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第一章「迷子? 遭難? 神隠し!?」

挿絵(By みてみん)


※視点の描き方は少し特殊です。

若干場面展開が早く感じられるかもしれません。

気が付いたら、知らない場所にいた。それも、迷子、なんて言葉で表せるほど人道的なものではない。俺の出身地は日本で、高層ビルだなんだでごちゃごちゃの都会のマンションに住んでいるはずだ。それが、どうしたことだろう。気づけば野原で寝ころんでいた。ちょっと目の前には舗装されていない砂利道。その更に前には目を疑うほどに澄んだ河川。さらにさらに奥には、鬱蒼と茂る森があった。少なくとも、こんな場所は俺の住んでいる街にはない。いや、もしかすると端っこのほうに残っていたのかも……。いや、だとしても、なんでここに俺はいるんだろうか?

「……今、何時なんだ?」

 俺は高校生だ。即ち、学生であって、学校に通うのが仕事である。俺の記憶が正しければ――。あれ、何曜日だっけ。そもそも何月何日だっけ。とりあえず寝たような気がするんだけど――。そこで、ふと思い当ってポケットに手を入れた。

「……携帯、――部屋か」

 ズボンのポケットには何も入っていなかった。困った。これはヤバイ。

「ああ、そうか。これ夢なんじゃないか?」

 現実的に考えろ。部屋で寝たような気がするのに起きたらここ、なんてありえない。こりゃ夢だ。何せ、寝巻でもなけりゃ、学生服でもない。私服を着ているのだ。ここは頬をつねってみよう。

「――ッ……ってぇぇ」

 普通に痛かった。そのまま野原の芝生にあお向けに倒れこむ。雲がゆったりと、綺麗な青空を泳いでいた。

「――!?」

 目を疑う光景が目に入った。太陽より少し離れた位置に月が見える。その月が、かなりデカイ。俺の記憶している月より三倍くらい大きい。それも、サファイアのように青い。

 空一つとってもそうだ。なんだろう、よく見ないとわからないが、見慣れた空より遥かに澄んでいる。まさに、抜けるような青空、というやつだ。

「……」

 えっと、なんだろう。ここ、どこ?

 ――そう。これは迷子なんてレベルじゃない。遭難なんて言葉じゃ表せない。いわゆる、神隠し、というやつに違いない……。

 日本語は不思議だ。常人の理解できない現象には『神』をつける。この現象はまさにそれだ。

「――どうしよう」

 迷子になったことはある。遭難したことはない。ましてや神隠しは初体験だ。

「そうだ、もう一度寝たらどうにかなるかも」

 寝たらここに来ていたんだ、ならばもう一度寝ればいい。

 これが現実だったら、という思考から逃げるように、俺は意識を闇に沈めていった。

 


 気づいたら真っ暗な場所にいた。体には妙な浮遊感があって、少し気持ち悪い。

「また、神隠しかよ」

 誰にでもなく、突っ込みを入れる。もしかしたら俺は意識不明か何かで、頭の中をさまよっているのかもしれない、そんな事さえ思った。

 ……ふと、下を見ると(下かどうかはわからないが、とりあえず地面のようなものが見えた)誰かが必死に走っていた。何かを……いや、誰かを探しているのだろうか。時折、口に手を当て、何かを叫んでいるようにも見える。

 見ていて、こっちが泣きそうになるくらいソイツは必死だった。建物という建物の間をすり抜け、細い路地を突き進む。

 誰を探して――

 ザーーーー、と、ノイズが走った。まるで何世代前かのブラウンテレビの電源を落としたその瞬間のように、ブン、と、真っ暗な世界が、更に深い闇に覆われる。

 “――助けて”

 声が聞こえた。この闇じゃない、もっと、もっと上から。

 “誰か、助けて!”

 声のする方向に向かって、走る。少し、明るくなってきた。

 “我が契約主よ。我を手に取れ”

 先ほどの声とは違う、異質な声。しかし、どこか懐かしい響きのする声。

 “早く起きろ、いつまで寝ているつもりだ!”

 

 瞬間、飛び起きた。

 

「助けてぇっ!」

 幼い女の子の声が確かに聞こえた。日は傾き、赤い光が降り注いでいる。本能的に声のする方向に走った。少し隆起した丘を登りきると、二人の男が、無理やり一人の少女を馬車に押し込むのが見えた。男の腰には、刃物がぶら下げてある。

 ――自分は丸腰だぞ。 頭に言葉がよぎる。

「――んなこと、考えている場合か畜生!」

 目の前でこんなことが起きている以上、傍観することはできない。たとえ、自分が丸腰であったとしてもだ。

 “我を手に取れ!”

