陵辱
丸一日が経ち、俺は疲労をポーションで回復させ、意を決して目の前にある槍のように設置してある木造の防御壁の間を潜り抜け、とうとう魔王軍領地へ潜入。目的であるラビレット山まであと一息という所まで来ていた。
「よし、本当にあと少しだ。...こんな危ない地に一人で来て、いきなり弟子にしてくれなんて言ったら驚くだろうな。だって、自分より格上だと思っていた人物が実は弱くて頭を下げるんだからな。
でも、俺一人でここへ来れたという事実があるから、その度胸とかを買って貰えるかもしれない。希望はある。
....王都のようになるかもしれないが、どんな惨めな思いをしてでも弟子になってやる。」
俺は疲れを消し飛ばすかのように今一度覚悟を決め、再び前へと進み始めた。
そこから三時間程経過し、俺は目的地であるラビレット山へと辿り着いた。まるで魔王軍の前線を守る為に作られたかのように堂々とした大きな山。ここを登らないといけない事に俺は唾を飲み込み、ゆっくりと山道を進み始める。
整地などされてるはずもなく、凸凹の道に足を取られ、通常よりも早く疲労が溜まる。その上、音を出してはならない状況、死と隣り合わせの環境に俺の精神もすり潰されていく。
荒れる呼吸を無理矢理押さえ込み、疲労と精神の消費で視界が霞んでくる。今にも倒れそうだった。
その時、俺は一瞬だけ気が緩んでしまった。寝落ちするかのようにガクンと頭が力なく下がった時、アクセサリーが俺の頭をするりと抜け、山道を外れて坂道へ滑り落ちていく。
「や、やべぇ!!」
俺は咄嗟に山道を外れ、滑り落ちていくアクセサリーを追っていく。隠密とは真逆に小石や落ちている葉を蹴り飛ばし、騒音の限りを尽くしながら追った。ロー・オークの事など頭にはない。ただ、ロワンの遺品であるアクセサリーしか俺の頭には無かった。
アクセサリーが足元まで来るほどに追いつくと、俺は水に飛び込むようにそのアクセサリーまでジャンプ。結果、アクセサリーを掴むことに成功するが、飛び込んだ先は地面ではなく一人分の高さはあるであろう段差だった。
俺はアクセサリーを守るように身体のうちにしまい、落下の衝撃に備える。
落ち葉がクッションになってくれたが、それでも賄いきれない衝撃が伝わる。疲労とはまた違って視界がかすみ、俺はすぐの立ち上がることが出来なかった。
怯んでいた俺の足を何者が掴んだ感触があった。そこに目線を向ける前に、その何者は俺を段差近くの洞穴に引きずり込もうとする。
「な!だ、誰だ!やめろぉ!!」
地面に爪を立てて抵抗しようとするが、その何者の怪力には歯が立たない。ズルズルと引きずられ、薄暗い洞穴に侵入。ある程度連れていかれると、俺は投げ飛ばされた。
何回転か転がり、怯みつつも目線を開けると、俺は視界に映ったものを見て驚愕する。
動物の皮を下半身に付けているだけの半裸な人物達。全身青紫色で大きな腹が身体のラインから外れて膨らんでいる。顔はまさに鬼。大きな牙に小さい二つのコブ、ヨダレをダラダラと垂れ流しながら荒れている呼吸で俺を見つめている合計四体のロー・オークだった。
ロー・オークの大人は三~四メートル程に大きくなるが、見た感じ俺と同じ背丈。人間の価値観では大きく見えるが、ロー・オークの子供だった。
三体が洞穴の奥で俺を見つめ、洞穴の出口にはもう一体、出入り口はそこしかなく、完全に挟まれた状態。
知能がほぼ無いとはいえ、ロー・オークは人間の身体能力を軽々しく超えるほどの化け物。まさに絶望的な状況だった。
ど、どうする?どうやって逃げ出せばいい?アイツらすぐにでも俺に襲いかかってくるぞ。あんなに鼻息荒く興奮してるんだ、すぐに殺されて餌にされ.......
