第29話 年が明けて②
「ふぅ、ごちそうさまでした」
「「ごちそうさまー」」
朝の年明けうどんを食べて腹を満たした俺。
紗友里さんが食器を洗っている間は、奈々ちゃんと佐奈ちゃんとお絵かきをした。
二人のお絵かきボードで書かれた俺の似顔絵は、流石に三歳児らしいといえばらしい出来だが、それでも描いてくれるのが嬉しいのだ。
「「うさパパー、どうかなー?」」
「ああ、上手く描けてるぞー」
「「えへへー♪」」
「あらあら、二人とも京也パパの似顔絵を描いていたのね」
奈々ちゃんと佐奈ちゃんの頭を撫でている所で紗友里さんが食器を洗い終えたようだ。
俺の似顔絵を描いているのも分かったみたいだ。
「消化した後で、一緒に初詣に行きませんか?」
「初詣……ですか。 元旦だと参拝客で一杯のはず……」
「今の大家さんが教えてくれたのですが、ここから数分の神社での参拝がおすすめだとか。 参拝客は有名な神社や寺にしか参拝しないようなので」
「なるほど……」
「もうすぐしたらこっちに来るみたいなので、案内がてら一緒にという事で」
「ああ、それならいいでしょう」
そうか、川崎が見つけた近場の神社か。
確かに参拝客は、有名は神社や寺あたりは人が多いように感じるが、マイナーな場所はあまり目にしなさそうだしな。
それなら、奈々ちゃんと佐奈ちゃんがはぐれるなどの辛い思いをしないで済むはずだ。
「そうだ。 奈々ちゃんと佐奈ちゃんにこれを渡さないとな」
「「あー、これはー!!」」
「あらあら、お年玉ですか?」
「ええ。 せっかくこうして二人にも出会ったので」
「「ママー、あけてー!」」
川崎たちが来るのを待つ間、俺は奈々ちゃんと佐奈ちゃんに用意したお年玉を渡す。
二人はすぐに紗友里さんに開けてもらうようにお願いしていた。
だが、見たところ嬉しそうだ。
「あらあら、二千円ずつ入ってるわね。 よかったわね、二人とも」
「「やったー♪ うさパパ、ありがとー♪」」
「どういたしまして」
お年玉の中身を教えてもらい、嬉しそうに俺に抱きつく奈々ちゃん達。
その行動自体が可愛らしくて、にやけてしまいそうだ。
こんな表情は川崎には見せられない。
からかわれるのは確実だからな。
「本当にありがとうございます。 前の夫は娘にお年玉すらあげなかったので……」
「八つ当たりも酷いですが、それも酷いですね」
どうも奈々ちゃんと佐奈ちゃんは実の父親からはお年玉をくれなかったらしい。
まぁ、その分は達也辺りから貰ってるはずなので、ショックは少ないだろうが、倒産による失職の後に職探ししない時点でお察しか。
そんな事を考えていたら、インターホンが鳴ったようで紗友里さんが対応した。
「失礼します。 川崎ですー」
「あ、おねえちゃんだー」
「あけおめー」
「奈々ちゃん、佐奈ちゃん、あけおめですよー」
川崎が予告通りに来たようで、一旦中に入れさせた。
奈々ちゃんと佐奈ちゃんにもあいさつをしていた。
「あ、先輩も」
「ああ。 これから初詣に行くんだろ?」
「そうです。 近所しか知らない神社に。 あ、奈々ちゃんと佐奈ちゃんにお年玉」
「「わー、おねえちゃんありがとー」」
川崎からもお年玉を貰った奈々ちゃんと佐奈ちゃん。
それを紗友里さんに渡して預かってもらうみたいだ。
「ちなみに先輩もお年玉渡しました?」
「ああ、さっきな。 あの喜びようは、前の夫がお年玉をくれなかった反動みたいだな」
「それも紗友里さんから聞きました。 酷い人もいたんですね」
「代わりに彼女の兄や姉から貰ってるし、相殺されてるとは思うが」
「あー、確か先輩の幼馴染で……」
とまぁ、川崎とそんな話をしていると、三人の準備が終わったようだ。
「お待たせしました。 それじゃあ、案内おねがいしますね」
「ええ、先輩も行きましょうか」
「ああ、行こう。 奈々ちゃん、佐奈ちゃん、手を繋ぐよ」
「「はーい」」
こうして、紗友里さん母娘と俺と川崎で、初詣の場所として近くにあるマイナーな神社に向かう事になった。
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