第30話 年が明けて③
「ここか……」
「確かにあまり参拝客は来ていませんね」
「私が周辺を散歩した際に見つけたんです。 ご近所さん曰く、この辺りの住民の為の神社らしくて」
川崎や紗友里さん母娘と一緒にあまり参拝客が来ていない神社にやって来た。
マンションからは徒歩で5分の近場だった。
ちなみに川崎の彼氏の聡くんも一緒だ。
「ここなら安心して参拝出来るな。 奈々ちゃんと佐奈ちゃんがはぐれずに済む」
「そうですね。 元旦の初詣は、混みやすいから下手したら……」
やはり、紗友里さんも初詣に行くのは躊躇っていたみたいだ。
理由としては、まだ幼い奈々ちゃんと佐奈ちゃんだろう。
人混みに紛れて幼女を誘拐しようとする輩だっていないとも限らないしな。
その点では、ここならそんな心配はないだろう。
何せ、この小さな規模なら外からの参拝客はスルーしやすいからな。
それでも、お賽銭が出来たりおみくじも引けるから、暫くはここで参拝しようか。
「さ、行きましょうか。 早くお参りを済ませておせちを食べないと」
「早速おせちなのかい?」
「こいつは色気より食い気だからな」
「うあー! 二人とも意地悪だー!」
川崎の奴……。
まだ参拝が終わってないのに、早速おせち料理の事を考えてやがる。
聡くんも呆れてるじゃないか。
「まあまあ。 それなら早いところ参拝を終わらせましょう」
「あ、そうですね。 奈々ちゃん、佐奈ちゃん、まずはここで清めるよ。 おてて出してくれるかな?」
「「うん」」
神社に入ってすぐにある手水舎で、備え付けの柄杓を使って手をすすぐ。
その際に届かない奈々ちゃんと佐奈ちゃんの分も俺がついでにやっておこうと思ったのだ。
「ちゅめたい」
「冬だからね。 でも、お参りするためには必要だからね」
「うん」
流石にこの冬の時期は寒さも相まって水が冷たい。
それでもお参りをするために必要だと言い聞かせておく。
「じゃあ、お参りしましょうか」
全員が手水舎での清めが終わったので、すぐにお賽銭の場所に向かう。
そこで投げるお金は15円。
意味的には『十分ご縁があるように』というジンクスか何からしいのだが、俺はそこまでは知らない。
お賽銭を投げてお祈りをした後で、おみくじを引くことにした。
「先輩はどうですか?」
「中吉だな。 川崎は?」
「小吉ですよ。 まずまずですね」
「僕も同じ小吉ですね。 凶でないだけマシですかね」
まず、俺と川崎と聡君がおみくじを引いてみたが、俺は中吉だったが、川崎と聡君は小吉だったようだ。
今年の俺の運勢はまずますと言ったところか。
いや、去年からしたらいい方向には向かってるかな。
「紗友里さんは?」
「大吉でした」
「おおっ、すごいですね!」
「多分、京也さんに出会ったからでしょう」
「おやおや、ここで大胆に言いますかぁ?」
「川崎は黙っとれ!!」
一方で、紗友里さんは大吉だったようだ。
彼女は俺と出会ったからだと平気で言ってのけたため、流石に顔が熱くなった。
傍らで川崎がからかってきたので、黙らせたのは言うまでもないだろう。
聡君も苦笑してたし……。
「それじゃあ、先輩。 私達は先に帰りますね」
「後はそちらでごゆっくり」
そうこうしている内に川崎たちは軽く挨拶をしてからさっさと帰って行ったようだ。
残った俺と紗友里さんも奈々ちゃんと佐奈ちゃんの手を繋ぎながらゆっくり神社を出る。
「さて、初詣の参拝も終わったし、帰ってお昼でも食べましょうか」
「そうですね。 川崎たちもさっさと帰ったみたいですし」
「もうすぐ兄からお節料理が届くので、それを食べましょうか」
「達也から……。 という事は朱里も?」
「ええ。 京也さんも交えてみんなで食べましょう」
「分かりました。 その後で奈々ちゃん達と一緒に昼寝しますよ」
「構いません。 昨日の夜勤からまだ寝ていないでしょうし。 それじゃあ、奈々、佐奈、帰りましょう」
「「はーい♪」」
どうやら昼は達也と朱里がお節料理を持って来るみたいなので、みんなで食べる事になった。
達也が来るという事は、当然朱里も来るだろう。
あいつら、奈々ちゃんと佐奈ちゃんを可愛がってるからなぁ。
それでも、あいつがどんなお節料理を持ってくるか、楽しみだな。
そう思いながら、俺は奈々ちゃんの手を繋ぎながら紗友里さん母娘が入居している305号室へ向かった。
なお、佐奈ちゃんは紗友里さんと手を繋いでいた事も言っておこう。
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