表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

30/33

大賢者、探す

 


「禁書庫には置いてあるよ」


「「禁書庫?」」


 わしとステラが恋愛イベントに発展しておったところを、バジリスククラスの担任であるセゲール氏に邪魔されてしまった。


 彼に何の本を探しているのか聞かれ、呪いに関係している書物を探していると伝えると、図書室には存在しないと言われてしまう。


 しょんな~と落胆しておったら、セゲール氏は禁書庫には置いてあると言ってきたのじゃ。


「そう、禁書庫だよ。あそこにならあるんじゃないかな」


「セゲール先生、禁書庫ってなんですか?」


「学生では閲覧できない書物が置かれてあるんだよ。禁術とか、事件の資料とかね。勿論、呪いに関しての書物も置いてあるはずだよ」


「そんな場所があったんですね……」


(解せんな……禁書庫のことをどうしてジョセフ氏はステラに黙っておったんじゃ?)


 セゲール氏から情報を聞いて感心するステラ。

 彼女の反応からすると、禁書庫の存在はジョセフ氏から知らされていないようじゃ。


 そもそも、どうしてジョセフ氏はステラに呪いの書物が図書室に置いてないことを伝えておらんかったんじゃろ。


 敢えて隠していたか、ジョセフ氏も図書室に呪いの書物が無いことは知らなかったか、禁書庫の存在を知らなかったか。


 ステラが聞かずとも、彼ならば自分から教えると思うんじゃがの。なんせジョセフ氏はステラの恩師であり、呪いについての手がかりを見つける為に魔法学校に誘った張本人なんじゃから。


 う~ん、彼なりに考えがあるんかのぉ。


「もし良かったら、僕が連れて行ってあげようか?」


「えっ、いいんですか!?」


「うん、本当は生徒が入っちゃダメなんだけどね。でも君の境遇は理解できるし、教師同伴なら大丈夫だよ」


「よかったなステラ!」


「ええ! ありがとうございます、セゲール先生!」


 いや~ラッキーじゃったな。

 まさかセゲール氏が許可してくれるなんての。彼が理解ある優しい教師で良かったわい。これで呪いについての書物を見れる。


 ステラと一緒に喜んでいると、セゲール氏は踵を返して、


「禁書庫はこっちだよ、ついて来て」


「「はい」」


 先導するセゲール氏の後についていく。


「ここだよ」


「ここって……何もないですけど」


 図書室の端に辿り着くが行き止まりじゃった。目の前には壁があるだけで他のは何もない。


 こんな所に禁書庫なんてあるのか? と首を捻っていると、セゲール氏は「ちょっと待っててね」と言い、魔力を練り上げた。


「解除魔法・開け(オープン)


 彼が魔法を発動した刹那、ゴゴゴッ! と大きな音を立てながら目の前の壁が開いていく。

 壁の中にはあら不思議、地下に繋がる階段があった。


「図書室にこんな隠し扉があったなんて……」


 隠し扉の存在に驚愕するステラ。驚いたのはわしも同じじゃ。わしが学生の頃にはなかったような気がするが……。元々あって、見つけられなかったという線もあるがの。


「ついて来て。暗いから足下に気をつけてね」


「はい」


 コツコツと暗い階段を降りていくセゲール氏とステラ。

 わしも続いて降りていくが、少し気になることが頭に掠めておった。その原因であるセゲール氏の背中をじっと見つめる。


(セゲール先生は……なんで隠し扉を知っているんだろう)


