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孤独な怪物の鎖  作者:
第一ゲーム
11/16

10


《処刑を開始します》


冷たいアナウンスとともに、ユウマの椅子の肘掛けが音を立てて閉じ、両腕と足首を鉄の枷のように締め上げた。


「な、なぁ待ってくれ! まだやり直せるだろ!? なぁッ!」


声は震え、喉の奥から掠れた悲鳴が漏れる。

だが、誰も答えなかった。


「や、やめろ! 離せッ!」


もがく体を押さえつけるように、頭上から伸びた金属アームが降下する。

冷たい電極が額に触れた瞬間――


――バチィッ!!


轟音と閃光が視界を裂き、ユウマの体が大きく跳ね上がった。


「ぎゃあああああああッ!」


絶叫が室内を裂いた。

ユウマの体が跳ね上がり、焦げた皮膚の匂いが一気に漂う。

指が弓なりに反り、歯ぎしりの音が聞こえ、やがて声が焼き切れたように掠れていく。


長い、長い数秒。

あるいは永遠にも思える時間。

電流が途絶えたとき、そこに残っていたのは白目を剥き、体中に焼け焦げた痕を刻まれた亡骸だった。


《処罰終了》


無機質な声が、焦げた臭いの漂う空気をさらに重くした。


「……っ……」


アユミは口を押さえ、吐き気を堪える。

麗華は蒼白な顔で震え、田島は椅子の背にもたれて膝を抱え込む。

橘ですら引き攣った笑みを浮かべるだけだった。



――そして。


《次の処刑対象――さやか》


モニターの無機質な声に、全員が一斉に息を呑んだ。


「……や……やだ、いやっ……!」


さやかの体が強く震え、抱きしめたぬいぐるみが小刻みに揺れる。


「や、やめろよ! 子どもだぞ!」


田島が絶叫する。


「そ、そうですわ! この子は何もしておりませんのよ!」

「おやめなさい! 幼子にこのような……!」


アンジェの声も切羽詰まっていた。

だが、モニターの声は揺らがない。


《……言ったはずだ。投票を放棄した者も、処刑対象とすると》


「いや……いやぁ……! 助けて……!」


さやかの悲鳴が響き、拘束椅子へと無理やり押しつけられる。

小さな手足は必死に暴れるが、金属の拘束具はあっさりとその細い手首を捕らえ、冷たい音を立てて閉じた。

その頭上へ、電極がゆっくりと降りてくる――


「やめろ……やめろってんだよ……!」


歯を食いしばった。


泣き叫ぶ小さな声。

その目に映るのは、諦めと絶望。

俺の目の前で、ガキ一人、抵抗もできねぇまま処刑だと?


――そんなもん、見過ごせるか。


「クソがァァッ!!」


怒鳴り声と同時に、俺は体を暴れさせた。

腰に巻かれた金属のベルトの隙間に無理やり腕を捩じ込む。

拘束具の鋲が食い込み、皮膚が裂けた。

どろりと血が流れ落ち、椅子の鉄板を濡らしていく。


「お、おい、何してんだ!無理だ、死ぬぞ!」


誰かの叫び声も、もう耳に入らない。

ギチッ、ミシッと骨が軋み、力任せにねじった瞬間。


――バキィン!


拘束が破壊音を立てて弾け飛んだ。


「はぁっ……はぁっ……」


荒い息を吐き、血まみれの腕を振りほどくと、視線を真っ直ぐにさやかへ向けた。


――間に合え。


「ッッオオオオオオッ!!!」


飛び出し、椅子を蹴り、さやかに向かって一直線に突っ込む。

電極がちょうど降り切る、その瞬間に。

さやかの細い体を乱暴に引き寄せ、そのまま自分の背を電極にぶつける。


――バチィィッ!!


目の奥が焼き切れるような光。

火花が弾け、世界が白に焼き尽くされる。

全身を駆け抜ける凄まじい衝撃。


「ぐっ……ああああああああああああッ!!!」


筋肉が勝手に痙攣し、歯が砕けそうに噛み締められる。

視界がぐらつき、意識が飛びそうになる。



――それでも。


「……ッ、ク、ソが……ッ!」


奥歯を砕きそうなほど噛み締めながら、俺は踏み止まった。

皮膚の表面を這う火花がパチパチと散り、煙が立ちのぼる。

焦げついた金属の匂いと、俺自身の焼ける匂いが混じって吐き気を誘った。


ようやく電流が途切れたとき、俺は膝をつき、荒い息を吐いていた。

血と汗でぐしゃぐしゃになりながら、それでも意識を繋ぎ止める。


背後の空気が張りつめていた。

振り返るまでもなく、他の連中が恐怖に絶句し沈黙しているのが分かる。


「……嘘…だろ……」


誰かが、小さく呟いた。


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