商機と誘惑と女の子
テンさんにものすごい勢いでツッコミを入れられましたが、実際大した事はしてないですからね。
「ゲオルグさん、貴方の宿屋も盗賊団に仕入れを潰されて困っていたのでしょう?
その問題はアロエ様が解決してくださったのですよ」
「そして貴方の宿屋にも些少ですが見舞金を届けさせて頂いております。
それもこれも全てアロエ様のご厚意があればこその話なのですがね。
何か仰らねばならない事があるのではありませんか?」
2人のおじさまはにこやかに笑っていますが、その言葉の外からはっきりと圧力をかけているのが分かりますね。
「う、ぐ、ぐ……あ、アロエ様。
先程は無礼な物言い、大変に失礼しました」
「いえいえ、気にしていませんので。
それで、本来のご用件は宜しいのでしょうか?」
「う、あ、いえ……今日はこの辺りで失礼させて頂きます」
4人の視線を一身に受けたゲオルグさんは踵を返して青龍亭を出て行こうとしますが、そこにおじさま達が一言ずつ声をかけました。
「そうそう、我が商業ギルドでは今後積極的に魔物肉の販売を行おうと思っていますので、ご入用の際は是非」
「勿論我が商会でも取り扱わせて頂きますよ。
アロエ様のご推薦ともあれば魔物肉の地位は必ず向上しましょう。
この青龍亭は魔物料理の開拓店として人気を博す事になるでしょうね」
「ぐ、ぬぬ……失礼する」
ゲオルグさんはそのまま振り返る事なく青龍亭を後にしました。
「店主、騒がしくしてしまってすまないね。
魔物肉の件は後日相談したいのでまた寄らせてもらうよ」
「私も今度は従業員を連れて来させていただくことにしましょう。
今日は美味しいものをありがとうございました」
「あ、は、はい!
ありがとうございました!!」
「おじさま達、またお会いしましょうね」
私がそう言って手を振ると、2人のおじさまの頬が若干緩みます。
気を引き締めるためにこほんと軽く咳払いをしてから、2人は代金を支払って青龍亭を出ていきました。
「これでこの宿屋も評判になりそうですね」
「あ、ああ、何かなら何まで……どうお礼を言ったらいいやら」
「あら、お礼をしたいのでしたら夜中に部屋を訪ねてきてくだされば良いのですよ。
それとも、私の方から訪ねましょうか?」
「またそういう冗談を。
俺だからいいが、そうやって男をからかうと酷い目に遭うぞ」
「私は本気……」
「たっだいま〜」
私は冗談を言っているつもりは無いと伝えようとした時でした。
青龍亭に元気の良い声で女の子が入ってきたのでした。




