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それなら、こいつと手を組みます ーー詐欺師扱いされて追放されたので、怨霊と手を組んで独立しましたーー  作者: sirosugi


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1 飯のタネには困らないけど。

 世界観なお話。

 魔物と人類が生存圏を争う大陸「アルエンド」

 この大陸は水にたらした絵の具のように人類と魔物の生存圏が複雑に絡み合っている。

 強靭な肉体と高い魔力によって個として厳しい生存競争を繰り広げる魔物と知恵と数を頼みに集団として力を発揮する人類は知的な生物でありながら根本的に相容れることなく、お互いの生存圏を巡った争いが絶えない。日々魔物の脅威にさらされる人類にとって死の危険が身近な物で、この世界が命が軽い。朝元気に出かけた友人が日暮れには冷たくなっているなんてことは日常茶飯事だ。 


「あいからず、辛気臭いなー。」


 人の居なくなった建物というのは、恐ろしい。人の出入りによる換気や動くことで発生する振動。それがたった一日でもなくなればホコリやゴミが溜まりカビや虫が湧く。旅行などで数日開けた場合はそれほどでもないのに、住人が戻ってこないと確定している家は、その速度が恐ろしく速い。これはプラシーボ効果などではなく、実体験による経験則だ。

 防塵用のマスクを装備して押し入りながら、俺は部屋の中を確認する。この部屋の住人は街の外で狩りをすることで生計を立てる傭兵でそれなりに稼いでいるぽっい。テーブルの上にはそこそこ高級な酒瓶が置かれ、部屋の片隅には頑丈そうな金庫とベット。中堅どころで宿生活から卒業したぐらい、一般的な独身傭兵の生活スタイルだ。

 まあ、元が着くけど。

「アーアーダレダ。」

 部屋の中央にぼんやりと経っていた男が俺に気づいてうつろな目で俺に問いかける。半透明の身体は明滅をくりかえし、ところどころぼやけている、その足元は地についていない。


「これはまた、典型的な仏さんだな。」

「ココ、オレノイエ。」

「残念、死亡確認に住んだ時点で契約に従って引き払いです。」


 言うまでもないが、部屋の主は亡くなっている。一週間前に狩猟へ出かけて行方不明、つい先日、彼の一部と装備が、狩場で発見された。おそらくは魔物に襲われ、餌になったのだろう。そして、心だけがよりどことになった自宅へ帰った。

 同情はするが、この世界ではよく転がっている話だ。


「チガウ、オデ。」

「はいはい、そういうのいいからー。」


 抗弁を聞く気はなく、右手に魔力を集中させてすっと払う。すると元傭兵は煙のようにかき消され、部屋に漂っていた重苦しい空気も心なしか軽くなる。

 霊魔法「リムーブ」、魔力を霊力に変換して、霊やそこから発生する霊障を払う万能魔法。と言えば聞こえはいいが、霊を払うことしかできず、魔物や暴漢を相手には全く無意味な魔法。

 そして、俺が唯一使える魔法。


「終わったか、祓い屋。」

「ああ、やっぱり、昨日見つかった傭兵さんみたいだよー。」

「・・・そうか。」


 空気の変化を感じ取って入ってくる真っ黒なツナギを着た男達にそう報告をする。俺の仕事はここまでで、部屋を清掃し貸し出す前に戻すのは彼らの仕事だ。


「外で死ぬ分にはきれいなもんだ。風呂もとトイレもほとんど使われないぞ。」

「食事は外、家では酒を飲んで寝るだけ。傭兵ってもんは儚いねー。」

「てか、この部屋呪われてね?もう何度目だよ。」


 そんなことを言いつつ、部屋を掃除する男達と会話しながら、俺も掃除を手伝う。報酬外の仕事だけど、早く終わらせたいし、今回は忌避するほど汚れていない。何より。


「今日あと何件だっけー。」

「3件だな。会わせて5件、今日は少ない方だ。」


 まだまだ仕事が詰まっているのだ。協力できるところは協力したほうが効率的だ。

 毎日のように死人がでるこの世界において「霊」と「霊障」の被害は日常茶飯事だ。肉体を持たない霊は、物理的な影響の少なくその姿を見れるのは魔力や霊感と呼ばれる才能に恵まれた者に限られ、その存在を信じない者もいる。が、ともかく数が多く、つもりに積もった霊障は無視できないレベルにある。あの不運な傭兵のように自分の家や家族に執着する者はまだマシな方で、その場の空気が少し悪くなる程度。例外としてスラムや戦場などできちんと供養されなかった霊などは肥大化して他人の精神をかき乱したり、他の生き物に憑りついて狂暴化させたりもする。噂では高い魔力の持ち主などは死後に「レイス」と呼ばれる魔物に変異するとまで言われているが、街暮らしの俺を含め遭遇したことがある人間はいない。

