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もう一人の自分2

「な、なぁ...お前達は何を知ってるんだ?教えてくれ!なんで俺に殺されかけたのに俺の前でそんな表情が出来るんだ?話し方も変だ!まるで俺じゃないやつと会話してるみたいな...」



「....あぁ。そうだよ。」



 ゴルドは上半身を起こし、真剣な表情を俺に向けた。ゴルドは俺の抱えている問題に真正面から相手してくれるようだが、レネはそれを良く思っていない様子だった。



「ゴルド!それを言うのはダメって言ったでしょ!?」

 


「そうだけどよ、この先ずっと隠し続けれるのかよ?今だって手に負えなかったんだぜ?本人が自覚してれば、もう少し何か打開策も見つかるかもしれないし、アイツが引っ込んでる今しかないだろ?

 しかもこれから魔塔戦だろ?重要な所で暴れられたら困るだろ。」



「それはそうだけど...」



「大丈夫だ。そんなズカズカ突っ込むことはしねぇよ。分かってる範囲で、踏み込んじゃいけない領域には気を付けて話すだけだ。」



 そう言われたレネは渋々納得し、ウラロはチラチラと俺の様子を確認しながら二人を心配する。俺はこれから何を言い渡されるのか、まるで余命宣告を受けるような緊張感が俺を満たしていく。



「....ベグド、俺達もそんな良く知らないから簡単にハッキリ言うぞ。お前には何かが取り憑いてるんだ。その何かが時々お前の身体を操る。」



「取り憑く?...ゴーストの類か?それともワイトの呪いか?」



「いや、そうじゃないらしい。この話はレネから聞いたが、レネはカリに聞いたらしい。ほら、王都でお前と変なやり取りしてただろ?」



 そういえばカリは何か変だったし、意味深な発言をしていた。聖人を目指すなとか言ってたっけ。



「カリのスキルはそう言った普通の人には見えない取り憑く者を見れるらしいんだよ。普段はお前の言ったゴーストとか呪いとからしいんだが、お前は特別らしいんだ。その...カリもハッキリとは言わなかったらしいし、憶測は出来てもそれをあんまり口にするのは良くないから言わないが、とにかく良い奴がお前に取り憑いてるんだとよ。」



「い、意味が分からん。俺に取り憑くったって、どのタイミングだ?それに、良い奴とは思えないぞ?俺の身体を好き勝手操った挙句、お前たちを殺そうと....」



「取り憑いたタイミングは分からねぇ。お前が失踪してからどんな生活してたか俺達にも分からないからな。ただ、お前に取り憑ついてるのは良い奴過ぎるんだよ。何か、俺達とは価値観がズレてるっていうか、格が違うっていうか.......

 でも、ただ一つ言えるのはソイツに悪意はないってことだ。お前を破滅させてやろうって気はないらしいし、お前を助けてやろうとしてるんだと思う。」



 俺を助ける?もしそれが本当にそうなら、なんてふざけた奴だ。俺を救う事が仲間を俺の身体で切り刻む事なのか?価値観が違うにも程があるぞ!!

 

 ...でも、もし俺に取り憑いてるコイツが俺の罪を知っているんだとしたら、俺の大事なもんを壊して俺を絶望させるのが目的なのかもしれない。....元を返せば、俺が立ち直ったキッカケはロワンへの懺悔だ。苦しむことが目的...なら、ゴルド達が殺されたんだとしても、俺のせいって訳か。




「....話は大方分かった。なら、お前達は俺から離れてった方がいい。今だって殺されかけたんだ、俺もお前達を全く殺したくなんかないし、ここで別れた方がお互いの為になる。」



「...断る。俺はお前の傍にいるぜ。」



 お互い納得し、後悔はありつつも解散する未来しか見えなかった俺にゴルドは親指を立てつつ笑顔を向けてくれていた。そんなゴルドに俺は目を見開いて呆けることしか出来なかった。



「ここで逃げたらお前をぶん殴ってた時の俺に逆戻りだ。お前がなんで取り憑かれたのかは知らないが、俺があの時違った行動をしてればそんな事にはならなかったんだと感じるんだ....

