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大賢者、ドキドキする

 


「ぬふ、ぬふふふ」


 いや~気分がええのぉ。

 昨日はステラとの距離もかなり縮まったし、朝から最高の気分なんじゃ~。


 天気も雲一つない快晴で、小鳥ちゃんがちゅんちゅんと囀っておる。まるで世界がわしを祝福しているようじゃ。


 青春ってまさにこんな感じなんかの~。

 楽しくて仕方ないわい。身体が勝手にステップを刻んでしまうて。

 あっそれスキップスキップらんらんらんってな具合での。がっはっは!


「よぉアル、やけに機嫌が良さそうじゃねぇか。その様子だと上手くいったのか?」


「おっレオン。ぐふふ、わかっちゃう? わかっちゃうかな~」


「誰がどう見てもお前が浮かれてるのは分かるだろ。そんなキモい顔浮かべてんだからさ」


「えっ……キモ?」


 わしってキモい顔してる? ちょっとショックなんじゃが……。

 まっええか! 今のわしは何を言われてもへっちゃらじゃぞい!


「で、どうなったんだよ? 俺には教えてくれるんだろうな~」


「痛い痛い、ちゃんと教えるって!」


 ヘッドロックをしてきたレオンにわしは昨日の出来事を搔い摘んで説明する。


 ステラと沢山話して、二人だけの共通点を見つけたことや、これからは時々一緒に行動を共にするようなったこと。

 そして一番重要だった、ステラとジョセフ氏は禁断の関係ではなかったことなど。


 勿論、ステラの過去や呪いについては一切触れておらん。

 本当なら全部内緒にしたいところなんじゃが、わしの背中を押してくれたレオンには恩義があるので、話せる範囲で話した。


 わしの報告を受けたレオンは、わしの背中をバシッと叩いて自分の事のように笑った。


「よかったじゃねぇかアル! まさかそんなとんとん拍子に上手くいくとは思ってもみなかったぜ」


「これもレオンが勇気をくれたお蔭だよ。本当にありがとな」


「お、おう……(本当は勢い余って告って玉砕したところを爆笑してやろうと思ってたなんて言えねぇ)」


 いや~わしは良い友を持ったもんじゃ。これも友情というやつかの?


 あっちょっと今わし、青臭いこと言っちゃった?

 まっええか! 青臭がろうが今のわしはへっちゃらじゃ。まさに無敵状態とはこのことじゃの。がっはっは!


「おっ噂をすれば愛しのステラちゃんのお出ましだぜ」


「えっマジ!?」


 レオンの言葉に反応したわしは、ドラゴンを凌ぐ速度で振り返る。すると、背後からステラがこちらに歩いてきていた。


 おほ~今日もステラは可愛いんじゃ~。

 声でもかけちゃおうかの。なんていったってわしとステラは秘密を共有した仲なんじゃから!


「おはようステラ、今日も良い天気だな!」


「馴れ馴れしくしないでって言わなかったかしら」


「え、あ……」


「もう一度言っておくけど、余計な事べらべら喋らないでよ」


「あっはい」


 それだけ言うと、ステラはわしの横を通り過ぎて教室に向かってしまう。

 彼女の冷たい態度に呆然としていると、ポンッとわしの肩を叩いてきたレオンが憐れみの表情で口を開いた。


「お前等本当に仲が縮まったのか?」


「さぁ……どうだろう……」


「まぁ頑張れ。応援はしてやるよ、期待はしてないけどな」


 と言って、レオンも立ち去っていく。


 あれれ~、おかしいな~。

 仲良くなったと思っとったのに、全然そんな事ないぞ~。

 青春って……難しいんじゃな……。



 ◇◆◇



 授業が終わって放課後。

 授業の時間を全て使って(授業中は上の空)浮かれきっていた心を改め直したわしは、隣の席のステラに声をかける。


「なぁステラ、探すなら手伝うぜ」


「あんた、本当に来る気?」


「当たり前じゃん、約束したんだからさ」


「はぁ……まぁいいわ。猫の手も借りたいところだしね。ついて来なさい」


「いくいく~! どこにでも付いて行きますよ~!」


 席を立って歩き始めるステラの後をついていく。


「おい、ステラとアルが一緒にいるぜ」


「あいつらいつの間に仲良くなったんだ?」


「……ふん」


(上手くやれよ~アル)


