1話
「陛下なぜ私に、このような事を。」
ユリウスの身体には遅効性の毒が全身に巡っており、もう思うように動かせなくなっていた。
横たわるユリウスを見下ろし、告げた。
「ユリウス・アルヴィン。君は恐らく帝国、いや歴代最強の魔術師だろう。」
「君は私が皇帝になるまで、あらゆる手を尽くしてくれた。手を血に染める事もいとも容易く同意してくれ、私を支えてくれた。」
「…それならなぜ.........。私をお見捨てになられるおつもりですか…。」
私は、陛下の帝国の民を心から愛している陛下の思想に賛同し、命令通り汚れ仕事だって行ってきた。
もう何人殺したのか分からない。
私は陛下のために、この国の為にすべてを捧げてきた。
なぜ…なぜなのですか。
「お前の人間離れしたその能力は、私がこれから築きあげる帝国の脅威にしかならないんだよ。万が一、裏切られたりでもしたら、この国はすぐに滅びてしまうだろう。」
「私は貴方に....忠誠を誓いました.....そのようなことは......絶対にありえな.....ぃ.....」
「言うなれば、君は数少ない私の上質な駒だったよ。君を失うのは心惜しいが帝国の脅威になるものは、ひとり残らず排除しなくてはならない。」
…そんな。
もう、痛みを感じない。もうすぐ死ぬのだろう。意識が遠のいていく。私はここまでなのだろうか。
"否っ、まだ終われない"
ここで死ぬくらいだったら禁術を使う。
【⠀ Μετενσάρκωση της ζωής 】
ユリウスは人生をやり直すことを強く願い、最後の呪文を唱えた。
もしも、人生をやり直す事ができるのなら誰かの言いなりにならず自分で自分の道を決める。
魔法陣が出現したことを確認すると意識が離れた。
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「...ま……にす……ゼニ…ゼニス様!ゼニス様!」
(ゼニス?誰のことだ。)
ユリウスは目を開けた。
ここはどこだ。私の魔法は成功したのだろうか。
「ゼニス様!良かったお目覚めになられたのですね。」
誰だこの女性はメイドなのか?
意識がハッキリすると、ユリウスは自分の存在を確かめた。
ああ、そうだ、私は確か忠誠を誓った方に裏切られ禁術を使って命を繋いだのだ。
それにゼニス様?それは私の事だろうか。
「直ぐにお医者様を呼んでまいります。」
そう言い、メイドのような方は退出して行った。
枕元に手鏡があった。
これで確認しよう。
「え...これが私?ユリウスの顔ではない。黒色の髪に赤い瞳。何よりまだ幼い、10代半ば位だろうか。」
とりあえず、禁術が成功したと考えていいだろう。
たが、ひとつ誤算だったのはユリウスの身体では無いことだ。
実際には別人になっている。
しかし、私、いや、【⠀俺 】にとっては好都合。
もう言いなりになる人生は終わりにする。
俺は自分で自分の道を決め、寿命で死ぬ。