俺は目の前の三体のロー・オークに絶望しながら見ていると、ある違和感を覚えて下半身を見る。
ロー・オークの三体とも、動物の皮の衣服を突き抜ける突起物が俺に向けられていた。清々しい程に真っ直ぐに立っており、そこから足元にかけて今もドロドロと濁った液体が絶えなく落ちていく。
俺は全てを悟った。こいつらは腹を空かして俺を襲ったのではない。子供の分際でませているのだと。
ロー・オークは知能がない分、生物的本能には恐ろしいほど従順だ。放たれているロー・オークの殆どがオスでメスは滅多に居ない。故に、子供だろうが種族繁栄には凄く積極的だ。
この危険地帯に足を踏み入れ、ロー・オークの犠牲になったパーティーの事例は幾つかある。
その殆どは食い殺された結果だが、その中には激しい強姦の末なぶり殺しにあったのもある。その被害は何も女性に限った話ではない。
ま、マジかよ!こいつら本気かぁ!?
俺は顔を真っ青にし、決死の覚悟で立ち上がると出入り口を塞ぐ一体の横を通り抜けようとする。しかし、そう簡単に上手くいくはずもなく、肩を砕くように強く掴んだロー・オークは俺を再び洞穴の奥へと投げ飛ばす。
目の前に来た性欲発散具に三体のロー・オークは更に興奮する。まるで目の前で絶世の美女に裸体で誘惑されたように激しい興奮、押さえつけていた鎖が解けたかのように三体は俺に襲いかかってきた。
「クソ!やめろぉ!やめろぉぉぉぉ!!」
俺の絶叫の言い分を聞く相手では無し。奴らは暴れる俺の手足を捕まえ、うつ伏せの体制にさせた。身にまとっていた服が奴らに無理矢理剥がされ、俺は必死に抵抗し続けた。しかし、その抵抗は一瞬緩んだ。
それは自分の腕や背中、尻に生暖かい突起物が当たったからだった。俺はそれを感じた瞬間、涙を流していた。とてつもない恐怖と屈辱感が俺を襲い、同時にある事を思い出した。
...ウラロもこんな思いをしていたのか?ゴブリン達に無理矢理身体触られて、強姦されかけた時....女なんだ、俺よりもっと辛く怖い思いをしていたはず。なのに、なのにあの時の俺は...
「グッ....すまない、すまないウラロ...」
届くはずのないかすれ声の謝罪。あの時の自分を呪い殺したい気分に俺はかられた。とてもじゃないが人間の発する言葉と態度ではない、俺は俺という人間がどこまでクズなのかまだ知っていなかったんだな...
もう俺は諦めの境地にいた。これはウラロにした俺の罰だと思い、これからされることを受け入れていた。尻の境目を粘膜で濡れる突起物が擦れる感触があっても、俺は抵抗しない。抵抗する気力にも慣れない。
しかし、俺の目の前にロワンのアクセサリーが落ちていたのが目に飛び込んできた。さっきの抵抗で、投げ捨てていたのだろう。
俺は急に力が湧いた。抑えていた抵抗力を爆発させ、ロー・オークの手から抜け、アクセサリーへと手を伸ばした。
俺なんかどうなってもいい!だが、これだけは!ロワンの遺品だけは守らないと!!
油断していたロー・オークは力を緩めていたため、少しながら俺は拘束を抜けてアクセサリーに手を伸ばした。焦ったロー・オーク達は再び俺を拘束しようと掴みかかり、あと少しでアクセサリーに手が届く所で防がれる。
「クソ....じゃ、邪魔だぁ!離せぇぇぇ!!」
俺は力を振り絞るように叫び、まだ掴まれていない右手をバタバタ振りまくった。そのお陰で俺の右肘はロー・オークの一体の顔面に喰らわすことが出来た。
拘束力が少し緩み、俺は渾身の力で手を伸ばしてアクセサリーを掴む事が出来た。手に入れた嬉しさも束の間、俺に殴られて鼻血をダラダラと流していたロー・オークの一体が激怒を顔に表していた。
俺の血の気が引くのと同時に怒ったロー・オークは俺に向かって大きな拳を振り下ろした。死を覚悟した俺だったが、捕らえた性欲処理具が壊されるのを恐れたのか他のロー・オークが邪魔をする。
怒ったロー・オークの右拳は俺のすぐ真隣の地面にめり込み、ヒビが入る。
子供とはいえ想像以上の破壊力に俺が総毛立っていると、地面のヒビが更に酷くなり、大きな音共に俺は浮遊感を感じる。
な!?ここの下、空洞なのかよ!!
俺が押さえつけられていた地面の下はまさかの空洞。真っ暗な奈落に俺と四匹のロー・オークは落ちていく。