勇者、試練に挑む
新連載作品です。
よろしくお願いします。
尚、本日は1時間ごとに24話更新する予定です。
作品の性質上、濡れ場がありますが昨夜はお楽しみでしたねシステムを採用しております。
長い旅路の果てに魔王との決戦まで後少しという所まで来た。
最後に女神の加護を受けて勇者の真の力を引き出すための試練を受ける為、仲間を置いて1人で試練の塔を登って行く。
1人での戦闘は苦しく、今までは仲間のサポートがあったからこそ乗り越えられたのだと実感する厳しい戦いの数々。
帰ったらあいつらにお礼を言おう……そう心に誓いながら開いた宝箱。
これが俺を……私を変えた1番の出来事だった。
「これが……勇者の装備なのか?」
宝箱の中に入っていたのは赤いリボンだった。
今装備しているミスリル銀の兜よりも明らかに弱そうであったが……
「え……なんだ、これ?
これって間違いじゃないんだよな?」
そのリボンはミスリル銀の兜よりも遥かに強力な護りを与えてくれ、更に状態異常の全てを防いでくれるという信じられないほどの性能を有していた。
「でも、これどうやって……あっ」
俺が迷っていると兜が勝手に収納袋の中へと片付けられ、顕になった金色の髪にリボンがスルスルと巻きついていく。
どんな形になったのかと、偶々近くに置いてあった鏡を覗き込む。
「え……これが、俺なのか?」
そこには金色の髪を左右で一つずつ結んだ自分の姿が映り込んでいた。
昔から女性に間違われる顔のおかげで、パッと見は可憐な少女のようである。
「……は、いかんいかん。
自分自身に見惚れるとか洒落になってないぞ!
これは試練なんだからもっと心を落ち着かせなければ」
邪念を振り切るように先に進む。
先程まで苦戦していたのが嘘のように楽になったのは、リボンの強さと状態異常耐性のお陰であろう。
だが、それでも道のりは長く、回復魔法の使い過ぎで魔力が切れかけていた時であった。
再び部屋に置かれていた宝箱を開くと、中にはゴシック調の赤と黒をベースにした女性物のドレスに、その衣装に合わせた手袋とヒールの靴が置いてあった。
「いやいやいや、流石にこれは……ま、まぁ、鑑定くらいはして……嘘……だろ……」
なんと、そのドレス達は単体で今のミスリル銀の鎧達を遥かに凌ぐ能力を揃えており、セットで装備する事で体力と魔力の自動回復効果があるのだという。
これは、いま正に自分が必要としている装備……それは間違いないのだが……
「いや、流石にこれは……」
そう迷っていた時であった。
またも偶々近くに置いてあった鏡が目に止まる。
その鏡の中に写った自分の姿を見た時にふと頭によぎってしまったのだ。
案外似合うんじゃないか……と。
俺がそう思ってしまった瞬間であった。
突然、リボン以外の装備が全て外れ、それと同時にいつの間にか身体にドレスが纏われていたのだった。
そして、俺は見てしまった……金髪の髪に映える赤いリボンでツインテールに纏め、ゴシックドレスを着た、どこをどう見ても美少女にしか見えない自分の姿を。
そう……この時、既に私はあの忌々しい邪神の罠にハマっていたのである。
♢ ♢ ♢
リボン:あらゆる状態異常を無効化する魔法のリボン。
装着者の髪の長さを自在に操作し、自動で好きな髪型に整えてくれる機能付き
光のドレス一式:赤と黒を基調としたゴスロリドレス。
右手が黒、左手が赤色の手袋と、右足が赤、左足が黒色のハイソックス、右足が黒、左足が赤色のヒールもセットとなっている。
この世界で購入できる最高峰の防具よりも防御力が高い。
また、全てを装備する事で体力と魔力の自動回復効果が付く。
これだけでも協力なのだが、高位の存在により与えられた仮初の姿であり、本来の形と力は別である。