想定の内だった。


「スカルさん、お手数をおかけしてすいません。」

「いえいえー。」


 ただ、タチアナさんまで迎えにきたことは驚いた。貴族様が切るような豪華な洋服に身を包んだ彼女は、愛からず腰が低く、ぺこぺこと頭を下げて、俺を先導する。てっきり、彼女向けの執務室か客室で話をするのかと思っていたが。これってまさか。


「突然のことと思いますが、スカルさん、父を救ってください。」

「はーい?」

 

 まあ、予想通りなんだけど、一応驚いておこう。わざとらしく目を丸くして、アルバートさんを見る。アルバートさんは、一瞬だけ眉をひそめたが、すぐにのってくれた。


「スカル殿、先ほどの霊障、それはあくまで余波にすぎません。本命は旦那様なのです。」

『やっぱり、本命は別におったじゃないか。』


 そこ、嬉しそうな顔するなー。


『家をでた貴族令嬢があれだけ必死になる時点で、相手がただの執事なわけなかろうて、それに呪いなんて、面倒なことを家の家令ごときに使うはずもない。』


 それはそうだ。ただ、タチアナさんの場合、普通の知り合いでもあれぐらいしそうとも思っていた。まあ、楽観していただけなんだけど。まさか領主様と謁見することになるとは・・・。

 というわけで案内されたは屋敷の最上階にある領主様の執務室だった。てっきり寝室だと思ってたいたので、これもまた、意外だった。


「旦那様、お嬢様と客人をお連れしました。」

「うむ。はいっていただきなさい。」


 アルバートさんの声に対する返事も元気そう、もとい威厳のある渋い声だった。


「ちょっと失礼。」


 ただ、扉を開けた瞬間に部屋に広まった霊障の濃さだけは異常だった。もうね、ただの気配だけで部屋が真っ暗に思えるほどだ。部屋に踏み込むのはちょっとためらうレベルだったのでとりあえずリムーブで祓ってみる。


「スカルさん?今のは。」

「ああ、悪いモノがごりごりですねー。」


 魔法の感知には素養が求められる。しかし、これだけ濃い霊障が晴れれば一般人でも、その変化を肌で感じられるだろう。アルバートさんと、椅子に座っていた領主さまも驚いた顔をしていた。


「こ、これは、身体にまとわりついてた不快感が嘘のように消えたぞ。」

「お初にお目にかかります。スカルット・フェルン。祓い屋を得意としているしがない傭兵ですー。」


 手を上げ下げしながら、領主様はわが身におこったことを信じ切れていないようだったが、気にせず、先に挨拶をすませる。すると、きょろきょろとしていた目が俺を捉える。そして数秒ほど俺を観察し、首を傾げた。


「傭兵?神官ではなく?」

「北部では、信仰よりも実益なのでー。」

「・・・なるほど。」

『なんじゃ、その北部ルールのごり押し。」


 簡単なやりとりをしていくうちに、ぼんやりとしていた領主様の目に光が戻ってくる。長期間霊障にさらされた人間は、意識が混濁して会話が困難なことがあるが、受け答えができるあたり、領主様の意識ははっきりしているようだ。


「ありがとうございます、スカル殿。正直、もう助からないのではと、家中の者たちも覚悟をきめていたのですが。」

「あー、そういうのあとでー。先に祓っちゃいましょうー。』

「はあ。」

「少しの間、動かないでくださいねー。」


 アルバートさんの時もそうだったけど、呪いはちょっと見えづらい。立ち止まってもらい、目を凝らして観察することでやっとその形が見えてきた


「うわー。」

『これまた、見事に呪われておるの。』


 領主様は、それなりに大柄な人だったのだろう、座っていてもなかなかのサイズ感があった。だが、頬はこけ、持ち上げた腕の肉もがだいぶ落ちている。もとが健康であったからこそ痛々しいものだが、それ以上に、気になるのは、その体に巻き付いた黒い鎖だ。

