本来の形
ここから4人で巻き返して熱い勝負が繰り広げられる……と言うわけでもなく、勝負は呆気なく決着を迎えます。
元々3人の強さを想定して設定していたので、私がタンクを引き受けてしまえばこのような形に終わるのは必然でした。
最も、私が入った事で3人の動きが想定していたよりも遥かに良くなったのも理由ですね。
これが本来の彼らの形であり、テンさんが抜けた穴はこれ程大きかったと言う事でしょう。
「あ〜久しぶりに楽しかった!
アロエお姉ちゃん、ありがとう!!」
大きく伸びをしながら私にお礼を言うルインさん。
「こんな戦い方をするのは無理だと思っていたのですがね」
「ああ、久しぶりに血がたぎったよ。
嬢ちゃん……いや、アロエさん。
頼みがあるんだが……」
ザトゥさんが真剣な顔をしてこちらを向いた、その時でした。
「マスター、今はダメですってば!!」
「ええい離せ!
我がギルドのトップだった天衣無縫が復活したのだぞ!!
ならば今頼まなくてどうする?」
「だからアロエさんは違うんですって!!」
「あれだけの連携を見せてパーティメンバーじゃないなんて話があるわけないだろう!
天衣無縫の皆、失礼するぞ」
ギルドに続く扉の向こうから声が近づいて来たかと思うと、突然扉が開かれ……
「ああああああ、なんて事してるんですか!!
アロエさん、お邪魔してしまって本当に申し訳ありません」
扉から現れたのは筋肉ムキムキで大柄な白髪のお爺さまと、先程の地味な見た目の受付嬢のエリカさんでした。
「まだここの使用時間に余裕はあったはずだが、ギルド長自ら何のようだ?」
「無礼なのは申し訳ないと思っている。
しかし、天衣無縫が復活すると言う話を聞いてしまっては、居ても立っても居られないというのも分かって欲しい」
ギルドマスターと呼ばれたお爺さまの言葉に私達は顔を見合わせる。
「復活……って、私達はずっと天衣無縫として活動していましたが?」
「活動といってもランクに見合わない小さな仕事ばかりだろう。
ギルドの憧れだったお前達がそんなみみっちい事やってるせいで、下からも疎まれていて見ていられなかったからな」
ああ、なるほど……と、私は心の中で納得しました。
ギルド内に入ってからの、天衣無縫に対する周りの態度。
それはかつてはトップとして華々しく活躍していた彼らが落ちぶれたことに対する侮蔑だったのでしょう。
それだけではなく、テンさんが抜けた状態では今までのランクの依頼は受けれず、仕方なく下位の依頼を受けますが、そのランクの人間からしたらテリトリーを荒らされているようなものですからね。
そこまで踏まえた上でのギルドマスターの態度……面倒な事になりそうですね。
半分は自分が蒔いた種なので仕方ありませんが。