 彼はわし等と同様、今年にこの学校へ赴任してきた筈じゃ。


 赴任してからまだ少ししか経っておらん。なのにどうしてセゲール氏は、この短い期間で隠し扉の存在を知り得たんじゃろうか。


 教師全員に知らされているとすればそれまでなんじゃが……な~んか引っかかるんじゃよなぁ。


「ここだよ。今明りを点けるからね」


「凄い、こんな地下部屋があったなんて……」


 階段を降りると多少広い部屋に出る。

 セゲール氏が魔法を使用して部屋を明るくすると、部屋には多くの本棚が置かれておった。かなりの本があるが、これ全部禁書や呪いに関しての書物なんかの。


「ここなら呪いの関しての書物もあるはずだよ。一応忠告するけど、呪い以外の書物は見ちゃダメだからね」


「はい、わかってます」


「うん、いい返事だ。悪いけどここにいられる時間は一時間ほどだ。新任教師の僕は雑用や仕事があるからね」


 相変わらず使いっパシリにされてるんかの……可哀想に。

 時間も限られているので、わしとステラは早速呪いの書物を手分けして探していく。


「これは呪い関しての事件簿……これは呪いについての考察。凄いわ……呪いに関しての資料がこんなに沢山ある!」


 呪いに関しての書物を見つけたステラが、興奮した様子で食い入るように読み漁る。


 わしもぱっと探してみるが、簡単に見つけてしまった。一冊手に取り、パラパラとページを捲っていく。


「これまで発見された呪いの種類に関しての資料……か」


 へ~、色んな呪いがあるんじゃの。

 しかも我が国である魔法国家マジカヨに現れた呪いだけではなく、他国に現れた呪いまで載っておるではないか。よくこんな情報集められたの。


 ステラの『吸魔』の呪いについても載ってあればいいんじゃが……。


 そんな感じで呪いについての書物を読み漁っておると、あっという間に一時間過ぎたのかセゲール氏が声をかけてくる。


「はい、今日はここまでにしようか」


「はい……」


「お目当ての物は見つかったかな?」


 そう尋ねてくるセゲール氏に、ステラはふりふりと顔を振って、


「いえ……ですが色々と分かることはありました。ありがとうございます、先生」


「それなら良かった。じゃあ片付けて戻ろうか」


 残念じゃが、わしもステラも呪いを解く方法の鍵となる本は見つけられんかった。

 悔しい気持ちを抑え、わし等は書物を片付けて降りてきた階段を登る。


「施錠魔法・締まれ(ロック)


 セゲール氏が魔法を使用すると、開いていた壁が元に戻った。

 付き添ってくれた彼に、わしとステラがお礼を告げる。


「「セゲール先生、今日はありがとうございました」」


「いいんだよ、生徒の力になるのが教師の役目だからね。あっそれと禁書庫については誰にも話しちゃダメだからね。勿論先生にも、バレたら僕が叱られちゃうからさ」


「分かってます。それと先生にお願いがあるんですけど……」


「はは、言わなくても分かってるよ。また禁書庫を使いたいんだろ? 時間があれば僕が付き合ってあげるよ。勝手に二人で入られても困るからね」


「本当ですか!? ありがとうございます!」


 これは朗報じゃな。

 一時間ぽっちじゃ全然調べられんかったからの。可能であれば、これからも使わせていただきたいと思っていたところじゃ。


 セゲール氏が理解ある教師で助かったわい。


「じゃあ僕は仕事があるからもう行くね。二人も呪いを探すのはいいけど、学生の本分は学ぶこと。勉強を疎かにしちゃダメだよ」


「「はい」」


 さようならと挨拶を終えると、セゲール氏は図書室から立ち去って行った。


「よかったなステラ、今日だけでかなり前進したんじゃないか」


「ええ……セゲール先生にも協力してもらえることになったし、後は手掛かりを見つけるだけね」


 そう言って、にこやかに微笑むステラ。

 おお……彼女の笑顔を見たのは初めてじゃ。やっぱりステラは笑うともっと可愛いの。顰めっ面なんてしてないで、笑っておればいいのに。


 はっ!?

 バカかわしは! 心の中で思うだけで、口に出さんといかんじゃろ!

 心の中で深呼吸を繰り返し、意を決して口を開いた。


「ステラは笑ったほうが――」


「今日はありがと。私ももう行くわね」


「えっ……あ、うん」


 口に出す前に、ステラは行ってしもうた。

 しょんな~、せっかくキメ顔を作ってかっこよく言おうと思ったのに……とほほ。


 まぁええか!

