エンディング
魔塔キングスタンの一件、ベグド一行が爆発を起こす前には騎士団は魔塔向けて突撃していた。それはベグド一行を信じていたのではなく、魔塔完成までに攻撃しなければという騎士団の判断故の行動だ。
つまり、ベグド達が魔塔に行っても行かなくてもこうなっていた。しかしベグド達が魔塔に行って暴れたからこそ、救えた命は多く、そして犠牲者は殆ど出なかった。
ヴァグラという大将だけでなく、ナガールという伝説級の味方が殺されたのだ。魔塔には統率力というものはなく、魔王軍全体からしてもかなりの被害。
故に魔王は前線を大きく後退させ、力をつけようと防御を固めた。
魔塔キングスタンに突入した兵士からはこのような報告があがっていた。
『魔塔キングスタンは防備が完全ではなく、破壊されているのもあった。これは潜伏していたとされるベグド一行による功績だと予測される。しかし、魔塔を統率していた程の魔物との遭遇はなく、奴らはこの塔を捨てたと思われる。
倒せずとも、ベグド一行によって大物の魔物は逃げの選択をとったと思われる。
そしてそのベグド一行は行方不明である。衣類や防具はあるものの、肝心の彼らの姿はなかった。晩酌の痕跡あり。』
誰もベグド達の行った偉業に気が付かない。ヴァグラを倒し、長年人間達を苦しめてきたナガールという存在が彼らによって倒された事を。
生きて変えれば英雄扱いだが、ベグド達にとってはそこまで魅力的ではないであろう。特別扱いをされて調子に乗り、傷付けた人間を知っているからだ。
栄光、特別感。それは人を魅了する最上の幸福だが、時にそれは猛毒と化す。望むならいくらでも望むといい。しかし、それを手にする時には常に心掛けなければならない。
そんな栄光だけを見、特別感だけに憧れた冒険者や兵士は今日も魔王軍と戦う。自分の命を投げてでも英雄という甘美な果実を食らうため、死地へと乗り込む。
しかし、そんな中、栄光は見ずに過去に見た光を見た者達が参上する。
短い黒髪の青年は仲間を引き連れ、自分の首にかけてある赤い宝石が埋め込まれているブレスレットを手の中にしまい、山の頂上から魔王軍領域を見つめた。
「十五年前、ナブリット村で俺達はベグドさんらに助けられた。今はお礼の言葉なんて言えないが、いつか言いたいな。多くの魔物をぶっ潰して、魔王を倒し、あの世でベグドさん達にお礼を言おう。
....さぁ行くぞ!ラロ!ズヌビ!リヴェ!エリクサ!ベグドさん達が出来なかった偉業、俺達でやってみせよう!!」
青年は背中にかけてある大剣を両手で天に翳すと、他四名の仲間も同じくそれぞれの武器を天に翳す。ベグド達に見守って貰えるよう、祈りを込めて。
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この度はこの作品に目を通して下さってありがとうございます。読者の方々が読んで「時間の無駄だったな〜」と思ってしまう作品かどうかは定かではありませんが、最後まで読んでくださった方々には本当に感謝しております。
勇者パーティーをクビにされるといったよく見るカテゴリーに、少しでも工夫を入れたいなと思ったのが今作品を書こうとしたキッカケです。
なので読む当初の予想や期待と違う方向へもっていき、物語を少しでも盛り上げようとしました。
個人的にはロワン脱落は良かったと思っていますが、天使の存在は私自身舵の切り方を間違えたかな〜と実感しています。
ただ、人はそんなに急成長しないと思ってもいたので、いずれ変な舵取りはしていたかもしれません(笑)
次作に関しましては今作よりも力を入れている為、まだ未完でありますが今作よりも長い作品になります。未熟者が見栄を張るようではありますが、個人的に自信作となりますので、興味を少しでももたれましたら次回作も見てくれると嬉しいです。
今作は個人的に色々な反省点が浮いた作品ではありますが、最後まで書ききったので私としては多少なりとも満足しています。
最後に繰り返しとなりますが、最後まで読んでくれた方々に感謝を申し上げます。本当にありがとうございます!