サキュバス結界と魅了
見上げるほどに大きく、屈強な身体をした山賊のお頭と呼ばれた人物は首元に突きつけた剣を下げる様子はありません。
「何のことです?
私は普通の街娘ですが」
「普通の街娘はこんな状況で顔色一つ変えずにケロリとしてねぇんだよ。
言え!テメェはどこのもんだ!!」
どうやら今から誤魔化しきるのは不可能なようです。
「ふふふ……貴方、盗賊をやっている割には中々優秀みたいですね。
では種明かしといきましょうか」
この時の私は自分でも分かるほどに淫靡な笑みを浮かべていたと思います。
言葉と共に擬態を解くと洞窟内の空気が一気に変わりました。
「な……サ、サキュバスだと……うう……」
洞窟内を包み込む淫靡な空気に当てられてお頭は思わず剣を落とします。
「オ……オンナ……」
「オンナ……」
お頭は抵抗しているようだが、盗賊の部下達はあっという間に私が作り出した空間の影響で理性を失ってしまいました。
「ふふふ、種明かししたついでに種を少し頂きたいものですね」
「くそ……オメエら、しっかり……」
「そんな無駄な抵抗はやめて一緒に気持ちよくなりましょうよ、魅了〈チャーム〉」
私の瞳を見てしまったお頭に魅了の魔法をかける。
今まで張り詰めたものが切れたかのように膝からガクンと崩れ落ちるお頭。
だが、直ぐに立ち上がると周りの部下達と同じように理性の全てを無くした瞳でこちらを見ています。
「良いですよ……たっぷりと楽しませてくださいね」
その言葉をきっかけに理性を失った盗賊団は私へと襲いかかってきたのでした。
………一夜明けて朝。
「あれ?もう終わりですか?
もっと出来ると思ってたのにザコザコですね」
1番頑張っていたお頭ですが、今の一発を最後に全く動かなくなってしまいました。
まだ物足りなさはありますが、仕方ないでしょう。
動かなくなった盗賊団の面々を鑑定すると全員がレベル1まで下がっていました。
とりあえず私は脱ぎ捨ててあった服を着てから、洗浄魔法で盗賊団ごとアジトの中を綺麗にします。
「お宝と彼らの武具は収納魔法の中に入れてしまいましょう。
……これって、この人たちは入りませんかね?」
試しに近くにいる盗賊団の1人を収納魔法の入り口に放り込むと、つるんという音が聞こえてきそうな勢いでその中に入っていきました。
「死にかけて意識がない状態ならいけるみたいですね。
それでは根こそぎ頂いていきますか!」
こうして私は盗賊の溜め込んでいたお宝と、盗賊達のレベルに彼ら自身を根こそぎ奪って近くの街へと向かうのでした。