 今日だけで、ステラといっぱい居られたしの! わしの恋愛も一歩前進じゃ!



 ◇◆◇



「ふんふんふん~」


「最近ご機嫌だね。何かいいことでもあったのかな?」


 月が満ちる真夜中。

 わしが鼻歌をしておると、ルームメイトのリアムに問いかけられる。わしは満面の笑みを浮かべながら、


「わかっちゃう? わかっちゃうかな~?」


「えっあ……うん。まぁね(誰がどう見たって浮かれてのるが分かるよ)」


「いや~今楽しくて楽しくてしょうがないんだよな~」


「へ、へぇ……」


 わしが何でこんなに機嫌が良いのかというと、ステラと一緒に居られるからなんじゃ。

 ここ最近、わしとステラはセゲール氏に付き添ってもらって禁書庫で呪いを調べておるんじゃよ。


 その時だけステラと同じ時間を過ごせるんじゃ。

 まぁ恋愛イベントも発生しないし、二人っきりではなくお邪魔虫も一人おるがの……。


 これで二人っきりなら恋愛イベントも起こりそうなもんなんじゃが……贅沢は言えんの。ステラと一緒に居られるだけで充分じゃ。


「いや~青春っていいよな! リアムも青春しろよ、一度っきりの人生なんだから楽しくいこうぜ!」


「(なんかウザいな……)浮かれているのは構わないけど、そろそろ勉強試験もあるんだよ。そっちは大丈夫なの?」


「そんなんへっちゃらで~す!」


「はぁ……ダメだこりゃ」


 勉強試験なんかどうでもええんじゃ!

 そんな事よりも、ステラと一緒に居ることのほうが大事なんじゃ~い。


 いや~、恋愛って楽しいの~。学校に入学して正解だったわい。


 ――コンコン。


 そんな風に浮かれておると、突然ドアがノックされる。


「こんな夜中に誰だろう」


 リアムが首を傾げながらドアを開けると、そこには見知らぬ女子生徒がおった。


「あれ、ミーシャじゃないか。どうしたの? こんな夜中に男子寮に来たら怒られちゃうよ」


「あっ、ここってリアムの部屋だったんだ」


 どうやらリアムと彼女は顔見知りのようじゃ。ユニコーンクラスの生徒なんかの。

 ミーシャという女の子は、切羽詰まった表情でリアムに問いかける。


「ねぇ、この部屋にアルって子がいるって聞いたんだけど、いる?」


「アルなら俺だけど、どうしたんだ?」


 なんと彼女はわしに用があるみたいじゃ。いったいどんな用事なんかの?

 なんか急に嫌な予感がしてきたんじゃが。


「君がアルなのね。アタシさ、ステラのルームメイトなんだけど、まだステラ部屋に帰ってきてないの。」


「なんだって!?」


 ステラがまだ部屋に帰ってきておらんだと!? それは大変じゃ!


「それは心配だね。もう夜も遅いっていうのに……こんな時間まで出歩くなんて」


「でしょ? アタシも流石に心配になってさ。どこに行ってるか知らない? なんか最近、アルっていう男子と一緒にいるってステラから聞いていたから、君なら知ってると思ってきたんだけど」


「いや……俺も知らない」


「そう……全く、あの子ったらこんな夜中にどこほっつき歩いてんのよ」


 ステラが行く場所か……パッと思いつく場所は二か所あるの。


 ジョセフ氏のところに手袋の調整をしに行っているか、呪いの書物を探しに一人で禁書庫に行っておるか。


「あまり大袈裟にはしたくなかったけど、先生達に言うしかないわね」


「そうだね……その方がいいと思うよ。何かあったらでは遅いし」


 二人の案に、わしは待ったを唱える。


「二人とも、少しだけ待ってくれないか? ステラは俺が連れて帰る」


「連れて帰るって言ったって、ステラがどこに居るかわからないじゃない」


「アルは心当たりがあるのかい?」


 リアムの問いに、わしはうんと頷いて、


「必ず連れて帰る。だから俺に任せてくれ」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