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淫獄の姉妹

あの日、王城は二匹のサキュバスに襲撃を受け大きな被害をもたらした。


死傷者こそ出なかったものの、防衛に出た兵士達は軒並みレベルを吸い取られ、実戦に戻るまでに多大な時間を要した。


中には兵士を退役する者も現れ、軍事力が大幅に縮小した王都を守る為に第二王子は再びゴウツーク伯爵を要請。


軍権が伯爵に戻った事、第二王子が素早くいざこざを収束させた事で王都は少しずつではあるが日常を取り戻していった。


一方、彼女達のターゲットと言われていた第一王子であるが、兵士達が駆けつけた頃にはレベルもスキルも全てを奪われて廃人同然……いや、搾り尽くされて枯れ枝のような姿で発見された。


意識はあるものの、幼子と同程度の知力と体力しか無くなった彼は当然ながら王位を剥奪。


王家で問題を起こしたものを幽閉する地へと運ばれ、そこで一生を養生という名の軟禁生活を送ることになった。


偶々王都に視察に来ていたターネライの冒険者ギルドのマスターはすぐさまギルドの情報網を繋ぎ、この二匹のサキュバスを魔王以上の危険種として最上級の討伐対象『淫獄の姉妹』の名で登録を行った。


当初は魔王以上の脅威という話に懐疑的だった上層部であるが、魔王でも王都を真正面から襲撃し、片側だけに被害を与えて去るなどという事はした事がないという事実を突きつけられ、襲撃された兵士並びに王子のレベルが吸われていることからこの二匹は時間を置けば置くほど強くなると推察された事で考えを改めた。


少しの年月が経ち、淫獄の姉妹が魔王城を根城にしていることが分かり、彼女達の危険度は更に跳ね上がった。


曰く、魔王の跡を継ぐものが現れただの、魔王が残した双子の娘だのと様々な憶測が流れた。


しかし、彼女達に対して伝説の勇者は現れない。


王都や冒険者ギルドは独自に優秀な者を勇者として任命し、多数の勇者が送り込まれたのだが、生きて帰って来るものはいなかった。


当初は大騒ぎされていたこの騒動だが、実のところ被害は驚くほどに少なかった。


偶に街中に現れたらしい姉妹によって、どちらかというと素行の悪いものが搾られてレベルを吸い上げれる事件が起きる。


被害らしい被害はこの程度であり、いつしか人々は姉妹の存在こそ物語のように語り継いだものの、すぐ隣にある被害とは見なさなくなった。


そして、ある日の悪徳貴族と噂される子爵の家にて。


「な、き、貴様ら……一体何者だ!!」


お気に入りのオモチャを寝室に配置した子爵はご機嫌で扉を開けた。


だが、そこにお気に入りのオモチャは居らず、代わりに金色の髪と黒い髪をした、この世のものとは思えないほどに妖艶で美しい女達がベッドで身をくねらせていた。


唯の女であれば子爵は相手の正体も気にせずに抱いたであろう。


だが、この女達には普通の人間とは違うところがあった。


腰に生えた黒い翼に、先がハート型になった尻尾をお互いに絡め合っていた。


「あら、お姉さま。

お待ちかねの豚がやってきたみたいですわ」


「ふふふ、待ちわびましたよ」


「し、質問に答え……」


「お姉さまの前で豚如きが人間の言葉を喋るんじゃありません!

返事は一つでしょう?」


「ぶ、ぶひいいいいいい」


「ふふ、今日も沢山ご馳走してくださいね……豚のような人間さん」


淫獄の姉妹……彼女達の被害は世界各地で報告された。


その場所はランダムであり突発的である為、彼女達の危険度は魔王よりも遥かに高いと言われている。


だが……その一方でその被害は私服を肥やす悪徳貴族や商人、街中で問題を起こすチンピラや盗賊などに限られていた。


彼女達の戦いを目撃したものの中には勇者しか使えないスキルを使っていたという報告もある。


その為、彼女達を勇者の生まれ変わりとして信仰する勢力も現れた。


だが、人類にとって脅威なるものが気軽に生存圏に現るのだ。


その為、彼女達が討伐されない限り人類が私欲で争いを行う事は無くなるだろう。


人類にはそんな余力などは残されていないのだから。

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