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孤独な怪物の鎖  作者:
プロローグ
1/16

化け物の記憶

俺の最初の記憶は、優しい声でも、温もりでもない。

耳の奥にこびりついて離れないのは——


「化け物」

「近寄るな」


そんな言葉ばかりだ。


あの頃の俺は、ただ走りたくて、ただ笑いたかっただけだ。

でも、遊んでいた子供の肩に触れただけで、その子は転んで大泣きした。

俺の握った手を大人が見て、青ざめた顔で俺を突き放した。


「お前は危ない」

「普通じゃない」


何度も、何度も言われた。

小さな俺には、その意味が分からなかった。

ただ一つ分かったのは——

俺が何をしても、笑顔で迎えてくれる奴なんかいないってこと。


俺の手は壊すためにあるみたいだった。

握った鉛筆はポキリと折れた。

抱きしめようとした子犬は、恐怖に怯えて鳴き声を上げた。

周りの視線が刺さるたび、俺は自分の手をポケットに突っ込んで隠した。

「俺は触れちゃいけねぇんだ」って、いつの間にかそう思うようになってた。


気がつけば、誰も近づいてこなかった。

俺が一人で飯を食ってても、同じ机に座る奴はいなかった。

背中に浴びる視線はいつも冷たくて、噂話の中で俺の名前が出ると決まって「化け物」の文字がくっついていた。


俺が殴り合いで勝てば

「やっぱり異常だ」

黙って引き下がれば

「何考えてるか分からねぇ、不気味だ」

結局、何をしてもそう言われる。


だから俺は、笑わなくなった。

近づかなくなった。

殴られても、罵られても、別にいい。

「そうだよ、俺は化け物だ」って心の中で吐き捨てることで、どうにか耐えられた。

……本当は、ただ「普通」に混ざりたかっただけなのにな。


そんな俺の“日常”は、ずっと変わらないはずだった。

……なのに、目を覚ましたら知らねぇ場所にいた。

無機質な壁、天井、何もない広い部屋。

俺を含めて九人、年も性別もバラバラな人間たちが集められていた。


そして——。


突然、壁一面のモニターが唸りを上げて光を放つ。

現れた白衣の男が、冷たい笑みを浮かべて告げたんだ。


『ようこそ。これから君たちには、命を賭けた“ゲーム”に参加してもらう』


……デスゲーム、だとよ。

笑わせる。

こんなふざけた舞台でも、俺にとっちゃ驚きより先に浮かんだのは——


「どうせまた、俺は化け物扱いされるんだろうな」


っていう、諦めにも似た感情だけだった。


——あの日、俺たち九人が“目を覚ます”ところから、すべては始まった。


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