第58話 保育参観③
「あれ、京也さん?」
「あ、君は確かIT関連部門の……」
「はい。 春日井です」
さて、次は工作のようだが何を作るのだろうかと考えていたら、不意に声を掛けられた。
反応すると、そこには達也の会社でIT関連部門で働いている 春日井という若き社員だった。
春日井君がここに来ていたのには驚いたが、彼がここ『あいの山第三保育園』に来ているという事は……?
「君がここにいるって事は……?」
「はい。 妻と一緒に保育参観に来ました。 僕の場合は有休を使ってですが、妻は二歳児の息子を見てますので」
「一つ違いの姉弟なのか」
「そうですね。 京也さんについては社長から聞いてますし、詳しくは聞かないでおきますよ」
「そうしてくれると助かる。 この子たちは懐いてくれてるし、保育士さんも理解してくれてるしな」
春日井君も有給休暇を使って、奥さんと一緒に保育参観に来たみたいだ。
どうやら、春日井君の子供は三歳児の女の子と二歳児の男の子の姉弟のようだ。
奥さんも来ているようだが、その人が二歳児の方を見ているのだろう。
そして、春日井君自身も達也から俺の事情を聞いているようなので、深くは聞かないでくれている。
それに関しては正直助かるな。
一応、保育士さんも理解はしてくれているんだけど。
「パパー」
「あ、夏奈。 こっちだよー」
「あー、なつなちゃん」
「なっちゃんだー」
「ななちゃん、さなちゃん!」
春日井君とそんな話をしていると、彼の娘の夏奈ちゃんがお父さんを呼んでいた。
春日井君がこっちに手招きすると、奈々ちゃんと佐奈ちゃんもはしゃいでいた。
友達なのかな?
「奈々ちゃん達は、夏奈ちゃんと仲がいいのですか?」
「ええ。 よく遊び相手になってくれてますから。 奥さんとも良く話していますし」
なるほどな。
紗友里さん曰く、よく二人の娘の遊び相手になってくれてるのがこの夏奈ちゃんだという事か。
夏奈ちゃんのお母さんとも仲がいいようだ。
紗友里さんにママ友がいるというのは、達也と朱里も安心だろうな。
「あれー、おじちゃん、パパのしりあい?」
そんな中で、夏奈ちゃんが俺の袖をクイクイと引っ張りながら俺に聞いて来た。
いかん、仕草が可愛すぎる……!
ともかく、俺は正直に答えようと思う。
「そうだよ。 パパが働いている場所での仲間だよ」
「そうなんだー。 なつなだよー。 よろしくねー」
可愛く自分の名前を名乗った夏奈ちゃんも人見知りしない性格だなぁ。
積極的に俺にも話しかけてくるし、可愛いし。
しかし、他人の子にも懐かれるのは、いい気分なのかも知れない。
「あ、工作の内容が出たみたいですね」
「あー、手作り太鼓か。 風船のゴムが配られてるな」
どうやら、春日井君が内容を聞いていたようで、それを教えてくれた。
手作りで太鼓を作るみたいだ。
保育士さんから風船のゴムも配られている。
「ちょっと難しそうだし、みんなで作りましょうか」
「そうですね。 春日井君もいいかな?」
「構いませんよ。 こうして一緒に作る方が楽しいですし」
「奈々ちゃんと佐奈ちゃん、夏奈ちゃんもいいかな?」
「「「いいよー」」」
少し難しそうなので、春日井君親子も巻き込んで、一緒に作ることにしようと紗友里さんが提案する。
春日井君もその娘の夏奈ちゃんもいいと言ってくれたし、奈々ちゃんと佐奈ちゃんも喜んでいる。
「作り方も配りました。 それを参考に作りましょう。 分からなかったら先生に聞いてねー」
「「「はーい!」」」
保育士さんの言葉に、三歳児のみんなが元気よく返事をする。
本当に元気いっぱいだよなぁ……。
そう思いながら、配られた作り方を書かれた紙を手に、手作りの太鼓の作成に着手するのだった。
次回は、明日がなろうのサイト自体が長時間メンテに入る事で、時間が合わないために
明後日の2月5日に更新します。
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