秘薬とミルク
「大変お待たせして申し訳ありません」
「あ、あの……お連れさんは大丈夫なのですか?」
森の奥から戻ってきた私は、足腰がガクガクになってまともに立てなくなったエリカを担いでいました。
「ええ、問題ありません。
しばらくすれば回復しますので。
それよりもこれを」
そう言ってクロエさんの前に出した瓶の中には透明な液体と白い液体が入っていました。
「これは一体?」
「こちらの透明な液体は……簡単にいうと高密度な魔力ポーションですね。
そしてもう一つの液体は滋養強壮に良いミルクです。
こちらを飲めば彼氏さんも直ぐに元気になると思いますよ」
「そ、そんな高級なものを……」
「私達はこれをいつでも都合できますので気にしないでください。
それよりもエリカはもうそろそろ正気に戻りませんか?」
まだ倒れてうわ言を呟いているエリカに声をかけると、彼女はビクッと一瞬震えたかと思うと直ぐに立ち上がりました。
「はい、もう大丈夫です!」
「それならば良いのです。
私はこちらの方で様子を探ってみますので、貴女はクロエさんを彼女の村まで送ってあげてください」
「分かりました!
それでは早速村まで行きましょう!!」
「え、あの、そこまでして頂くわけには……」
「いえ、エリカに送らせてください。
……そうですね。
薬はエリカに持たせておきますので、彼女にはお礼として村を案内してあげてください」
これならばエリカが村まで行かなければ薬が手に入らないので問題ないでしょう。
「……分かりました。
何から何までありがとうございます」
「いえいえ、困った時はお互い様ですからね。
……道中でのつまみ食いは許可しますが、村の中での食事は許可しません。
意味が分かりますね?」
「もちろんですよ、お姉様。
今も美味しそうな気配がプンプンしてますからね」
エリカに確認するようにそう告げると、彼女も既に理解していたようで力強く頷きます。
「えっと、村に着いたらお礼としてご馳走はさせてほしいんですけど……」
「ああ、それは勿論頂いてきていいですよ」
「クロエさんのご飯、楽しみにしてますね。
それでは早速出発しましょう」
「は、はい」
こうしてエリカとクロエの出発を見送ると、私の感じていた気配の半分ほどがスッといなくなるのを感じます。
「おや、半数はここに残ってくれたのですか。
これは私もつまみ食いの楽しみが増えるというものですね」
そう言いながら、私は気配に全く気付いていないふりをして森の奥へと進んでいくのでした。