第83話 件の男との邂逅、そして……
「うおらぁぁぁ! 紗友里ー! クソガキどもー!!」
刑事である拓也の部下からの報告を聞いた後、拓也は俺と共に現場に向かう。
そこには、怒り狂った男が包丁を持った手を振り回しながら、叫んでいた。
「包丁持ちか。 しかもこれはヤバいな」
「俺が先に出る。 京也は後から来てくれ」
「ああ。 お前の部下は?」
「既にスタンバっている。 じゃあ、先に行くぜ」
その男は紗友里さんと奈々ちゃん達を探してるようだった。
奴にとって、八つ当たりの為のサンドバックに丁度いいのだろう。
しかも奴の両親を殺してまで、それを求めると言うのは異常としか言いようがない。
とはいえ、包丁を持っているので下手に動けば刺されてしまうので、先に拓也が動くことになった。
「そこまでだ。 近所迷惑だぞ、筧 裕也」
「て、てめぇは……! また俺の邪魔をすのか!!」
「当たり前だ。 両親の殺害と近所迷惑と器物破損と営業妨害など、キリが無いほどの罪を犯してるからな」
この筧 裕也という男は、紗友里さんとの離婚後、しばらくしてこんな犯罪を犯していたのだ。
かつて俺が働いていたコンビニの一つも奴にガラスや什器などが壊され、今は営業を停止している。
その他に、周囲に発狂して周辺住民に迷惑と恐怖を与えた上、奴の両親を殺している。
完全にスリーアウトって奴だな。
「今の今までいいようにされてきたが……。 お前はこれ以上にない罪を犯したんだ。 大人しくお縄に付きな!」
「で、さっき紗友里さんの名前を聞いたんだが、離婚したはずだよな? 確か、役所でも正式に受理されたとも聞いたな」
そこで拓也が俺にサインを送って来た。
出てきてもいいと言われたので、拓也のやや後ろ寄りまで近づき、筧という男にカマを掛けてみた。
「離婚なんぞ俺が認めん!紗友里とガキは必要なんだよ!」
「自分の八つ当たりのサンドバックとしてだろ?」
「ぐっ!」
そこに俺がすかさず筧にそう言った。
一瞬言葉が詰まった辺り、図星だな?
「う、五月蠅い! 職を失ったショックを貴様には分からないだろうが!」
「コンビニバイトなどで食いつないでいればいいだろう? お前はそれをしなかった。 こだわってなければ、次の職なんていくらでもあるだろう」
「そういや、お前はあの狂った思想に染まった会社を辞めてから一度転職に失敗したんだったか」
言い訳をする筧に、俺は次の職を探せばよかったんじゃないかという。
そこでまた言い淀む。
拓也も正幸から伝えられたのか、俺の経歴を知っていたか。
「そもそも、職を失った事をいつまでも引き摺って八つ当たりをしてるから、奥さんに見放されるんだかな」
「まだ幼い子供にも酷い扱いをしてたみたいだしな。 子供にとってはトラウマものだろう」
「だ、だまれぇぇぇぇ!!」
俺と拓也による発言に筧が発狂し、包丁を突き付けながら突撃する。
しかし、そこを予測していた拓也は、すぐさま対処した。
「ぐはっ!」
「犯人確保っと」
そのまま組み伏せて、手錠を掛ける拓也。
包丁はすでに手放していたようだ。
「東条さん!」
「おお、無事に捕まえたぜ。 手錠掛け直して連行してくれ」
「はいっ!」
その後、パトカーが数台来て、筧は容疑者として連行されていった。
俺に関しては拓也に話した内容でそのまま拓也が伝えてくれたようで、何もする必要はなかった。
拓也と数人の部下は、少しの間ここに残り、缶コーヒーを飲んだ。
「そうだ、京也。 お前はあの紗友里って人と結婚するんだったな? 管理人の女の子から聞いたぞ」
「ああ。 川崎から聞いたのか」
「そうさ。 おめでとう。 その人と幸せになれよ」
「もちろんさ」
コーヒーを飲みながら、拓也からも紗友里さんとの結婚を祝福して貰った。
その際のコーヒーの味は、何故か甘く感じた。
ブラックコーヒーなんだがな……。
その後、拓也たちを見送ってから、俺は305号室に向かう事にした。
紗友里さんと奈々ちゃん達に抱きつかれながら大丈夫だと伝えた。
その際に達也と朱里も居て、筧の行動に不快感を抱いたが、全てが終わったと聞いて安心したようだ。
こうして、波乱の事件は無事に解決したのだった。
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