第8話 お買い物と偶然の遭遇
「もうそろそろ昼ですね、高岡さん」
「あら、そうですね。 折角ですからお昼の為のお買い物に行きませんか? すぐそこのスーパーですが」
「ああ、あそこですね。 いいですよ。 佐奈ちゃんと奈々ちゃんも行く?」
「「いくー!」」
「お買い物の時とかは娘も連れていってます。 まだ三歳だからお留守番は危ないので」
「なるほど……」
高岡さんももうすぐ昼になる時間帯だと気付いたようだ。
同時に、彼女から一緒にお買い物に行かないかと誘われたので、一緒に行く事にした。
といっても、すぐ近くのあのスーパーへだが、奈々ちゃん達はまだ三歳なので、留守番は危ないようだ。
なので、奈々ちゃん達も一緒に連れて行くようだ。
「それじゃあ、行きましょうか」
「はい」
「「しゅっぱーつ!」」
準備はすぐに終わるので、四人で一緒に近くのスーパーに行く。
奈々ちゃんと佐奈ちゃんは、俺に手を繋いで欲しいとせがまれたので、手を繋いであげている。
「ふふ、佐奈も奈々も宇佐美さんに懐いてますね」
「そうですね。 こんなおっさんでも懐いてくれるのは、素直に嬉しいですよ」
「奈々も佐奈も宇佐美さんがいい人だって分かるんですよ。 でなければ、ここまで懐きませんしね」
確かに、怖かったり気持ち悪いおっさんだったら、逆に怖がられるはずだ。
なのに、ここまで懐いてくれるのは、俺がいい人だと分かっているのだろう。
「さ、着いた。 買い物を始めるか」
「はい」
そうしている内に、すぐにスーパーに着いた。
近くなので、ゆっくり歩いても時間は掛からないのだ。
俺と高岡さんはそのままスーパーに入っていく。
幼女達と手を繋いだままで。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「結構買い込みましたね」
「ええ、宇佐美さんの分も買いましたから。 一部払わせてしまいましたが」
「俺の分もと言ってたので、それくらいは払いますよ。 奈々ちゃん達のお菓子も買いましたしね」
「そうですね。 奈々も佐奈も喜んでますね」
「「うさおじちゃん、ありがとー♪」」
「ははは、どういたしまして」
一通り買い物を終えて、帰宅する。
ちなみに買い込んだのは、お茶などの飲み物とお昼と夕方のご飯の為の食材が中心だ。
そこに俺の分もどうやら含まれていたようだった。
なので、俺の分を高岡さんに返す形で、支払いを高岡さんに任せたのだ。
なお、荷物は俺の分も含めて高岡さんが持っている。
というのも、帰りも奈々ちゃんと佐奈ちゃんに手を繋がれたままなので、荷物が持てないのだ。
その幼女二人は、俺のお金でだがお菓子を買ってくれたのが嬉しいのか、終始笑顔だった。
可愛いよなぁ。
「本当に俺の分まで荷物を持たせてすみません」
「いえいえ、奈々たちの手を繋いでくださってるので。 これくらいは持ち慣れてますよ」
高岡さんに俺の分まで荷物を持たせている状況に申し訳なさそうに謝るが、俺が奈々ちゃん達の手を繋いでくれているので大丈夫だと言ってくれた。
今どき、こんな性格のいい女性なんて滅多に出会わないぞ。
「さて、着きますね」
「ええ、今日もお昼ご飯をご馳走しますよ」
「いいんですか?」
「ええ、明日からまた現状では夜勤でしょう? 活力を付けさせてあげたいんです」
「あはは、確かにそうですね。 じゃあ、お言葉に甘えて……」
今日も高岡さんがお昼ご飯を作ってくれるらしい。
朝の件といいい、本当に申し訳ないのだが、彼女の思いを汲んでここはお言葉に甘える事にした。
そんな感じで、マンションの入り口に着いた時だった。
「305号室の高岡さんですね?」
「あ、はい」
突如、女性二人が高岡さんを呼び止めた。
女性の手には、何かの書類を持っていたみたいだが……。
(あれ? 片方はもしや……?)
女性二人のうちの若い方の女性を見て、俺は見覚えがある感じだった。
ただ、先に高岡さんへの要件を聞いてみる事にした。
「祖父が本当にすみません。 高岡さんの方で保管する控えをお渡ししようと思って。 あと、ゴミの日と場所の説明を……」
どうやら、控えとして保管する用の書類を渡す事と、ゴミの日とゴミを出す場所の説明を行おうとしていた。
その途中で、若い方の女性が俺に目が合った瞬間、固まった。
ああ、その容姿……間違いない。
「ま、まさかあなたは……!?」
「川崎……か?」
「せ、先輩!? 宇佐美先輩!?」
そう。
前の会社の後輩であった眼鏡を掛けたセミロングの女性の川崎 唯だった。
祖父と言ったが、あの大家のじいさんは川崎の祖父だったのか……?
そんな事を考えたまま、かつての後輩に遭遇してしまう俺なのであった。
あ、高岡さんが固まったままだ。
後で説明しないと……。
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