大賢者、特別試験を行う
「本日は三組合同の特別試験である。分かっているだろうが、特別試験は成績に大きく反映され、個人とクラスにそれぞれ点数が付与される特別なものだ。生徒諸君は気を引き締めるように」
「「はい!」」
ジョセフ氏がそう言うと、生徒達は大きな声で返事をした。
(特別試験にポイントね~、急に変な設定入れてきおったなぁ)
フェニックス、ユニコーン、バジリスクの三クラスは、特別試験を行う為に学校の私有地である森を訪れていた。
クラスの担任であるジョセフ氏、セゲール氏、それとユニコーンの担任と、試験の協力にマリアンヌ氏も着いてきておる。
どうやらこの森で、特別な試験を行うそうじゃ。
というかポイントってなんじゃろう、初めて聞いたんじゃが。気になったわしは、隣にいるレオンに小さい声音で聞いてみる。
「なぁレオン、ポイントってなんだ?」
「はぁ!? お前そんな事も知らねぇのかよ」
「知らない。だから教えて」
「ったくしょうがね~奴だな~。いいか、ポイントってのはな~」
レオンの説明を聞いて纏めると、どうやら一年の中で八回ほど点数が付与される試験があるそうじゃ。
試験には筆記試験と、今回のように特別な試験があるらしい。
そんで、試験で優秀な成績を残した生徒やクラスには点数が付与されるんじゃ。
ポイントにどんな意味があるのかといえば、年度末に一番点数を持っている成績優秀な生徒には名誉あるアルバート賞を授与されるみたいなんじゃ。
わしの賞って……おいおい、そんなん貰って喜ぶ者なんておるんかの……。全然いらないんじゃが。
賞だけではなく、成績上位の三人には魔法道具とかもプレゼントしてくれるみたいじゃ。そっちは貰ったら嬉しいの。
それと、各生徒が持っている点数を合計したものがクラスのポイントとなり、三組の中で一番点数が高いクラスにはトロフィーと魔道具が渡される。
特別試験と点数については大体こんな感じじゃな。
何故このような制度を設けるかというと、生徒同士で競い高め合わせる為ためらしい。わしが学生だった頃にはなかった制度じゃ。
でもまぁ、こういうのがあった方が今の子にはええんかの。目に見えた目標をぶら下げているからやる気も上がるし。
説明してくれたレオンにお礼を伝えていると、ジョセフ氏がまた話始めたのでそちらに集中する。
「では今回の特別試験のルールを説明する。各クラス四人一組の班でここを出発し、中継地点に到着後、この場に戻ってくること。行って帰ってくるだけではなく、こちらが指定した物を採取してこないと合格とみなされないので注意したまえ」
へぇ、班で行動するんか。合宿みたいでなんか楽しそうじゃの!
「点数はゴールした班に与える。無論、点数の大小は先着順である。もし緊急の事態に陥ったり試験続行不可能な状況と判断すれば、救難の合図として空に向かって火球の魔法を二発撃ちたまえ。常駐している先生方がすぐに駆け付ける。今回の試験にはマリアンヌ先生にも協力してもらうので、大抵の怪我は治るだろう」
「みんな~頑張ってね~」
生徒達にひらひらと手を振るマリアンヌ氏。
なるほど、医師役としてあのバーさんが呼ばれたんか。
「救難を求めると試験は脱落となるので注意したまえ。最後に、この特別試験の意義を説明しよう。魔法使いは軍での遠征、魔法生物の調査など野外での活動は多々ある。いずれは、生徒諸君の中から魔界への調査団に加わる者もいるだろう。特別試験はその為の予行訓練である。なので気を引き締めて試験に望みたまえ」
「「はい!」」
ジョセフ氏の言う通りじゃな。
魔法使いは室内に引き籠っているイメージがあるが、外に出なければならん用事が意外と多い。子供達にとっては良き訓練になるじゃろうな。
それに、わしとしても魔界へ調査する人員はもっと増えて欲しい。
わし一人じゃ、果てしなく広大な魔界を全て調べるのは不可能じゃった。魔法の発展の為にも、これからの未来ある若者には是非とも頑張ってもらいたいの。
「これから担任から班を伝えられるだろう。班が決まり物資を与えられたのち、各自出発したまえ。以上だ。では解散!」
◇◆◇
「呪い子に……」
「……」
「役立たずに……」
「ふえぇ……」
「馬鹿……」
「えっ? 馬鹿?」
「最悪だ……何を考えてジョセフ先生はこのメンツに僕を入れたんだ。僕が何をしたっていうんだよ」
手で顔を覆い隠し、盛大にため息を吐きながら嘆くクリスの肩に手を置くと、わしは明るい声で励ます。
「まぁまぁそう落ち込むなって! 楽しくいこうぜ!」
「うるさい! 貴様が一番不安の種なんだよ!!」
「えぇ……」
励まそうとしたのに怒鳴られてしもうた。
そんなにわしが嫌なんか? わしはクリスと班になって嬉しいんじゃがのぉ。
ジョセフ氏から次々と班を決められ、最後に残ったのがわし等の四人。
男子はわしとクリス。女子はステラとユンユじゃ。因みに班はジョセフ氏が全部決めたらしいぞい。
(いや~ステラと同じ班になれたのは僥倖じゃったの。是非ともこの試験で仲良くなりたいぞい!)
