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挽回

「あぁ、見てたさ。ありがとうなウラロ、ウラロのおかげで俺達は命が助かったよ。

 お前は少し休んでてくれ、ナガール倒した後の俺達の回復作業が待ってるんだからな。」



「うわ〜...嫌だなぁ〜。でも、そうならちゃんと休まないと...だってそういう事なら、ナガールを倒してくれるってことだもんね。」



「あぁ、任せとけ。」



 俺の言葉を聞いてウラロは口角を上げるが、そこからはやはり辛そうにしながら目を瞑っていた。



「...レネ、援護射撃はいい。ウラロの事を頼んだ。それに、探知の方はどうだ?見つけられたりは....」



「...ゴメン、まだ見つけられてない。だけど目星はある。私の予想が当たればすぐに見つかるよ。」



 レネの言葉を合図にするかのように、俺達の目の前に白い砂の風が登場し、やがて塊となる。そして風が止むと、手品かのようにスケルトン軍団が登場する。


 ほんと、絶望的な再生力を持ってるよなコイツら。



「レネ、どうだ?」



「...うん、見つけた。ゴルド、突入よ。あの軍団の丁度真ん中辺り、そこの地面を無駄に大きいアンタの腕で破壊して。核は床中にある。」



「言葉一つ多いだろレネ。というか床中とはねぇ〜、馬鹿な俺でも理解出来たぜ。核がスケルトン軍団のどれかだったら、軍団巻き込む魔法をナガールは放てないからな。

 よし、じゃあやるか。ベグド、核壊したら二人で行くぞ?」



「フッ...なら核をちゃんと壊してくれよ?もう一回レネに聞き直すのはナシだからな。」



 互いに頷いてタイミングを合わせ、俺達はスケルトン軍団に突撃した。奴らも今回から完全に戦う気らしく、向かってくる俺達を待ち受けた。


 しかし、俺に関してはそんな事は眼中に無い。俺の目に映るのは、背後に回られても椅子の向きを変えて鎮座しているだけのナガールしかなかった。



 そしてそんな俺より一歩前にゴルドは走り、スケルトン軍団の一歩手前で大きく飛び上がる。そしてレネの言葉通り、軍団の中心の床中にある核目掛けて、スキルによる第二の拳を振りかぶる。




「うぉぉぉ!!ぶっ壊れろぉぉぉ!!」




 雄叫びと共にゴルドは狙い通りの場所に拳をぶつけた。スケルトンを潰しながら床を貫き、腕が入る限界まで埋まらせた。


 すると、ゴルドが放った攻撃の爆音と共にスケルトン共は力なく倒れていく。俺を斬ろうとしていた奴も糸が切れた人形のように倒れる。


 そして俺はそんなことを気にしない。こうなることは当たり前であり、集中すべきなのはナガール。奴はスケルトン軍団が無力化されたのと同時に立ち上がり、右掌の翳してくる。いよいよ、奴も本格的な戦闘態勢に入ったってことだな。


 一直線に奴に向かっていた俺は左に曲線を描くように展開、ナガールは俺を追うように右掌を動かし、浮き出した魔法陣から攻撃魔法を放つ。

 火、水、土、雷。様々属性のあらゆる魔法が放たれ、距離を詰めれないという条件で俺はその攻撃を避け続けた。


 しかしこれでいい。俺に意識がいっている間、スケルトン軍団を無力化したゴルドが俺と真逆の方向に曲線を描くように奴に近付いているからだ。


 俺を意識していた分、ゴルドに対しての反応が遅れる。ナガールはかなりゴルドの接近を許した上で左掌を向けて魔法を発動。俺と同じく魔法の弾幕で抑えようとするが、かなり接近していたゴルドに対して出来ることは限られており、数度魔法を避けるとゴルドの手はナガールに届く距離までになった。