 技術も進み、近代化と言われる今日でも、死者の供養は大事にされるし、瑕疵物件やそれに関わる仕事は毛嫌いされる。俺や掃除屋たちも仕事は必要と黙認されながら、街では嫌われ者だ。


「まあ、おかげで飯のタネには困らないけどー。」


 こんな世の中だからこそ、俺みたいな半端ものでも仕事に困らない。それを払う専門職「祓い屋」と言われる職業が成立しているわけだ。

 と、思っていたのだが。


「スカル、お前、くび。」

「はああーーー。」


 5件もの瑕疵物件の払いと清掃を片付けヘロヘロになって帰った傭兵ギルド。成果を報告し、報酬を受け取りあとは帰るだけ、そんなタイミングで俺は人生の転機となる宣告を受けることになった。


「どういうことですかー、ギルド長ー。」

「その間延びした話し方をやめろ、死体食い。」


 周囲に聞こえるように俺の蔑称を言うギルド長はニヤニヤ笑っている。なんなら周囲で聞いていた他の傭兵たちも笑っている。笑ってないのは、一緒に報酬をもらった掃除屋たちと俺だけだ。


「いいか、霊や霊障なんてまやかしなんだ。祓い屋なんて金と時間の無駄だ。みんなもそう思うだろ。」


 またか、この仕事をはじめて以来、何度となく言われてきたことだった。


「確かに、傭兵は縁起を担ぐ。ヘマして死んだ間抜けが住んでいた部屋に住みたくないなんて思う気持ちがわからなくもない。そんな状態じゃモチベーションが上がらないから成果がでないなんてこともある。けど、それって気にするやつが無能ってことだろ。嫌ならさっさと稼いで新しい家に住めばいい。」

「はは、そうきますかー。」


 もうこれ、耳タコ案件だ。

 霊はそもそも脆弱で気迫な存在だ。知覚するには魔力や霊感といった素質が求められるが、そう言った素質を持つ人間はその時点で多少の霊障は対処できる。さらに傭兵をするような体力があり余っているギルド長などは、霊障の被害と肉体的な疲労の区別がつかない。霊障が被害を受けるのは、街で暮らす一般人や繊細なお貴族様だ。視界の隅に現れる霊の存在などギルド長には壁のしみと変わらないらしい。

 いや、そもそも見えてないんだろうな、この人。今も肩に寄りかかってけらけら笑っている女の霊に気づいてないっぽいし。


「クビってのはどういうことですか、ギルドの仕事はあくまで仲介でしょー。」


 傭兵はギルド直属ではない。ギルドは仲介組織であり、多種多様な依頼を傭兵の適正に合わせて斡旋し、その手数料をとるのだ。フリランスやどこぞの商会や貴族に直接雇われる傭兵もいるが、万が一のときのバックアップや不当な依頼への対処など色々とやってくれるのでほとんどの傭兵がギルドに登録している。

 だが、それだけだ。商会の従業員や工房の職人などのように、ギルド長が口だせることではない。


「ははは、そうやって他人の仕事の上前を撥ねる浅知恵は感心するがな、俺がギルド長になった以上、そういうのは許されんぞ。」

(ああ、こいつもか・・・。)

「今度、瑕疵物件の清掃は掃除屋だけに斡旋することにする。」

「ですよねー。」


 そんなバカなことを考えたの、こいつが初めてじゃない。先代もその前のギルド長もだった。職務の慢性化を防ぐという理由で数年ごとにギルド長は入れ替わる。俺が登録してからも3回ほどギルド長の交代があったが、その都度、同じような話があがる。傭兵の立場を理解できる人材として選ばれる優秀な元傭兵な長様は、短絡的な経費削減策として、俺の仕事を削りたがる。何かと理由をつけて報酬を削るか、手数料を増額したがるのだ。


