スキルドレインと眷属効果
「はぁ〜地竜退治より疲れた」
机に突っ伏して倒れ込むルインさん。
それに続くようにザトゥさんとロイスさんも椅子に座って力尽きていますね。
唯一、テンさんだけは少しマシと言ったところでしょうか。
「お疲れ様でした。
エリカ、彼らの面倒はお任せしますね」
「はい、お姉様」
3人の介抱はエリカに任せて、私はテンさんに報告をすることにしました。
「これが2日分の売り上げですね。
昨日も同じような忙しさだったので臨時で人を雇ったので、その分は差し引いてあります」
「……この宿屋を建ててからの収入を遥かに超えてるんだが?」
「そのぐらいのポテンシャルはあるということですよ。
あの3人が慣れるまで暫くは付き合いますが、私がいなくなった途端に閑古鳥が鳴くとかはやめてくださいよ」
「あ、ああ、そうはならないように頑張るよ。
ところで……」
そう言ってテンさんはチラリとエリカの方を見ました。
「あれってギルドの受付だよな?
何でここにいるんだ?」
「ああ、色々あって姉妹の契りを交わしました」
「お姉様って呼んでいるのは気のせいじゃなかったんだな」
「昨日は訳あって私の部屋に泊めたんですけど問題ないですかね?
エリカの分の宿代を払った方がいいなら払いますけど」
「ここまで世話になっておいて、そんな小さい事に目くじらを立てるほど狭量じゃないさ」
「それは良かったです。
では、後ほど確かめたいことがありますのでエリカと2人でお部屋に遊びに行きますね」
「ああ……って、え?どういうことだ?」
そう聞き返されたので、私はニッコリと微笑みかけて返します。
「私とエリカの2人を相手にする準備を整えておいてくださいということです。
大丈夫、疲れても回復魔法をかけますから」
そう話した私の前では、店の手伝いに入った時よりも絶望的な顔をしているテンさんがいたのでした。
……翌日、消耗して倒れるようにベッドの中で眠りについたテンさんを起こさないようにしながら、同じように精魂尽き果てて眠るエリカを抱えて部屋に戻りました。
「エリカのおかげでとんでもないことが分かりましたね」
ベッドに寝かせたエリカの頭を撫でながら、先ほどの実験結果を考えます。
私はテンさんからスキルドレインで調理スキルを吸い上げましたが、そのスキルを返した訳です。
しかし、眷属効果でエリカも習得していた調理スキルはそのままでした。
更に眷属効果で下の者が持っているスキルは上位者も使えます。
つまり、スキルを返したにも関わらず、私の所には調理スキルが残ったままだったのです。
「これ、悪用するとあらゆるスキルが無条件で手に入るということですよね。
……ただ、エリカの事を思うと無闇に取得するのは考えものですか」
「ん〜おねえさま〜」
「はいはい、それじゃ私も寝ましょうか」
寝言で私の名前を呼ぶエリカの頭を撫で、私もベッドに潜り込むのでした。




