王都の検問と半裸の女性
「まぁ、そんな訳で結果としてこの世界に魔王はいなくなった訳ですね。
ついでに邪神も浄化されて子育てに専念してめでたしめでたしという訳です」
「お姉様……子持ちだったのですね」
「いや、認知はしましたけど納得はいってないですよ。
確かに身体の中に入れましたけど、まさか子供が出来るなんて思わないじゃないですか」
「話を聞く限り間違ってないんでしょうけど、クズ男が言いそうなセリフですよね」
「う……」
確かにセリフだけ聞いていると否定は出来ませんね。
「大丈夫ですよ、私はちゃんと分かってますから。
でも、お姉様の子供か〜きっと可愛いんでしょうね。
一度見てみたいな」
「そのうち機会があれば会う事もあるかもしれませんよ。
さ、今日のところはもう寝ましょう」
「はーい、おやすみなさい」
「おやすなさい」
こうして暇つぶしの話は終わって、朝……私達は再び街へと向かって歩き始めました。
ターネライの街を出てのんびり二週間かけて次の街、王都であるシュゲイム・ブライトへと到着しました。
流石に王都だけあって城門では1人ずつ検問されていますね。
検閲所があって身分証を確かめて中の出入りを確認しているようです。
「あれ……私は冒険者ギルドで勤めていた時に作った身分証がありますけど、お姉さまは?」
「私は商業ギルドのモントレイさんに発行してもらった身分証がありますよ」
「それなら安心ですね」
という事で検閲所へと続く列に並ぼうとしたのですが、そこで草木の陰で泣いている半裸の女性がいました。
「あの、どうなさったんですか?」
私が声をかけると女性は驚いたようにビクッと身体を震わせて怯えていたが、魅了スキルの応用でこちらに対して好意的な気持ちが向くように仕向けると、こちらの胸に向かって泣きながら飛び込んできたのでした。
そんな彼女を優しく抱きしめ、背中を撫でながら落ち着かせます。
暫く泣いてかなり落ち着きを取り戻してした女性。
「す、すいません……初めて会った方にこんなことを……」
「いえいえ、いいんですよ。
それよりも少し待ってくださいね」
彼女は私から離れようとしましたが、ちょっとその格好で離すのはアレなのでギュッと力を入れます。
「あっ……」
「すいません、もうすぐだと思いますので……」
「お姉様、お待たせしました!
並んでいる行商人の方から買って来ましたよ」
私が待っていたのはエリカでした。
彼女には予め念話で女性が着れる服を探すように言っておいたのです。
これだけの行列ならば商人がいるとは思いましたが予想が当たって良かったです。
いなかった場合は収納魔法から私の服を出しても良かったのですが……あれはステータスが上がりすぎますからね。
「とりあえず何でもいいからと購入してきたので似合うかどうか分かりませんが……」
「え、あの、その……」
「その格好のままでは不便でしょう?
遠慮なさらずに」
エリカが差し出す服を受け取らずに戸惑う女性に私はなるべく優しい声色で語りかけました。
彼女はまた目頭に涙を浮かべながら、
「ありがとうございます」
と、お礼を言って服を受け取るのでした。