 だから、俺はお前の傍にいる。確かに人助け、魔王討伐で罪を償うが、俺にとってはお前を助けることも罪滅ぼしになるんだよ。」



「ゴルド...」



「へへ...で、お前達はどうだ?このままベグドと離れるか?」



 ゴルドは少し声を大きくして二人に呼びかけると、ウラロは少し微笑み、レネは逆にゴルドを睨みつけた。



「ウラロは勿論行くよ!元々パーティー組みたいって言ったのはウラロだし...」



「私も行くに決まってるわ。こんな中途半端なところで終われない。」



 レネの回復も終わり、二人はこちらへ歩いてくる。息を飲みつつ三人を見ている俺に、ゴルドは笑顔を向けた。




「こういう事だ。取り敢えずここは敵地だからさ、細かい事は後回しにしよう。またお前に取り憑いてるアイツが出てくる前にチャチャッと終わらせようぜ。」



 ゴルドの口調からして、裏があるとは思えないがレネとウラロに関しては少なからず俺の中のもう一人に怯えている筈だ。ここから先、俺はこのメンバーの中には居てはいけない気がする...このもう一人はどうやったって離れてくれないって何となく分かる。

 だが、ゴルドの言う通りだ。今は目の前の魔塔に集中しよう。



「....そうだな。ただ、俺自身もう一人の方がいつ出てきたか感覚が掴めないんだ。その片鱗が少しでも見えたら知らせてくれ、何とか抑え込むよう頑張るよ。」



「へへ、分かったよ!それにしても、あんだけ騒いでたのに魔物共は様子を見に来ることすらしなかったな。どうしてだ?」



「どうしてだろうな?音が外にあんまり漏れてないのかも知れないし、そもそも避難経路は俺が倒した二体に他の魔物は任せきってるのかもしれない。

 ただ、長居は無用だ。今の今までは運が良かったって思い込んでさっさと行動しよう。

 ゴルド、早速だがこの爆発物を背負えるだけ背負ってくれ。これは普通に役立つからな。」



 俺の指示にゴルドは「任せてくれ」と言わんばかりに胸を強く叩き、レネが持ってきていた縄を胸の中心を交差する形で爆発物を背負う準備をする。

 別にこういう事を想定した訳では無いが、役立つかもということでこう言った小道具は持ち合わせている。


 結果ゴルドの背中には小型の四角の爆発物が十個乗せられた。彼の背中の広さを考えればもう少し置けそうだが、これ以上だとゴルドの負担が大きいし、これだけでも相当の威力だ。




「よし、それじゃあ改めて行くとするか。慎重に行くぞ。」



 俺の掛け声で三人の顔つきが緊張感で険しくなる。その三人の緊張が伝わり、俺自身も集中。ドアノブをゆっくりと捻って少し開け、大剣を手に取って刃先でゆっくりと扉を開ける。


 するとまず最初に飛び込んできたのは音だった。避難経路に居た時には聞こえすらしなかった爆音。それは物がぶつかる音でも弾く音でもなく魔物の咆哮。まるで魔物のお祭りのような感じだった。


 魔物の異臭が鼻を刺激し、俺は目を細める。小さく開いたドアから顔を少し覗かせると、そこは魔塔を一目見て想像がつくような構想が広がっていた。


 全ては黒っぽいレンガで形成されており、避難経路の扉を抜けると二軒程立てられるような広間がある。そしてその先には手すりが立てられた廊下が横へ伸び、その手すりの向こうは大きな空洞だ。


 魔塔は中心が大きな空洞であり、廊下が螺旋状で形成されていた。ここは一階のフロアでは無いようで、魔物の咆哮は下から響いている感じだった。そして広間の先の廊下には普通に魔物がいた。ゴブリンだけでなくガーゴイルが空を飛び、ワイトと思える魔物が廊下に沿って上へと登っていったりしていた。


 だが、それよりも注目しなくては行けないのは殺風景な広間にある一つの建造物。恐らく、この経路の番人の詰所みたいな所だろう。黒いレンガで縁取られた窓からはゴブリンが退屈そうに時間を潰していたのが見えた。

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