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エピローグ:新たなる勇者の末路

かつてこの世界には魔王という魔物を統べる王がいたという。


しかし、魔王に脅かされる人類に慈悲を与えた女神による、勇者と呼ばれる存在が現れ……魔王を倒した後に姿を消した。


その後暫くは平和な時が続いていたのだが、再び人類に脅威が現れる。


『淫獄の姉妹』


突如として現れた2匹のサキュバス。


淫魔でありながら、個々で魔王以上の戦闘力を持ち、淫魔らしい絡め手も得意という、魔王以上に厄介な存在。


そんな存在を前に人々は神の加護を浴びた勇者の誕生を待ち望んだ……しかし、勇者は現れなかった。


一説によると魔王亡き後に、土地争いのために人類同士で争う兆候が見られたことに絶望されたという話もある。


神に選ばれた者が現れないならば自分達で選ぶしかないと、国の偉い連中は実力のある兵士や冒険者を勇者に仕立て上げて淫獄の姉妹の元へと送り届けた。


だが、1人として生きて帰った者はいない……いや、勇者の仲間達はレベルを吸われただけで戻ってくるのだが、勇者だけは生きて帰ってくる事はなかった。


そうして何十年もの時が経ち……そう、人類は死滅する事なく生きながらえていた。


淫獄の姉妹は魔王のように人類という種ごとを襲う事はない。


ただ、戯れに選ばれた人々が彼女達によって搾られるだけであった。


偶にある大きな被害と言えば、脅威度は低いと見たお偉方が他国への侵略の準備を始めると、何処からか嗅ぎつけてその計画を首謀者ごと粉砕するぐらいである。


その為に一般人からは悪い事をすると淫獄の姉妹に襲われるという情操教育に使われる程度の扱いであったが、国のトップからすると自身の権力を拡大させるのに邪魔以外の何物でもない。


この事が原因で淫獄の姉妹の討伐自体は途切れる事なく行われたのであった。


さて、なぜ俺が長々とこんな説明をしているかというと答えは単純……俺が今回の選ばれた勇者だからである。


淫獄の姉妹が住むと言われる居城へ仲間と共にやってきて、ものの見事に敗れ、身体を拘束された状態で仲間達が陵辱されるのを見ている事しか出来なかった。


まぁ、仲間と言っても国が逃げ出さないように付けた監視なので思い入れは無いのだが。


「いらっしゃいませ、今代の勇者様……いえ、新たな生贄と呼んだ方がいいかしら?」


「本当に可哀想ですわ、お姉さま。

早く楽にしてあげましょう」


目の前で玉座に座るサキュバスから声がかかる。


彼女こそ淫獄の姉妹の姉、アロエであろう。


そのアロエの肩にかしづくように体重をかけているのが妹のエリカに間違いないだろう。


2人とも伝承に聞いた通りに透き通るような金と全てを飲み込むような黒の髪をしており、女神というよりも悪魔的な美女であった。


仲間達の嬌声など全く気にせずに2人は会話している……そう、驚くことにサキュバスは彼女だけでは無かった。


この城には無数のサキュバスが住んでおり、俺たちは淫獄の姉妹どころか、最初に出会った名も聞いた事がないサキュバスに負けたのである。


「やはり勇者は殺されるのか」


「殺す?……ああ、エリカが楽にするなんていう言い方をするから勘違いされているではありませんか。

殺すなんてとんでもない。

私は貴方を勇者という重責から解放させてあげたいのですよ」


「何だと!?」


アロエは信じられない言葉を口にする……が、不思議とその言葉に嘘を感じられなかった。


「うふふ、新しい勇者様にいい事を教えてあげます。

ここにいるサキュバスは最初は私達だけだったんです。

でも、時間が経つにつれて仲間達が増えていって、今では私達姉妹を除いて99人のサキュバスがいるんですよ」


「な、ま、まさか……」


旅立つ前、王に勇者の名を与えられた時であった。 


確かに王はこう言ったはずだ……100人目の勇者が必ず淫獄の姉妹を倒すであろうと。


「ふふ、気付いたようですね。

そう……貴方が記念すべき100人目の仲間。

生贄としてこの地に送られた恨みも責任も任務も全てを忘れて楽しく生きようではありませんか」


「みんな新しい妹が出来るのを楽しみにしていたんですよ。

さぁ、これからの新しい生を面白おかしく生きましょう」





……俺、いや、私の名前はエメリー。


アロエ姉様とエリカ姉様の眷属で、一族で一番下の妹。


今日も哀れな生贄がこの城へとやってきたようですが心配いらないわ。


すぐに貴方も私たちの仲間になるのだから……新しい妹さん。


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