第59話 保育参観④
「「「できたー♪」」」
「何とか完成しましたね」
「そうですね。 工作なんて久しぶりですし。 絵はいつも描いてるからいいんですが」
春日井君とその娘さんで奈々ちゃんと佐奈ちゃんのお友達である夏奈ちゃんを交えて、手作りの太鼓を頑張って作った。
俺も紗友里さんもこういった工作は久しぶりなので、なかなか上手くは作れなかったのだが、奈々ちゃん達のおかげで楽しめた。
なお、この手作り太鼓はラップの芯とゴム風船、ビーズ豆を使っている。
風船の口から3、4センチくらい切ったやつをまず片方をラップの芯の端にぴんと張るようにかぶせて輪ゴムで止めて、ビーズ豆を入れてから反対側も同じようにゴム風船を被せるものだ。
久しぶりの工作だった俺と紗友里さんにとっては、これがあまり上手く行かなかったので、完成した時は安堵したのだ。
「それじゃあ、作った太鼓を軽く叩いたり振ったりしてみましょうか」
保育士さんが出来上がった太鼓を叩いたり振ったりして見ようと言ってきたので、早速試してみよう。
「奈々と佐奈は、振るのね」
「「うん。 ジャラジャラいってるよ、ママー」」
「夏奈ちゃんは、割りばしで叩いてるのかな?」
「うん。 いいかんじだよー」
「ははは、上手く作れた甲斐があったってもんですよ」
奈々ちゃんと佐奈ちゃんは、作った太鼓を振っていた。
中にあるビーズ豆によってジャラジャラという音が鳴っているらしい。
マラカス代わりかな?
一方で、夏奈ちゃんは割りばしで軽く叩いていた。
音的にいい感じらしい。
それを聞いた春日井君も安堵していた。
「春日井君も工作は苦手なのか?」
「そうですね。 小学と中学の成績は……悪かったですし」
春日井君の小学時代と中学時代の工作は芳しくなかったようだ。
なので、夏奈ちゃんからの高評価に安堵したのだろうな。
彼の奥さんはどうなんだろうな。
「おおー、そっちはい感じだねぇ」
「あ、冬」
「冬さん、こんにちは」
そんな事を考えていたら、声が聞こえて来たので振り返ると、幼い男の子を抱っこした女性がこっちに来ていたのだ。
紗友里さんよりも小柄の彼女が、春日井君の奥さんで紗友里さんのママ友なんだろうか?
二人とも、冬という名前で呼んでたし。
「ママー、じゅんくーん」
「ねぇねー、ぱぁぱー」
夏奈ちゃんも気付き、その奥さんに手を振る。
奥さんに抱っこされてる男の子も夏奈ちゃんに手を振っているようだ。
「あなたが、紗友里さんや夫のゆーくんが言っていた宇佐美 京也さんですね?」
「あ、はい」
「ボク……、ゲフンゲフン、私は春日井 冬です。 で、この子は息子で淳です」
「改めまして、宇佐美 京也です。 今は、奈々ちゃんと佐奈ちゃんの父親代わりをしています。 よろしくお願いします」
そして、俺に向いて自己紹介を始めた。
彼女も俺の事は紗友里さんや春日井君から聞いているようだ。
だが、一瞬だが『ボク』って聞こえたんだが?
「今、『ボク』って言わなかったか?」
「ああ、出会った当初はボクっ娘でしたからね、冬は。 あと、彼女が僕よりひとつ年上なんですよ」
それでか。
いつ出会ったのかは聞かないでおくが、当初は彼女は『ボクっ娘』だったわけか。
だから、昔みたいな感覚で自分の事を『ボク』と言ってしまうのだろう。
さらに、冬さんの方が春日井君より一つ年上らしい。
なお、冬さんが春日井君の事を『ゆーくん』と呼ぶのは、春日井君の下の名前の優真だかららしい。
「おじちゃー、おじちゃー」
「あら、淳ったらおじちゃんが気になるの?」
「じゅんくん、おじちゃんはいいひとだよー」
「うさパパ、にんきだねー」
「そうだねー」
抱っこされてる淳くんが、俺に向けて手を伸ばしてきた。
俺とも触れ合いたいようだが、大丈夫だろうか?
夏奈ちゃんは、いいひとだと言ってくれてるがね。
奈々ちゃんと佐奈ちゃんもニヤニヤしながら見るんじゃありません!
「では、二歳児のクラスとも合流したようなので、最後にお歌を歌いますねー」
保育士さんから、参観の締めくくりとして幼児が歌う歌をみんなで歌った。
奈々ちゃんと佐奈ちゃん、夏奈ちゃんが俺や紗友里さん、春日井君の周りでわちゃわちゃしながらお歌を歌っていたし、淳くんは冬さんに抱っこされたまま、俺の手を握っていた。
幼い子は男女問わず可愛いなぁ。
そう思いながら、みんなで歌を歌ったのだ。
こうして、紗友里さんと一緒に参加した保育参観も無事に乗り切ったのだった。
よろしければ、広告の下の評価(【☆☆☆☆☆】のところ)に星を付けるか、ブックマークをお願いします。
作者のモチベーションの維持に繋がります。




