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契約

「それにしても何だってそんな事が知りたかったんだ?」


そう尋ねられたので、私は昼に起きたことを話しました。


地竜が現れた事は勿論のこと、いま天衣無縫というチームが置かれている現状もです。


「そうか……あいつら今はそんな事になってたのか」


「知らなかったんですか?」


「あいつらからはパーティは順調だ。

お前は何も心配しなくていいとしか聞かされていないからな」


「テンさんの夢を応援してくれてるんですよ」


「……ああ、本当に良い奴らだよ」


きっと天衣無縫の皆さんはパーティから抜けたテンさんを恨んではおらず、寧ろ応援しているのでしょう。


それからしばらく沈黙が続いていたのですが、テンさんがポツリと呟きました。


「なぁ……何かあるのか?」


「仰りたい事は具体的にお願いします」


「アロエさんが声をかけてきたのは、その話していた当てが俺だったからだろ?」


「ええ、まぁ、当ては外れてしまいましたが」


そう言ってお手上げのポーズをして首を振ります。


「引退していた俺を引き戻せるような何かがアロエさんにはあるのか?

力を与えたり、心を強くしたり……そんな何かがあるんじゃないのか!?」


それまでは冷静に話していたテンさんですが、ここで縋るように私の両肩を掴んできました。


「……本当はパーティの役に立ちたいんですね」


「あいつらはいい奴だ。

なのに、俺の勝手のせいでこんな事になってしまってるのが申し訳ないんだよ。

俺だけが夢を応援されてる立場なのが我慢できないんだ」


「分かりました……方法はあります。

テンさんの心を冒険者をやっていた、仲間のためなら死ぬことも恐れないところまで戻せば良いだけですからね」


私がそう言うと、テンさんは呆気に取られたようなひょうじょうになります。


「そ、そんな簡単な事じゃないだろう」


「簡単な事ですよ……私にとっては。

……但し代償は頂きます。

この条件を呑んで頂けるならば貴方に一時的に戦える力を与えましょう」


「ほ、本当か!

代償なんて何だっていい。

あいつらの為にもう一度戦えるなら……」


そう言って慌てて了承しようとするテンさんの唇に人差し指を押し当てました。


「慌ててはダメです。

契約は条件を正しく理解し、しっかりと同意する必要があります。

夜はまだまだ長いのですから……ゆっくり語らい合いましょう」


こうして私は夜間のほとんどの時間をテンさんの部屋で過ごし、明け方頃にこっそりと自分の部屋へと戻るのでした。

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