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第9話 後輩との再会と大家一家の事情

「あの、宇佐美さん。 この女性と知り合いですか?」


「前の会社にいた時の後輩ですよ。 ちやみに彼氏持ちですから」


「そ、そうなんですね」


「ええ。 それより大家のじいさんはお前の祖父だったのか……」


「正確には、『母方の』ですが」


 川崎が俺を先輩と呼んでいた事に戸惑いを隠せない高岡さんに、俺は説明する。

 前の会社の後輩で彼氏持ちだと聞いて、高岡さんは心なしか安堵していたような気がしたが……。

 しかし、ここの大家のじいさんは川崎の祖父だったとはなぁ。


「ここ最近、祖父がなかなか対応してくれないという話を母が視察した時にマンションの住民から聞いたらしく、何度かここの大家の部屋に訪れたんです」


「幸い、ここの予備の鍵を持っていたので、様子を見に行く事が出来たんですが……」


「部屋には誰も居なかったと?」


「はい。 父方の親族も様子を見に行った時も同様でして、警察から立ち入り禁止の池にいると報告を何度も聞きました。 それでも、祖父は手伝いや代行を拒みました」


 川崎とその母親が言うには、立ち入り禁止の池に何度も行っては、川崎達や親族に迷惑を掛けているにも関わらず、その大家のじいさんは手伝いや代行すら拒んだらしい。


「親族共々、父を施設に送ろうとしてました。 このままでは、住民に迷惑が掛かるので。 今回の高岡さんの入居も親族が処理していたんです」


「それが気にくわなかったのか、祖父はこの書類を捨てようとしていたんです。 それを偶然見つけた親族が何とか書類を守りきって、私達の所に持ってきたんですよ」


 うわぁ。

 そりゃあ大変だったろうな。

 そこまでする程に大家のじいさんは、精神的に異常をきたしてしまったという訳か。

 しかし、なんでじいさんは素直に親族の手伝いを認めなかったんだろうな。


「それで、彼氏は?」


「お父さんと一緒に祖父を施設に送る為に車を走らせてます。 下手して住民達に迷惑を掛けるわけにはいかないので、強引にいかせてもらいました。 只でさえ、このマンションの住民が出て行って後処理をしないといけないのに祖父は何もしようとしないので」


「そんな訳で暫くの間は私と娘の唯がこのマンションを管理します。 この先で分からない事があれば遠慮なく報告をお願いします」


「はい。 分かりました」


 川崎の母親から、これから暫くはこのマンションを管理するらしいので、何かがあった場合に安心できるだろうな。

 昨日でも高岡さんが大家の部屋に聞こうとしたらいなかったって言ってたし。

 そういや、下の部屋の住民が別の所に引っ越した際、何故かベランダのガラスがヒビが入っていたままだったんだよな。

 空き部屋を手直しするために業者に依頼するのも大家の仕事なのに、あのじいさんはしなかったんだろうな、きっと。


「では、高岡さんにまずゴミを捨てる場所の説明を……」


 川崎の母親が、高岡さんに控えの書類を手渡した後、ゴミを捨てる際の場所や曜日の説明に入った。

 その間、退屈そうにしていた奈々ちゃんと佐奈ちゃんの頭を撫でていた。


「そういえば、先輩。 その子達は?」


「今、説明を受けている高岡さんの娘だよ」


「そうなんですね。 で、先輩は今までどうしてたんです?」


「俺か? 俺はあの後はショックを受けたまま転職活動が上手く行かず、現在は掛け持ちでのコンビニ夜勤バイトで食いつないでる」


「まさか、先輩がそこまで……! くっ、あいつら……!」


「桧山と正幸が転職に成功したのが羨ましいよ。 川崎もあの後、辞めるまでに桧山と同じく何かされたか?」


「されましたね。 セクハラとパワハラを。 特に私は課長一家からスカート捲りされましたよ」


「そいつぁ、ひでぇな……」


 あいつら、川崎にもセクハラとかパワハラしてやがったか。

 しかもスカートを捲るとか、酷すぎるだろう……。

 とはいえ、転職に失敗した俺とは違い、桧山や正幸はきちんと別の会社でやりなおしてるし、川崎はこのマンションの管理を手伝うのだろう。


 俺は……、何がしたいんだろうな。


「宇佐美さん、説明おわりましたよ」


「あ、はい。 すみません、ボーっとして」


「「うさおじちゃん、げんきだしてー」」


「あらら、その子達、先輩に懐いてるんですね」


「ええ、あるきっかけで……」


 自分に自信を無くしかけていた所で、高岡さんが声を掛けて来た。

 ゴミ出しの説明が終わったようだ。

 ああ、ネガティブになるとボーっとする癖は治らないな。

 奈々ちゃん達にも心配かけてるし。


「そういえば、先輩は高岡さんの隣に住んでるんですよね」


「ああ、そうだけど」


「これからもお隣さんとして高岡さんのサポートをしてあげて下さいね。 一応、母が説明したのですが、プラゴミを出す場所とかは忘れやすいので」


「ああ、そうか……。 分かったよ」


 改めて、川崎からお隣さんとして高岡さんを支えてくれと言われた。

 昨日から住み始めたばかりだし、週2回程度のプラゴミとかは忘れやすいので、一緒に行ってあげる事も必要だろうな。


「それじゃあ、私達は大家の部屋にいますので、何かあったら伝えて下さいね」


「「おねえちゃん、またねー」」


「うん、またねー」


 説明も終わったようなので、俺と高岡さんは三階に向かう。

 その際に、奈々ちゃんと佐奈ちゃんは川崎にも挨拶をしていたな。

 可愛さに川崎の顔がニヤニヤしていたのを記憶しておくか。


 さて、お昼だが……、高岡さんの住む305号室で食べるのだろうか?



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