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ロワン

「....俺達は人を探してる。パーティーの元メンバーだ。ロワンって奴知らないか?背の小さい子供みたいな奴だ。」



「ロワン...ロワンねぇ〜.......」



 ヴィルバガは天井を見つめて顎を触りながら思い出そうとしている。受付員もあの慌てようなら、まともに取り合ってくれる可能性は少ない。これは大きなチャンスだと俺は感じた。



「.......あ、もしかしてあの子かな?一か月前くらいに見かけたんだが...年季の入った杖持ってて、不安そうにビクビクしてたな〜。隣には同じ背くらいのメガネかけた女の子もいたけど、違ったかい?」



 待ちに待ったような情報、街に入ってから間もなくして得られた情報に俺は笑を零し、俺の気持ちを共有するかのように笑みを浮かべるゴルド達と俺は顔を見合せた。



「そ、そうだ!そいつだ!ロワンは何処にいる!?というか、一か月前だろ?よく覚えているな。」



「俺は記憶力はかなりいい方なんでね。覚えてるぜ。

 新人冒険者って言えば、金の卵だろ?俺はそう言った連中をほっとけ無くてな。新人だと思って声をかけたんだぜ。Cランクのパーティーに入りたがってたから、俺も探すの手伝ったんだ。

 確かそのパーティーは...水蟹(ウォーターグラブ)って名だったっけか?」



「場所は!?そいつらは今どこにいる!?」



 興奮して必死に聞いてくる俺達に若干引きながら、ヴィルバガはギルドにある地図でそのパーティーの泊まっている宿を指さした。探したついでにそこへ案内したというので覚えているとの事だった。


 俺達はヴィルバガに軽くお礼をすると、猛ダッシュで教えてもらった所へ走っていく。それは焦りも含まれているが、俺達は笑顔で溢れていた。


 明るい未来が目の前まで来ている。あと少しで希望の象徴であり、愚かで惨めな操り人形が戻ってくると思うだけで力が漲る。足に力が入るのであった。


 待ってろよロワン!すぐにでもそのクソパーティーから引き離して俺達の元へ連れ戻してやる!あーだこーだ言われたとしても、俺が泣きべそのひとつでもかけば、あの馬鹿はコロコロ心境を変える。馬鹿で間抜けなお人好しだからな!プライドなんて捨ててやる!お前みたいな鴨さえ戻るんならな!!


 ロワンが手元に帰ってきていないにも関わらず、俺は戻ってきたロワンをこき使う事ばかり想像する。そして想像を膨らませれば膨らませる程、楽園のような楽しく楽な生活が見え、俺は天にも昇る気持ちだった。



 ギルドからは多少離れていたが、俺達が全力疾走をしたおかげですぐにでも宿へついた。王都にいた時とは変わってボロボロの宿。Cランクにはお似合いの宿だ。


 この宿には個室がなく、多人数で一部屋となっている。俺達は目当てのパーティーがいる部屋を見つけ出し、木の扉をノックした。


 すると少しして小柄で太っているオッサンが出てきた。古びた兜を被り、灰色の大きな口髭が特徴的。ドワーフみたいなオッサンだった。



「....どちら様ですかな?貴方達は。」



「ここにロワンがいるって聞いてきた。元パーティーメンバーの者で、アイツを連れ帰る為にな。居るんだろ?会わせてくれないか?」



 俺がそう言うと、オッサンは目を見開き動揺し、俺の足元を見てプルプル震えていた。どんな心境なのかサッパリだが、凡そロワンっていう戦力を失うのが怖いらしいな。

 そうだとしたらロワンの実力はバレてると見ていいが、すぐにでも力づくで追い出さない所を見ると、会話で強奪は可能らしい。こちらとしては好都合だ。



「頼むよ、今すぐにでも会いたいんだ。アイツに話さなくちゃならない事があるんだ。入ってもいいかい?」



 俺がそう聞くと、オッサンは目線を合わせることなく小刻みに震えながら部屋の中へ入るよう促した。オッサンの意味不明な反応にゴルド達と顔を見合せつつ、俺達は部屋の中に入った。


 部屋は予想通り。古びた木々で形成された部屋で三段ベットが二つ。部屋の中心に丸机が置かれ、目付きは気に食わないが野菜のように細い身体付きの男が一人に、薄いシャツ一枚でパンを齧っている紅色の髪の女が一人居た。


 女の方は身体付きもよく、暫く夜の行為をしていない俺に対していい刺激を与えてくれる。股間が疼き、大きな胸を見て程よく興奮した。


 そんな俺の興奮が薄ら伝わったのか、女の方は少し険しい顔をして齧っていたパンを皿に戻した。



「なんだいアンタら...ザブ、コイツらなんなんだい?」



「.......ロワン君の元パーティーの方々らしいんだ。ロワン君を探しにここへ...」



 ザブという名のオッサンが消えるような声で言うと、男の方も女の方も目を見開き、激しく動揺していた。男の方は声すら出ず、女は唖然としながらこちらを見る。



「アンタ....名前はなんて言うんだい?」



「俺の名はベグド。そしてこっちがゴルドにウラロ、レネだ。双赤龍(ダブルレッドドラゴン)ってパーティーでSランク。俺に至っては勇者候補だ。ロワンから聞いてたりしてないかな?」



 女は大物が大好きだからな。アピールしながら自己紹介をしてやった。なのに、女は俺を輝きの目で見るどころか瞳を暗くし、悔しそうに歯軋りをしていた。いや、悔しそうではなく、どこか後悔しているような反応。...意味が分からん。



「ロワンがここに居るとギルドの方で聞いてな。今、アイツは何処にいる?奥の部屋で寝てたりすんのかい?」



 俺が尋ねても女の方も男の方も何も言わず床を見つめるばかり、変な態度ばかりで状況が掴めずにいると、ザブは俺の目の前に来て悲しそうな表情を浮かべながら口を開いた。



「ここで....少しお待ち出来ますか?」



「ん?あ、あぁ。ロワンの為なら俺達はいつでも待つぜ。なぁ?」



 俺はゴルド達に促しながら答えると、ザブは酔いが回っている千鳥足のような足取りで奥の部屋へと消えていく。意味不明な反応の数々でゴルド達も困惑を表情に浮かび上がらせ、俺も同じく首を傾げていた。


 少しすると、奥の部屋からザブが戻ってきた。何かを包んだ紫色の布を持って、俺にゆっくりと手渡ししてくる。




「...どうぞ、納めてください。」



 奥の部屋からロワンが出てくると思いきや、変な物を渡してくる。俺は苛立ちを感じるが、ロワンと再会した時にコイツらに悪印象があると都合が悪い。俺は悪態をつきそうになるも我慢をし、その布を開けてみる。


 そこには、ボロボロの杖が真っ二つに折れている残骸と、血痕のある見覚えある衣類、そして赤い宝石のアクセサリー。


 俺の頭の中に何かが浮かんだが、それを見た時俺の頭の中は真っ白。咄嗟に呟いた。



「は?....何だこれ?」



 俺の問いにザブはすぐには答えない。言葉ではなく、ザブは今にも泣きそうな表情でこちらを見つめ、その場で頭を下げてきた。



「.........ロワン君は一週間前に








 ..........お亡くなりになりました。」

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