 頭に声が響く。胸の十字架のネックレスが、青い光を放って、輝いた。

 一人の男が、俺に気づいて指をさす。腰の刃物を抜き取った。俺は、がむしゃらにネックレスをつかみとった。チェーンを外さなかったため、サビていた部分からチェーンが切れる。青い光が更にその輝きを増した。

「魔術師か? ……あいつ、なんだ!?」

 男が慌てるように刃物を構える。

 十字架が、その形を変えていくのが右手の感触で分かった。

 “我はお前の心の中にある。我の存在に意識を集中しろ”

 自分の体の中に、何かを感じた。十字架の光に合わせて、その存在がどんどん大きくなっていくのを感じる。

 脳裏に、錆びた剣が浮かんだ。途端、目の前が白く、もやがかかったようになる。

「そ、そこで止まれ! それ以上近づくとこのガキの首が飛ぶぞっ!」

 男の野太い声が遠く聞こえる。目の前がユラユラと揺れだした。

 体が、勝手に動く。いつの間にか、右手に握った十字架は、長剣へとその姿を変えていた。美しい翼の装飾がほどこされた、見たこともない剣。

「言っていることがわかんねぇのか! そ、その剣をしまえ!」

「――たすけて……」

 だんだんと、目の前が真っ白になっていく。意識が、遠のいていく。

 

 

「……そこで止まれ! …………飛ぶぞっ!」

 乱暴な声が少し遠くから聞こえた。いやな予感がする。

 私が目を離したのが悪かった。まさかあんな小さな子にまで手を出すなんて。

 “まっていてね、ニーナ。今お姉ちゃんが助けるから!”

 ニーナの僅かなマナを探すのは、かなり大変だったけど、ここまでくればはっきりわかる。ニーナの他に感じたことのあるものが二つと、得体のしれないのが一つと、莫大な、まるで、精霊のように巨大なマナが一つ。

 高レベルの精霊術師の類だろうか。そんなやつがあいつらの仲間にいたなんて。

 色々と思考を巡らせながらゆるやかな坂を走って登りきる。

 坂を越えると、そこにいた。男が三人いる。しかし、思った構図とは違った。一人はどうやら、ニーナを助けようとしてくれているようだ。だが、ニーナを人質に取られて動けずいるのか……。

 いや、違う。圧倒されているのはむしろニーナをさらった二人組だ。剣を持つ男の放つ気配に完全に押されている。

「こ、この野郎っ!」

 ナイフを持った男が張り詰めた空気に耐えかねてナイフを首元めがけて振り下ろすべく、腕を高らかに上げた。

 事は一瞬で起こった。光のような、本当の一瞬。ナイフをニーナの首元にあてていた男の腕が、あらぬ方向に曲がり、腹に剣の柄が深くめり込んでいた。もう一人の男が驚く暇もなく、刃がのど元に突き付けられる。

「さっさと去れ。命まで取られたいか」

 剣を持った男――よく見れば一六、一七ほどの黒髪短髪の少年――は白目をむいた男を、もう一人の男にむかって蹴り飛ばすと、ニーナを脇に抱えて剣を男二人に向けた。

「少しだけ待ってやる。その間に視界から失せろ」

 相手が悪いとやっと気付いたのか、男二人は一目散に駈け出して、あっという間に点になった。余りの強さに驚いているのも束の間、その少年が地面にどさっと崩れ落ちる。

「ちょ、ちょっと君!」

 駆け寄ってみると、気絶しているようだった。外傷は特にない。

「大丈夫? ニーナ」

 まだ怖いのだろう、肩をガタガタと震わせているニーナの肩を抱きしめる。

「ごめんね、お姉ちゃんが目を離しちゃったから」

「ううん、ニーナが無理やりついていったんだもん。私が悪いんだよ」

 まだ九歳なのに、この子は――。

「このお兄ちゃん大丈夫かな?」

 ニーナが心配そうに少年の肩をゆする。が、反応はない。

「大丈夫。少し寝てるだけよ。ん、これは――」

 少年のすぐそばにロザリオが落ちていた。

「あ、あれ。ねえ、ニーナ。この人剣を持ってなかった?」

「え、わかんないよ」

 どういうことだろう。どうみても剣なんてどこにもない。

「――とりあえずこの人をこのままにしておくわけにはいかないわね。ヴェナスさんに連絡を取るから、ちょっと待ってね、ニーナ」

「うん」

 ヴェナスさんのマナは――よかった、近くにいる。


この小説に関しては約5万字、ライトノベルにして120P程度は描きあがってます。

そのため、しばらくは二日に一回の更新頻度で上げていきます。

予定としては200Pほど書きあがったら一巻完成、ということにしています。

二巻に手をつけるかどうか受け次第・・・といったとこでしょうか。


文章間違い、用法間違い、矛盾などの指摘はどうぞしてください。

小説を書く文法は知る限りの範疇で守っているつもりです。

(カッコの使い方はややオリジナルですが)

感想をもらえるとうれしいです。

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