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第3話 隣の女性からお礼をされました

「この部屋は、ここがブレーカーになりますね。 ここを全てONにして……」


 高岡さん母娘が引っ越したばかりの305号室に来た俺は、当時の部屋選びの際の記憶を頼りにブレーカーの位置を割り出し、ついでに全てをONにしておいた。

 このマンションの各階の四つの部屋は玄関のドアの上部にブレーカーがあるのだが、角部屋的位置の5番目の部屋には何故か玄関のドアの上にはなく、シューズインクローゼットという靴用のクローゼットの中にあるのだ。

 これでは分かりづらいので、俺は304号室を選んだのを覚えている。


「ありがとうございます。 これで電気が使えます」


「「おじちゃん、ありがとー」」


 高岡さん母娘にお礼を言われた。

 本来なら大家とか管理会社に聞いてみるのが一番なんだが、その大家のじいさんは肝心なタイミングで出かけている為に不在だったのだ。

 かといって、他の部屋の人には挨拶できなかったので頼れるのが俺しかいなかったのだろう。

 部屋選びの際のブレーカーの位置を覚えてて良かったよ、本当に。


「あの、宇佐美さん。 せっかくですし、ご迷惑を掛けたお詫びに、お昼ご飯を作りますよ」


「え、いや、流石にそれは……」


 さて、帰ろうかと思ったら高岡さんからお昼ご飯をと誘われた。

 流石に申し訳ないので断ろうと思ったら……。


「おじちゃん、いっしょにたべよー」


「たべよー」


「え、え!?」


 幼い女の子二人が俺の足にしがみついて上目遣いでそう言ってきたのだ。

 やめてくれ、幼女の上目遣いは冴えない俺にはクリティカルだ。


「あ、こら! 奈々(なな)佐奈(さな)、わがまま言っちゃダメ」


「「えー!?」」


 この幼い子たちは奈々ちゃんと佐奈ちゃんというのか。

 双子の姉妹なのか、一つ違いの姉妹なのかは分からないが、姉妹なのは間違いないだろう。

 その子たちが俺に一緒に食べようと言ってきたので、高岡さんが叱っていたのだ。

 流石に幼い娘さんに誘われたら断れないよなぁ。


「じゃあ、一緒に食べます。 今日は仕事は休みなので」


「「やったー♪」」


「それじゃあ、作ってきますので待っててくださいね」


 そう言いながら、高岡さんはキッチンに向かった。


「おじちゃん、えほんよんでー」


「よんでー」


「あはは、おじちゃんは上手く読めないけど、いいかな?」


「「いいよー」」


 ちょっとした事で、瞬く間に奈々ちゃんと佐奈ちゃんに懐かれたみたいだ。

 高岡さんが料理を作っている間に、二人の部屋になる予定の場所まで移動して一緒に絵本を読んだ。

 今まで子供と戯れた事なんてなかったので、自信がなかったが、幼い二人は喜んでくれたようだ。


(しかも、膝上確保か……。 これは逃げられなくなったか。 ま、今日は仕事が休みだから構わないけど)


 そう。

 絵本を読んでいる間、奈々ちゃんと佐奈ちゃんは俺の膝の上に座って絵本を読んでいたのだ。

 本来はさっさと帰ろうとしたが、お詫びとして食事をごちそうしてもらうだけでなく、幼い姉妹に懐かれたのだ。


 こんな冴えないおっさんのどこがいいのかは分からないが、多分第三者からしか見えないものがあるのだろうな。

 後輩の桧山やもう一人の後輩の女性も俺に対して、自分の思ってる以上に高く評価していたしな。


「お昼ご飯が出来ましたよ」


「あ、はい。 それじゃあ行こうか」


「「はーい」」


 そんな事を考えたら、高岡さんから昼ご飯が出来たと言ってきたので、奈々ちゃんたちともう一つの部屋に移動する。

 高岡さんが作ったメニューは肉じゃがと野菜サラダ、そしてチャーハンだ。

 カップ麺生活の俺からしたら、これでも十分なご馳走なのだ。


「引っ越したばかりでなので質素ですが、お召し上がりくださいね」


「はい。 では、いただきます」


「「いただきまーす」」


 確かに周りには衣服が入った段ボールなどが置いたままだ。

 机やテレビなどの家具や家電は、引っ越し業者が置いてくれたようだが。

 とにかく折角作ってくれたので、いただくとしよう。

 隣で奈々ちゃんと佐奈ちゃんの元気いっぱい挨拶したし、教育はしっかりしているみたいだしね。


 そんな感じて、俺は高岡さんが作った料理に舌鼓を打った。

 こういったものを食べるのは何年ぶりだろうなぁ……。



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