 全身に巻き付いた鎖は、先ほどの一撃で少し緩んだが、それでも数が多すぎた。まるで大きな蛇が領主様の身体を飲み込んでいるような光景は、なかなかにショッキングだ。


『呪いもえげつないが、恐ろしい体力じゃなこの男。あれほどの呪いを浴びていれば、普通は話すこともできないぞ。本来ならば、ここまで成長する前に身体がどうにかなっておる。』

「恐ろしいねー。」


 独り言に割り込むエミリーの言葉に耳を傾けながら、俺は、ヴァルロースで払った憐れな女の子を思い出していた。見た目は全く違うのに、この鎖は強い怨みをもって油断だ霊に似ている。

 霊は、執着をもったものに居つく。それは家だったり物だったりすることが一般的だが、人につく霊なんでものもいた。それは家族や思い人だったり、恨む相手だったりと様々だが、生前に関係があった人間であることがほとんどだった。特に前者の場合、憑かれた側が祓うことをためらい、霊障の被害が重くなることがあった。霊と生者は、相容れない。と、俺が言っても説得力はないかもしれないが・・・。


「まるで、悪霊だー。」

『さよう、霊のもつ現世への執着、れを歪めて固着させる。それが呪いの本質なのじゃ。ゆえに呪いは、リムーブで払うことは可能じゃ。じゃが、気をつけろ、深く結びついた呪いは、剥がすだけでも難儀するが、身体への負担が大きい。古くは、呪いを剥がすときのダメージを期待して行われるほどじゃ。』

「えげつないねー。」


 アルバートさんで一度試しておいてよかった。何も知らなければ、力づくで引きはがそうとしていたかもしれない。例えるならば、身体に深くささった剣を抜くようなものだろう。しかるべき手順を踏まないと、剣を抜いたあとのケガで死んでしまう。これは今までの祓いとは違うアプローチが必要となるな。


「あ、あのー。」

「ああ、ちょっと待ってくださいー、そのまま動かないで。」

「あ、ああ。」

 

 おざなりな返事をしつつ、意識を鎖に集中する。先ほどは包み込むように魔力を放出したが、今回は細い針金を鎖に通していくイメージ。出来る限り呪いを刺激しないように優しく、そっと。


「ぐっ。」

「はい、そのままー。」


 それでも、そのわずかな刺激に鎖が反応して、領主様を締め付けるが、些細なものなのでもう少し我慢してもらいたい。


「す、すごい。これほど繊細な魔法操作は見たことがありませんぞ。」

「アルバートどういうこと?」

「お嬢様、今はスカル殿を邪魔してはなりません。」

『ふむ、初見で呪いの本質と祓いかたに気づいたか。お主、リムーブに関しては天才じゃの。』

「これしか取り柄がないのでねー。」


 魔法とは不思議なもので、鍛えていくと魔力そのものを手足のように動かすことが可能となる。一流の魔法使いは、そうすることで、威力や範囲を調整する。視覚とも触覚とも違う感覚になれない魔法使いもいるらしいけど、リムーブしかできなかった俺は、わずかな可能を頼りにこの技術も追及していた。だからこそ、多彩な形のリムーブを放つことができる。

 まあ、霊にを祓うだけならば、ただぶっぱすればいいので、ホント無意味だったんだけど。


「これほど繊細な魔法を私は見たことはありませんぞ。スカル殿は、旦那様の身体をさけ、霊障そのものに魔力を纏わせておられます。」

『この家令、なかなかにいい目をしておるが、まだまだじゃな。お主の変態的で無意味な制御を見たら、多くの魔法使いが、目をそらすレベルのきもさだというのに。』


 エミリーが何か言っているようだが、気にしているは流石に余裕はなかった。多分、これ、少しでもズレると失敗する。

 時間は一分もかからなかったと思う。もしかしたらもっと短いかもしれない。そんな沈黙の中、俺は領主様の鎖にじっくりと自分の魔力を通し終える。

 願わくば、この鎖に囚われたすべての霊と生者が救われますように 


「リムーブ」


 静かにつぶやき、その魔力を解き放った。



 

スカル 「過去一の大仕事だったー。」

エミリー『細かすぎて、気持ち悪いのじゃ。』

 リムーブしかできないからこそ、追求した天才。それがスカル君です。

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