変わった肉体
目を覚ました私は辺りを見渡す。
辺りには既に誰もおらず、広い部屋の真ん中に私1人だけだった。
働かない頭のまま起き上がり、何があったのかを思い出す。
女神様から霊薬を貰い、身体が熱くなって……
「そうだ!私の身体!!」
やはり当たり前のように立てかけてあった鏡を確認する。
いつの間にか装備が外れて一糸纏わぬ姿となっていた自分の姿……だが、問題はそうではなく……
「なにこれ……胸が大きくなって下は無くなってる。
それに声もなんか高くなってるような……これじゃまるで……」
女の子みたいじゃないか。
そう言おうとして言葉を止める。
頭では分かっていたからだ。
みたいではなく、本当に女の子になってしまったのだと。
「……はぁ、とりあえずいつまでも裸のままじゃいられないし、装備はこの中かな?」
近くに落ちていた収納袋を手に取り、先程装備していた光のドレスを取り出すように念じる。
この袋の中は空間が無限に広がっていると言われ、幾らでも収容する事が出来る。
取り出す時はそれを思い浮かべながら袋に手を入れるのだ。
「おっ、掴めた。
……って、なにこれ!?」
取り出されたのは黒い紐と面積の少ない黒いショーツに、前側と後ろ側が開いており横しか隠していない黒いミニスカート。
それだけならば間違いかと思えるのだが、手袋とソックス、ヒールは全く同じものが出てきた。
「ちょっと鑑定してみよう。
えーっと、光のドレスの真の姿で名前は……サキュバスクイーンの礼服!?
サキュバスの女王となる者にしか纏えないって書いてるから私には無理……って、なんか着れちゃってるし」
サキュバスクイーンの礼服は意思でもあるかのように自動で私の身体に装着されていった。
紐で胸の局部だけを隠し、黒いショーツもこれで本当に意味があるのかと言いたくなるほどに最低限しか隠していない。
腰回りには衣が巻かれているのだが、
「うわ〜完全に痴女だ、これ。
まあ、最近流行りのビキニアーマーに比べたらマシだとは思うけど……それに私に似合ってて可愛いのは間違いないんだよね」
そうして鏡で自分の姿を確認していると、今までは全く意識していなかった動く物体を発見する。
フリフリと動くハート型の黒い何か。
それは紐のようなもので繋がっており、その行き着く先には……
「尻尾!なんか尻尾生えてる!!」
そう、私のお尻の付け根であった。
そして、腰のあたりから漆黒の翼が生えており、こちらも私の意思でパタパタと動いていた。
「……もう答えが出てしまっている気がするんだけど、万が一って事もあるからね。
最後にステータスを確認しないと」
そう言って出したステータスウインドウと呼ばれるもの。
自分の詳細が正確に書いてあるこの一覧の1番上の項目にハッキリとこう書かれていた。
アロウ・イエスター サキュバスクイーン
と。