「お前のくだらないまじないなんていらない。その分安くすれば、クライアントも喜ぶってもんだ。WINNーWINな関係ってやつ。ああ、掃除屋安心しろ、こいつに払う分の差額でお前たちの報酬は上乗せするから。」

「そうですかー、うまくいくといいですねー。」


 たいていは上手くいかない。祓いを怠った物件は、見た目こそきれいだが空気の悪さは変わらず人気がでない、仮に売れても、霊障が発生するのですぐに解約される。不動産屋もそれが分かっているから、掃除屋だけの依頼は受注しないのだ。そんな事情から、優秀で格安な祓い屋である俺を完全に排除することはできない。できるのはいちゃもんをつけて俺の報酬を天引きすることだけだ。それだって一か月と持たずに向こうが頭を下げてきた。

 自分で言うのもあれだが、俺ほど格安で確実に霊を払う祓い屋がいない。

 まあ、それしか能がないので、ギルドから離れることもできないし、一時的な値下げ交渉には応じないとならないんだけどね。この世界において、おいそれと他の街に引っ越しなんてことも叶わず、この街で干されると流石に困るからだ。


「ふん、そうやって余裕ぶっていられるのも時間の問題だ。」

「あーはいはい、がんばってくださーいー。」

「なっお前、俺の話を。」

「履行された契約にギルドが口を挟むんですー?」


 そうは言っても、今日の分の仕事の報酬を減らすことはできない。そんなことをすれば他の傭兵の信用だって失ってしまう。そこまで馬鹿ではないらしく、ギルド長は不服そうにしながらもそれ以上は何も言わなかった。


「じゃあー、おつかれしたー。そういうことなら数日は休むんでーよろー。」


 馬鹿に付き合う気はない。今日の分の報酬と蓄えがあれば一月は生活できる。その間は、新任のギルド長のお手並みを拝見するとしよう。


「く、くそー、あんなインチキ野郎に俺たちの金が持ってかれて悔しくないのかー。俺はこの不正を必ず正して見せるからな。」

「そうだそうだ、街で安全に楽に働いている奴らに払うなら、俺らにもっと金を寄こせ。」


 外にでると、なにやらギルド長がわめき、一部の傭兵が同調している騒音が聞こえた。それだって一部であり、ある程度社会の仕組みを理解している人間は、その様子を冷めた目で見ていることだろう。


「全く、頭の悪い連中だな。あれで腕がいいんだから質が悪い。」


 一緒に外に出た掃除屋の1人が不機嫌そうに吐き捨てる。


「まーまー、あれが外でがんばってくれてるから、俺たちは飯のタネには困らないわけなんだからさー。しばらくは掃除が辛いかもしれないけど頑張ってねー。」

「気楽だなー。まあ、俺らの仕事に終わりはないけどよ。」


 仮にギルドの仕組みが変わっても、毎日のように人は死ぬので霊や霊障がなくなることはない。そんなわけで、日陰者な俺たちの仕事がなくなることもない。

 それが分かっているから、多少の僻みや勘違いで俺たちは動じない。明日も空き家を掃除し、そこそこの報酬をもらって日々を生きる。


「もう少し金が溜まったら俺らも転職だ。この機会に稼がせてもらうからな。」

「あいはいー、そういうたくましいところは嫌いじゃないよー。まあやばそうだったら連絡してちょうだい、お兄さんたちなら格安で引き受けるよー。」

「そこはただじゃないのかよ。」

「ただより高いモノはないだろーって話。」


 そのまま、今日の仕事の愚痴などを離しながら俺たちは夜の街へと消えていく。あとは、適当に食事をしてあとは寝るだけ。明日も朝早くから仕事だ。

 おっと、俺は休みか。朝寝坊してやろう。 

スカル「特殊清掃の仕事は、特殊な清掃であり、認可を受けた専門の業者が行っています。清掃でも痕跡が消しきれない場合はリフォームや建て替えが必要となる場合もあります。」

 霊能力+ファンタジー? ファンタジー世界の霊能力者みたいな話です。

 5話ぐらいまでは連日、12時に投稿予定です。

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