羽を手入れしてもらう話
「意外と手入れが大変なんだねぇ」
真っ黒い羽を専用の道具で手入れしながら、マジルテはポツリと呟いた。
手入れをされている相手、マナは「くすぐったいよ」と言うように、僅かに羽を羽ばたかせた。だが今度は逆にマジルテが「くすぐったいよ」と笑うだけだった。
別にくすぐるつもりはなかったけど
マジルテは鼻歌を歌いながら手入れを続けた。何が楽しいのか、いまいち自分にはよく分からなかった。
自分でも見た目や衛生は気にする方のため、定期的に手入れは行っている。けれどそれは、あくまで外観や衛生を保つためのものであり、決して手入れをすること自体が目的ではないのだ。
けれどマジルテは手入れがしたいと言う。やはりよく分からなかった。
「キミの羽綺麗だよね。周りの色全部吸い込んじゃいそうなくらい真っ黒で、なんて言うかソノ…ン〜…すぐには思いつかないけど、……とにかく神秘的なんだよ!」
神秘的なんて初めて言われた、とマナは思った。死んで亡霊になり、堕天使となり、それでも妹に会いたいという欲望のために、虐殺を繰り返した自分には、到底似合わない言葉だからだ。
それでも自分に神秘的だと言ってくれるのが嬉しくてたまらなかった。
妹の考えていることはよく分からない。けれど、その内容次第は悪くないと小さく笑った。
「アッ!今笑ってくれた?」
覗き込んでくる琥珀色の瞳は、嬉しそうに弧を描いている。
マジルテの方が笑っているじゃない、とマナが突っ込むと、マジルテはそーかなーと首を傾げるだけだった。
あざとい
だけど可愛い
マナは再び小さく笑うと、マジルテに何か言われる前に、小さな体を抱き締めるのだった。




