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大賢者、青春を楽しむ

 


「ん……んん……」


「おっ、気がついたか」


 眠りから目覚めると、ステラは瞼をパチパチし、はっとしてわしに尋ねてくる。


「セゲールは!?」


「あいつなら俺がぶっ飛ばしておいたよ。だからもう大丈夫」


「ぶっ飛ばしたって……倒したの? あんたが先生を?」


「まぁね。最後の最後に逃げられちゃったけど」


 彼女を安心させるような嘘を吐く。

 本当は跡形もなく消し飛ばしたんじゃが、それは言い辛いので逃げられた事にしておいた。


 元々殺す場面ところを見せたくなくて眠らせたんじゃし、これくらいの嘘は許して欲しいかの。


「そう……やっぱりあんたって凄いのね」


「いや~実は色々理由があって実力を隠してるんだよね。だから俺のことは皆には内緒にしておいてもらえると助かるよ」


 流石にわしがただの学生でないことはバレちゃっておるじゃろうし、隠し切るのも無理じゃろうし、言い訳のしようがない。


 だからわしは開き直り、ただの学生でないと自分から告げ、ステラに秘密にしてもらうようにした。


 ふっふっふ。

 自白したのにはちゃんと理由があるんじゃ。


 一つは、わしにミステリアスな部分があるところを知ってもらうこと。


 女の子は男の子のミステリアスな部分に惹かれるって恋愛漫画に描いてあったからの。

「えっ!? この人って実は○○だったの!?」というギャップが良いらしい。


 もう一つは、ミステリアスな部分を二人だけの秘密にしてもらうこと。


 これは呪いと同じじゃが、自分だけが相手の秘密を知っているという状況が二人の関係を特別なものにし、距離をぐっと近づける効果があるんじゃ。


 これでわしとステラはさらに親密度が上がったじゃろうて。

 がっはっは! わしって天才! やはり恋愛漫画は人生の教師じゃの!


「ついでと言ってはなんだけど、もう一つ内緒にして欲しいことがあるんだ。ステラには申し訳ないんだけど、今回起きたことについて誰にも話さないで欲しいんだ。勿論、先生達にもな」


「えっどうして? 先生には報告した方がいいんじゃないのかしら。特にセゲールはこの学校の教師だったんだし……あんな怪しい奴が学校の教師をしていたって、重大なことなんじゃないの?」


「それは……そうなんだけど……」


 わしも今回の事件については学校に報告するかどうか迷った。じゃが、色々考えた上でやめといた方がよいと思ったんじゃ。


 正直なところ、わしはステラを攫った犯人に二人の候補を挙げておった。

 一人は、突然わしとステラに近付いてきたセゲール。あやつはな~んか怪しかったからの。


 学園系バトル漫画にも、セゲールのような見た目頼りなくてほんわかしている如何にも人畜無害で善人そうな者が、実は悪い奴ってのはよくあるからの(偏見)。


 そしてセゲールの他にもう一人怪しいと思った者は、実はジョセフ氏なんじゃ。彼には腑に落ちないところが幾つかある。


 恐らくジョセフ氏はステラが図書室で呪いに関しての書物を探していることを知っておったじゃろう。しかし、彼は図書室には呪いの書物が置かれていないことをステラに伝えておらんかった。


 敢えて伝えなかったのか、そもそも図書室に呪いの書物が置かれていないということを知らなかったのかは分からんがな。


 わしとしてはジョセフ氏を信頼しておるし、奴等の仲間であって欲しくないと思っておる。


 彼は普段からおっかなくて厳しいが、あれでも生徒想いじゃからの。それに受験の時にもわしを助けてくれたし、意外と優しい面もある。


 なので出来れば疑いたくはないんじゃ。


 しかし、それを加味してもステラに関しての対応に引っ掛かるところがあるんじゃ。呪いを抑える道具を持っているのも不思議じゃしな。


 怪しいのはジョセフ氏だけではない。

 学校にセゲールのような奴が平気で教師になっているということは、きっと他にも『異神教団』とかいう組織の者が潜伏しておるじゃろう。

 教師だけではなく、生徒の中にもおるかもしれん。


 現段階では、学校の中に信用できる者は誰一人として居ないんじゃよな。

 だからこの事は学校関係者の誰にも話さず伏せておいた方がよいとわしは判断したんじゃ。


 わしが理由を話せず渋っていると、ステラは小さくため息を吐いて、


「はぁ、わかったわ。あんたの言う通りにする、この事は誰にも話さないわ」


「すまないな。でも、然るべき人には俺の方から報告しておくから、安心してくれ」


 流石に誰にも話さないという訳ではない。

 わしが最も信用している人物にだけは、後で相談したいと思っておる。


「じゃあ帰ろうか、ミーシャも待ってるぞ」


 わしが手を差し出すと、ステラは手を取り立ち上がって、


「これだけは言わせて」


「えっなに?」


「ありがとう。私を助けにきてくれて、助けてくれて、嬉しかったわ」


 満月の光に照らされた、満面の笑顔を浮かべるステラに、わしは思わずドキッとしてしまう。


 な、なんじゃこれ!? めちゃんこ可愛いんじゃが! 笑顔の破壊力がエグいんじゃが!


