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エピローグ

 その日、夜にもかかわらず街はお祭り騒ぎになった。革命成功の報は瞬く間に街中に広がったのである。圧政から解放され、且つ、賢王として期待されていたヨシュアが生存しており、帰還したともなれば民からすれば嘘のような嬉しい知らせであった。

 翌日、正式に王がヨシュアになる事が発表される。それによって完全にアルマルの治安は安定の方向に向かっていくことが約束された。身分の差や、カルカロフに飼われていたような騎士、貴族もいなくなり、街の復興も開始される。

数日後には廃墟状態になっていた南区、西区にも人が集まり、悪事ばかり働いていたならず者達も解散した。街はカルカロフやヨシュアの父が治めていた頃のように平和を取り戻しつつあった。



「うーん、気が抜けるわ」

 リリーナは大きく伸びながら欠伸をした。

「こーら、食事中に行儀が悪いわよ。せめて女の子らしく欠伸しなさい」

 ミストが横から注意を入れるが、リリーナは気の抜けた返事をするのみであった。

「しかしま、平和になったんだしこれくらいの休日は」

 アナベルがいいつつ、パンをかじる。

「忘れてない? カルカロフとナオの言葉」

 ウィノアが言うと、リリーナとアナベルは、はて、というように首をひねった。

「……」

 エリオが情けない、と言うように目をつむる。ヴェナスも苦笑を浮かべていた。

「ああ、結局あいつらってどういう関係だったんだろ」

「ああ!」

 リリーナの言葉に納得したようにポン、と手を打つアナベル。ソレを見てウィノアが切れた。

「そこじゃない!」

 びくぅっ、とする馬鹿二人。

「まあ、確かにあの言葉は気になるな」

 言いながら、スープを穏やかに飲む恭介。その様子を見てウィノアはため息をついた。

「ねえ、恭介。あなたもこの世界の事気にしてる場合じゃないでしょ?」

「ん? まあ、そうなんだけどな」

 全くもってマイペースな人だなあ、とウィノアは思う。普通だったら関係のない世界のために危険に飛び込むようなことはしたくはないと思うが。

「カルカロフ様の言葉によると、結構な世界危機のように感じましたが」

 ヴェナスが言った。その横でエリオも頷く。

「ナオの言葉によれば、その関連でニルヴァースが焦土になっているんだ。避けられる問題ではないだろう」

「本当かはわからないわよね」

 会話内容がわかっているのか、わかってないのかリリーナが言った。

「あの子に嘘をつく技量があるとは思わないわ」

 ウィノアが言った。

「確かに」

 その横で恭介も頷く。

「何にせよ、平和が一番よ。あの子たちみたいな子が出ない世界になればいいのにね」

 ミストが言う。

「そうね」

 リリーナが通路の階段を見上げながら言った。子供達はまだ寝ている。

 この孤児院に住む三人の子供は、最初からいたわけではもちろんない。様々な理由でここに行きついた、ある種、幸運な子供達。多くはその命はどこかで果ててしまう。

 だが、加えるならリリーナ、アナベル、ウィノアも正しくその例に漏れない。だからこそ、子供達の痛みは理解していた。

「まあ、謎はいっぱいですが。一番気になるのは、私としてはカルカロフ様の用いてた魔術ですね。あれは理でも、ウィノアさんの使う光でもなかった」

 ヴェナスが言うと、確かに、とウィノアが相槌を打つ。

「じゃあ、影?」

 リリーナが首をかしげながら言った。しかし、ヴェナスは首を振る。

「あれは影ではない気がします。もっと別ベクトルな力に感じました」

「……そこまでにしておけ。そろそろ仕事だ、仕事」

 エリオが言った。孤児院も寄付だけで存在しているわけではない。ミストとリリーナは孤児院にいるが、ヴェナスは魔術の指導をしているし、エリオも剣術の指導をしているし、ウィノアとアナベルは食料を調達や傭兵をしていた。

「……俺仕事してねーな」

 恭介がぼやく。

「……とはいえ仕方ないところもあるよね」

 リリーナが言う。

「恭介はやっぱり何かしたい?」

 ミストが恭介に聞くと、恭介は頷いた。

「やー、やっぱり居候ですし。何かはしないと」

「……えっと、だったら私についてきてもいいわよ? ほら、恭介色々頼りになるし」

「お」

 ウィノアの言葉に、リリーナがテンション高めの声をだす。

「……お前、俺がついていこうか、って言った時に了承したことないくせに」

「仕方ないでしょ、恭介はアンタと違ってと・く・べ・つ、なんだから~」

 アナベルが言った途端、リリーナがそんな事を言った。

「へ?」

 一体何を言われたのかと恭介が茫然とするその前で、リリーナとアナベルは思いっきりウィノアに頭を殴られたのであった。

「……もうっ!」

 そして、そのまま孤児院を出ていく。もう街には人の声があふれ、既に仕事に出る頃だった。

「あー、ありゃ重症だね」

「ふふ、そうね。重症ね」

 リリーナの言葉に、ミストもクスクス、と笑う。

「なあ、恭介」 

 アナベルが恭介に、玄関口を指差して言った。

「何かしたいんだろ? ついて行かなくていいのか?」

「あ」

 アナベルのその言葉に、恭介は慌てて椅子から立ち、壁に立てかけていた自らの剣を取った。

「いってらっしゃーい」

 リリーナが一際大声で言った。

「いってきまーす!」

 扉を閉めながら恭介も返事する。その背中を見てリリーナとミストはにやにやと笑った


 これにていったん幕を引かせていただきます。

予定では次は外伝、その次に二巻という形にします。

で、なぜ幕引き……つまり完結させるかというと、僕はあくまでライトノベルの形式で書くつもりです。

 数巻あるライトノベルのように、投稿する小説も一巻一巻を区切って完結させようと思います。

評価仕様からすると、作者の僕にはデメリットがほとんどですが、でもこだわりですから。

 できれば挿絵も入れていきたいんですが、色々そうはいかないため、各巻冒頭の表紙絵で我慢してください。

 次回投稿予定の外伝は、『白銀王女-Story of the Nao-』。つまるとこ、ナオのお話で、恭介が異世界に来るより少し前から、現在までの話になります。

 騎士団、カルカロフ、ナオの関係はメインストーリーでははっきりしません。あくまで舞台裏ですから。

 その舞台裏を描こうと思います。

 あと、予告として、あとで「みてみん」の方に外伝表紙のラフ画を投稿しておきます。

(みてみん、にて「FALKEN」で検索、または一章表紙をクリック)

 外伝を投稿するころには年明けしてるでしょうが、またよろしくお願いします。

 それでは、また。また応援願います。


PS:総文字数は故意に調整しました。気づいた人はすごい。

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