「ぶっ壊れろぉ!クソ骸骨!!」



 ゴルドはスキルによって生み出された巨大な第二の右拳でナガールの横腹辺りを殴る。鉄の塊に鉄をぶつけるように重い音が聞こえ、ナガールは殴られた反動で少し地面を滑る。

 ゴルドの剛腕に殴られても尚、ナガールは平気そうだった。元々表情が分かりずらいのでもしかしたら効いているかもしれないが、苦悶の表情を浮かべることはなく何事も無かったかのように左掌を向ける。


 魔法が放たれ、ゴルドがそこから緊急避難を行うのと同時に俺が奴の懐に潜り込む。さっきとは逆、ゴルドに意識がいっている間に俺が攻める。

 ナガールが俺に気が付いたのはかなり遅く、俺が奴の身体に大剣をぶつける直前だ。


 奴の右足を叩き斬ろうと振るが、ナガールは恐ろしく硬い。これはナガールの元々の防御能力ではなく、薄ら光を放った魔法による保護具のようなものが関係していると悟る。


 何度も剣撃を繰り返せば傷を負わせることは出来るが...そう思いながら再び剣撃をぶつけようとするが、ナガールは右掌を向けて攻撃し始めたので、ゴルド同様そこから離れる。


 それからはこの繰り返しだった。俺が攻める時はゴルドが下がり、俺が下がる時にはゴルドが攻める。ナガールが俺達両方を意識して攻撃しようにも、探知という仕事の終えたレネの援護射撃が上手くナガールの気を散らしてくれた。


 ナガールは俺達に大したダメージも与えられず、接近戦でやり放題させられていた。




「クッ....貴様ラ、イイ加減ニシロ!!」



 ナガールが両手を広げると、奴を中心に突風のような衝撃波が放たれた。全方向の衝撃波はレネの矢だけでなく俺達も弾く。俺とゴルドは折角ナガールの目と鼻の先にまで接近していたのに一気に距離を離された。


 俺達にとっては振り出しに戻ったのと同じで、ナガールにとっては思わず笑みが零れる状況だろ。しかし、俺には殆ど関係ない。


 俺達との距離を作れたことに安堵している奴の前に俺はすぐに現れた。青色の粒子を身に纏い、口を半開きにしている奴にポソりと俺は告げた。



「スキル・神速(ゴッドラッシュ)。」



 俺は温存していたスキルを発動。奴に攻撃を定められないように奴の周りを動き続け、斬撃を食らわす。

 ナガールにとって今の俺は身体に纒わり付く鬱陶しい蝿のような感じだが、その蝿は鋭い牙を持って何度も噛み付く。今の俺はそういうイメージだ。


 奴の目に留まらぬスピードで全身を駆け巡り、あらゆる箇所を斬っていた。それはやがて保護具を切り裂き、奴の身体を傷つけて行く。



「グ...グォォォ!ニ、人間風情ガ!」



「年貢の納め時って奴だナガール!!もう十分すぎるほど長生きして多くの命を奪ってきたんだ。終わらせてやるよ!!」



「フザケルナ...貴様ナンゾデ我ノ首ヲ取ルナド、不可能ダ!!」



 ナガールから魔力を感じた。何かしらの攻撃をするのは確かだが、俺は奴から感じる魔力に冷や汗をかいた。先程までとは違い、何か異質。この空間を凍り付かせるかのような、自分に死の予感を的確に与えてくるその魔力が驚異に思い、俺は奴の場所からすぐに離れた。


 ナガールは黒い瘴気を全身から発生させていた。まるで湯気のように身体のあちこちから立ち上り、ある程度上がるとスーッと消えていく。そんなナガールを見て俺は驚異的だと本能に察し、身体が膠着する。

 しかし、俺と同じく本能で察しているにも関わらずナガールに向かっていった奴が見えた。ゴルドだった。今のナガールは危険だが、かなりのダメージがある。その好機を優先させたようだった。



「ば、馬鹿!ゴルド、突っ込むな!」



 俺の言葉はゴルドの足を止めることは叶わず、一直線でナガールに向かっていく。それに対してナガールは左掌を向け、今度は魔法陣ではなく瘴気の塊を放った。

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