ステラと同じ班になれて、心の中で狂喜乱舞する。
特別試験という名のイベントを機に、彼女の好感度を上げてやるぞい!
「アル、お互い頑張ろうね」
「おう、リアムもな」
やる気を上げているとリアムに声をかけられる。相変わらず爽やかな奴じゃの。
軽く挨拶を交わした後、リアムは同じ班の生徒達と森の中に入っていった。彼を見送っていると、横からレオンに肩を組まれた。
「運が良いじゃねぇかアル~。お熱のステラと同じ班になれてよ」
「へっへっへ、恋の女神が俺に味方をしているってことだな」
「よくそんな臭いこと言えるな……。まぁクリスの野郎とも同じなのは大変だろうが頑張れよ。後で色々話を聞かせてくれや」
「おう、期待して待ってろ」
一言二言話すと、レオンも班のメンバーと一緒に森の中に消えていく。
レオンに良い報告ができるように、頑張っちゃおっかの!
「アル~、あーしと勝負しようよ~」
「ふぁ!? キ、キララ!?」
突然キララに抱き付かれて驚いてしまう。
おっぱいが、たわわなおっぱいがまた腕に当たっとる! ねぇギャルって距離感がバグってない? ボディタッチ激しくない?
「どっちが先にゴールできるか勝負ね。あーし、負けないから」
「お、おう……」
あっかんな~、ギャルと話をする時どうもキョドってしまうのぉ。
なんとか耐性をつけんと、自分が情けなくてしょうがないわい。
「おいキララ、フェニックスの奴等なんかと喋ってんじゃねぇよ」
「お前は……誰だっけ?」
「ショウだよ! ショウ・バーバリアン! 覚えとけや!」
あ~そうじゃったそうじゃった。
魔箒で勝負したバジリスクの生徒か。わし、イケ好かんイケメンは記憶から消去してしまうんじゃよな。
彼は「ちっ」と苛立たし気に舌打ちを鳴らすと、クリスに向かってこう告げる。
「おいクリス、テメエにだけは負けねーからな」
「ふん、貴様なんぞに負けるか」
「そう言っていられるのも今の内だ。試験が終わった後、お前の悔しがる面が目に浮かぶぜ。おいキララ、行くぞ」
「へ~い。じゃあねアル」
「お、おう」
ショウの後ろについていくキララ。
え~、キララはショウと同じ班なんか。いいな~羨ましなぁ。
別にいいもんね! わしにはステラがおるし!
クリスは改めてわし等に身体を向けると、険しい表情を浮かべた。
「先に言っておくが、この班のリーダーは僕がする。そして当然一番を目指す。だから僕の邪魔だけはするなよ」
「勝手にすれば」
自分からリーダー宣言をするクリスに、ステラがぶっきらぼうな態度で返す。
別に誰がリーダーをしても構わん。
わしもステラもユンユもリーダーって柄じゃないし、この中じゃクリスが適任じゃしの。
「では行くぞ、僕についてこい」
「……ふん」
「は、はいぃ」
(大丈夫かのぉ~)
森の中に入っていくクリスを追いかけるように、わしらも次々と森に入る。
最初はイベントっぽくて楽しみにしていたんじゃが、班の雰囲気も良くないし、先行きが不安になってきたぞい。
(まっ、これも青春というやつかの!)
なんとかなるじゃろ。
そんな感じで、わしらクリス班は特別試験に臨むのであった。
本日夜にもう1話更新予定です!