 わしは動揺を隠そうと、頭をこすりながら、


「そ、それほどでもないよ。それに、ステラの為なら俺は例え火の中でも水の中でも助けに行くよ」


「ふふ、ありがとう」



 ◇◆◇



「えっ、セゲールが死んだって?」


「ああ、反応が消えた。恐らく何者かによって始末されたのだろう」


「あっちゃ~、やっぱダメね!」


 ここは魔法国家マジカヨに存在している『異神教団』のアジトの一つ。


 定例報告会の日ではないが、セゲールの件で急遽集められたのだ。アジトには複数人の信徒が居るが、その中にはバビロニア魔法学校に襲撃したローブを纏った男と女もいる。


「儀式を任されたってのに、ヘマしたのかよ」


「流石は五賢がいるバビロニア魔法学校といったところか。一筋縄ではいかないな」


「まぁいんじゃない? あの学校には他にも仲間がいるんだしさ」


 セゲールは異神に呪い子(生贄)を捧げる役目を任されていた。


 しかしその役目は、何者かの手によって果たされることなく失敗に終わってしまう。それどころか、恐らく殺されてしまったであろう。


「そういやお前等、あの学校のガキ共と戦り合ったんだってな。どうだ、目ぼしい奴はいたかよ?」


「ああ、俺は一人見つけたぜ」


「私も、良い感じの子が居たわよ」


「へぇ、お前等がそう言うんだから相当いい奴なんだろうな。俺もそっち側に参加したいぜ」


「我々にはやる事が沢山ある。お前に遣わした任務も重要なものだ。それを忘れるな」


「へいへい」


「異神を復活させ、この腐りきった世界に恐怖と混沌を。『異神教団』に栄光あれ」


「「『異神教団』に栄光あれ」」


 闇は蠢く。

 彼等の存在はそう遠くない日に明るみに出るだろう。人々にとって、恐怖の存在として。



 ◇◆◇



「ぐぇ~~」


 次の日の朝。

 身体の調子が悪くて机に寄りかかっておると、バシッとレオンに背中を叩かれる。


「どうしたどうした、そんな辛気臭い面してよ。またステラとなんかあって落ち込んでんのか?」


「いや~ちょっと身体が重くてな~」


 なんか身体が怠いというか、しんどいんじゃよなぁ。

 多分、昨日調子に乗って第十階位(神級)魔法を使った反動だと思うんじゃが。若返ってから神級魔法を使ったのは初めてだったからのぉ。


 こんなことなら練習しておけばよかったわい。


 はぁ~ダル。


 身体が怠くてレオンのちょっかいにも反応できずにいると、隣の席にステラが座る。彼女はわしの方をちらりと向きながら、


「おはよう、アル」


「うん、おはよう」


 ……。


「「えっ?」」


 ……あれ? 聞き間違いか? 今わしの事、名前で呼ばんかった?

 衝撃の事実に呆然としておると、ガバッとレオンがわしのヘッドロックをかけてきて、驚きながら小声で聞いてくる。


「おい、どういうことだよ! ステラの奴、お前のこと名前で呼んだぞ!?」


「やっぱり!?」


 そうじゃよな! わしの聞き間違いじゃなかったんじゃよな!?

 いつも「あんた」としか呼んでくれないのに!


 ほっほほ~い! ステラがわしを名前で呼んでくれたぞ~い!


 なんじゃこれ、めちゃんこ嬉しいんじゃが! 疲れなんか一瞬で吹っ飛んだぞい!


「おいこの野郎、いつの間にそういう関係になったんだよ! やるじゃねぇか!」


「ぐふふ、ぐへへへ」


「はぁ……バカね」



 いや~楽しいのぅ! やっぱり青春って最高なんじゃー!


ご愛読ありがとうございました!


短い話数でしたが、いかがでしたでしょうか?

少しでも楽しかったと思っていただけたら嬉しいです!


私自身としては、凄く楽しく書けました。

ここ最近では一番筆が乗っていたと思います笑


閲覧、ブクマ、応援、いいねなど、

本当にありがとうございました!


よろしければ、他の作品にも目を通してみてください!

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