 なんかクラスメイトがわし等の事を注目してなんか言っている気がするが、まぁええか。

 そんな事より、早くステラに追いつかんと。


「どこに行くんだ?」


「図書室よ」


「図書室? そこで呪いの事を探すのか?」


「ええ。ここは名誉あるバビロニア魔法学校。魔法だけじゃなく、ありとあらゆる書物が置かれてあるわ。そこから呪いについての書物を探しているの」


 ほへ~、図書室か。

 わしも学生の頃はよく利用したもんじゃ。しかし呪いに関しての書物なんてあったかの~?


 まぁわしは魔法のこと以外は目を通さんかったし、何十年も前のことじゃからよく覚えておらんしの。それに、こんだけ経っておれば新しい書物も増えてるか。


 そんな感じで話している内に、わしとステラは図書室にやって来た。


「おお~懐かしいな~」


 久しぶりに訪れたが全然変わっとらんの。

 他の校舎は軒並み新しくなってるのに、ここだけは昔のままじゃ。新しいのも新鮮でええが、古いのも趣があってええの。


「懐かしい?」


 やっべ、つい口を滑らしてしもうた。

 めっちゃ怪し気に見てくるし、早く誤魔化さんといかんな。


「いや~、こういう古い所って懐かしい感情になるよな!」


「……まぁいいわ。端から順に探してる途中だから、あんたはそっちをお願い」


「えっ、一緒に探さないの?」


「そんな訳ないじゃない。適当に探して見逃さないでよ」


 厳しくそう言うと、ステラは身を翻して本棚を閲覧していく。

 えぇ……折角ステラと一緒の時間を過ごせると思ったのに、バラバラに別行動するんじゃ意味ないじゃないか。とほほ……。


(こんな事でしょげてる場合じゃないぞ! 呪いの書物を探し当て好感度アップだ!)


 見つければステラも喜ぶじゃろ。


『ステラ、本を見つけたぞ』


『キャーステキー! やっぱりアルに手伝ってもらってよかったわー!』


『はは、これくらい余裕だよ』


 ってな感じでの! 

 ぐふふ、よ~し、頑張っちゃうぞい!


