眷属
何でしょう……勝手にお姉様扱いされているのですが?
スリスリと頬を寄せてくるエリカさんの頭を撫でていると、彼女のステータス画面が見えてきました。
……他人のステータス画面ってこんなに簡単に見えるものでしたっけ?
ステータスは自分の物は簡単に確認することが出来ますが、他人のステータスは自ら開示しなければ見えない筈で、それは相手に見せること言う事を宣告しなければいけないはずです。
エリカさんはそのような宣告などはしていないと思うのですが……何だか嫌な予感がしますね。
そうして確認していると、職業欄の部分におかしな事が書いてありました……アロエの眷属と。
更に種族も人間ではなく、ハーフサキュバスとなっていますね。
確かに高位の亜人が下位のものを眷属として迎え入れると言う事は聞いたことがあります。
「お姉様はこんなに素敵な力をお持ちでしたのね。
それに勇者様だったなんて……私、びっくりしちゃいました」
「え……あの、み、見えてます?」
「ええ、バッチリと」
これはお互いのステータスが見えてしまっているようです。
うーん、これは困りますね
「お姉様、安心してください。
私、お姉様の意に沿わない事をするつもりはありません」
「そうなんですか?」
「ええ、今や私達は血の繋がりよりも強い絆で結ばれた姉妹のような存在になりました。
私は何処までもお姉様に付き従いますわ」
「急にそんな事を言われても」
「お姉様は私が妹になる事、お嫌ですか?」
哀しげな表情でそう尋ねられると嫌だなんて言えないじゃないですか。
というより、エリカさんが眷属になってから確かに親しみと言いますか、そのような感情をより強く感じるようになっています。
「いえ、全く嫌だなんて気持ちはありませんよ。
突然の事で戸惑ってしまっただけでして……これからよろしくお願いしますね、エリカさん」
「アロエ様は私のお姉様なのですから、そんなに他人行儀の話し方は嫌ですよ。
名前も呼び捨てにしてください」
「そうは言いましても、今はこの喋り方が基本になってしまっていますので。
呼び捨てだけじゃダメですかね…….エリカ」
「もう、そんな風に仰られたら断る事なんて出来るわけないじゃないですか。
こちらこそよろしくお願いします、アロエお姉様」
こうして、偶然のことではありますが、私はこの街で絆で繋がれた妹が出来てしまったのでした。