 ステラに喜んで貰うために、わしは指定された場所から虱潰しに呪いに関しての書物を探していく。


「呪い呪いっと……あれ、この本の著者俺じゃん」


 呪いの書物を探している最中、目についた本を本棚から取り出す。


 その本の著者はアルバート・ウェザリオと書かれておった。へぇ、わしってこんな魔法の本を書いておったんか。全然覚えが無いんじゃが……。


 あ~そういえば弟子の一人が、わしの研究資料を本にしていいですかって聞いた時、勝手にしていいよと言っておったっけ。


『是非、是非アルバート様の研究は後世に残しておくべきです! 大丈夫です、アルバート様のお手を煩わせるような真似はしません! 私に全てお任せください!』


『お、おう……いいよ』


 すんごい鼻息荒く迫ってきたから、関わるのが面倒になって任せたんじゃよな。


 試しに読んでみると、魔法について丁寧に分かり易く書かれておった。ほうほう……結構やるもんじゃなぁ。


「ねぇ、ちょっといいかしら?」


「うぇ!? あっと、その……」


 突然ステラに声をかけられてしまう。

 あっかん……自分の本に夢中になって探すの忘れておった。びくびくしながらステラの方を向くと、案の定険しい表情を浮かべておる。


「真面目に探さないなら手伝わなくていいんだけど」


「ごめん! ちょっと気になった本があったからつい! ちゃんと探してるよ! それでどうしたんだ?」


「それっぽいのを見つけたんだけど、ちょうど届かないから取ってもらうかと思ったのよ。あんたの方が少し背が高いしね」


「浮遊魔法とかで取れないのか?」


「図書室での魔法は禁止よ。バレて罰則を受けるのも嫌だし」


 おお……意外と律儀なところがあるんじゃの。


「で、取ってくれるの?」


「と、取る取る! どこにあるんだ?」


 わしは慌ててステラの背中を押す。

 ふ~、魔法の事になると他の事を考えられなくなるのは悪い癖じゃよな~。気をつけんと。


「あの黒い本よ」


「あれか」


 ステラが指した方向に真っ黒な本があった。彼女の言う通り本棚の最上段に置かれており、丁度届かないぐらいの高さじゃ。

 わしは本を取ろうと手を伸ばすも、


「よっ! もうちょい――よし! うわ!?」


「きゃ!?」


「危ない!」


 本を掴んで抜き取ろうとしたのじゃが、中々抜けなかったので強引に引っこ抜くと、周りにあった本まで落っこちてしまう。

 このままではステラに怪我をさせてしまうと危惧したわしは、咄嗟に覆い被さった。


「あたっ!」


「だ、大丈夫!?」


「うん……なんとか。ステラは平気か?」


「ええ……私は大丈夫よ」


 良かった~、わしのドジで彼女に怪我をさせる訳にはいかんからの。頭はちょっと痛いが。


(って、距離近くない!?)


 鼻先がくっついてしまいそうな距離にビックリしてしまう。ステラの顔がくっきり分かるほど、わし等の距離は近かった。


 しかもこの体制って、もしかして“壁ドン”というやつじゃないか!?


 わしがキュンキュンしながら読んでおった恋愛神漫画、『黒オオカミ君と白ウサギちゃん』にあった壁ドンのシーンとそっくりじゃ!


 まさかあのシーンを自分で体験できる日がくるなんて……。

 怪我の光明とはまさにこの事じゃの!


(って、感動してる場合じゃない!)


 ここからが大事なところなんじゃ。確か主人公の黒崎君はこの後、ヒロインの顎に手を当てておったよな。


 そう、確か“顎クイ”じゃ!

 あの必殺技によってヒロインは恋に堕ちたんじゃ!


 いけ、いくんじゃわし! ここでやらねばいつやるんじゃ!

 覚悟を決めてステラの顎に手をやろうとした瞬間――、


「大きな物音がしたけど、大丈夫かい?」


「「――っ!?」」


 不意に横から声をかけられて、ビックリしてしまう。

 だ、誰じゃ! わしの決死の覚悟を邪魔した空気が読めない奴は!


「「セゲール先生」」


「あれ……お邪魔だったかな?」


「いえ、そんな事ないです」


「ぐへ」


 思いっきりステラに突き飛ばされてしまう。

 ふぇ~ん、良いところじゃったのに~。まさか邪魔したのがセゲール氏じゃったとは。


「君達の年代には仕方ないかもしれないけど、図書室で不純異性交遊はやめていただきたいな~」


「だからそんなんじゃないです。勘違いしないでください」


 うう……間違ってはおらんけど、そんなに強く否定しなくても……。

 はぁ……顎クイさえできておればのぉ。


「あっそう? 僕の早とちりだったかな。確か君達はフェニックスクラスの生徒だったね。なにか本でも探しているのかい?」


「そりゃ図書室にいますからね」


「それはそうだね。どんな本を探しているんだい?」


「それは……」


「呪いに関しての書物を探しています」


 セゲール氏に聞かれたわしは言い淀んでおると、ステラが言ってしまう。

 えっ!? 誰にも内緒なんじゃないの!?


 事実を話してしまったステラに、わしは慌てて小さい声音で問いかける。


「呪いのこと言っちゃってよかったのか?」


「構わないわよ。あんたは秘密でも、私が呪い子だってことは学校側は知っているし、それでも認められて入学してるんだから」


「あっ、そっか……」


 そういえば秘密なのってわしだけじゃった。

 ステラの呪いについては、当然学校も認知しておるのか。だから普通に喋ってしまっても平気なんじゃな。


「呪いか~、そういえば君は呪い子なんだってね」


「はい」


「う~ん、残念だけど図書室に呪いに関しての書物は置いて無いよ」


「えっ、そうなんですか?」


 なんと驚いた。

 図書室には元からなかったんか。じゃあ頑張って探していた意味もなかったんじゃな。


 落胆するステラに、セゲール氏は「だけどね」とにこやかに笑い、こう言ったのじゃった。


「禁書庫には置いてあるよ」


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