表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/33

大賢者、飛ぶ

 


「これより飛行訓練の授業を行う。各自、魔箒は持ってきてあるな?」


「「はい」」


 わしは手に持っている箒を見る。

 一見ただの箒じゃがこれは魔箒と言って、掃除に使う普通の箒とは異なり『飛行魔法・フライ』の陣式が施されている魔道具なんじゃ。


 飛行魔法が使えずとも魔力を流し込むだけで魔法が発動し、飛ぶ事ができる。


 魔箒は空を飛べるから移動にとても便利で、魔法使いではない一般人にも普及されておる。


 漫画の世界で例えるなら、車や飛行機と似たようなもんじゃの。

 ただ、車とかと一緒で使用するには免許が必要で、免許も取らずに乗ってしまえば魔法軍に捕まってしまうんじゃ。


 因みに魔道具とは何か簡単に説明すると、魔法の陣式が施された道具って感じじゃな。


 火をつける魔法の陣式が施されたコンロや、光を照らす魔法の陣式が施された照明、軍事に使われる武器など、様々な用途で使われておる。


 今の世の中は魔道具によって生活が成り立っておるといっても過言ではないの。


 今日は魔道具である魔箒を使って空を飛ぶ訓練をするんじゃが、道具は持参すると昨日聞いて焦ったわい。


 他の生徒達は入学する前からしっかりと用意していたらしいが、わしは持っていなかったといか聞いてなかったんで創造魔法・クリエイトで箒を作り、自分でフライの陣式を施したんじゃ。


 ジョセフ氏は生徒を見渡しながら、こう告げる。


「ではそうだな……レオン、試してみろ」


「ご指名だぞ、レオン」


「え~また俺かよ~。ジョセフ先生絶対俺のこと目の敵にしてるだろ」


 指名を受けたレオンは、愚痴を零しながらも前に出る。魔箒に跨って魔力を込めると、魔箒はふわりと浮かび上がるのじゃが――


「うわっ!?」


 すってんころりと一回転しながら地面に落っこちた。


「痛ってぇ……」


「ははは! やっぱりフェニックスは大したことね~な」


「無様ね~」


 失敗したレオンを見て、バジリスクの生徒達が笑い声を上げる。まぁ今のは笑われてもしょうがないの。

 ジョセフ氏は呆れた眼差しでレオンを見下ろしながら、


「と、このように魔箒に乗れたはいいものの、魔力の制御や魔箒の操作が上手くできなければ落ちることもある。魔箒で飛行するには訓練が必要となるので、頭に入れておくように」


「「はい」」


「では、各自魔箒に跨り訓練を行いたまえ」


 ジョセフ氏がそう言うと、生徒達は順次魔箒に乗っていく。一発で乗れる者もおれば、レオンのように体勢を維持できず落っこちる者もおる。


 そんな中わしは地面に座っているレオンのもとに向かい、手を差し出した。


「大丈夫か?」


「大丈夫じゃね~よ、背中が痛くてたまんね~わ。くそっあの陰険教師め、ミスると分かって俺にやらせやがったな」


 レオンが手を取ると、わしは小さく笑いながら引っ張り上げて立ち上がらせる。


「だろうな。良い失敗例だったぞ」


「うるせぇ、そういうお前はどうなんだよ? 乗れんのか」


「俺? 俺はまぁ――」


 ジト目で問いかけられたわしは、よっこらせっと魔箒に尻を乗せて魔力を込める。ふわりと魔箒が浮かびと、四方八方飛び周ったりくるくると宙を舞った。


「見ての通りだ」


「けっ、なんだよつまんね~な」


 おい、つまんねーとはなんじゃ。

 それにしても、魔箒に乗って空を飛ぶなんて何年ぶりじゃろうか。空を飛ぶにしても自分にフライをかけられるし、転移魔法・テレポートがあるから移動に魔箒を使うこともない。


 久しぶりに魔箒で飛んだが、結構楽しいもんなんじゃな。


「へぇ、あんたフェニックスにしては中々やるじゃん」


「えっ? あっ……(こ、心亜ちゃん!)」


 つい楽しんで宙を舞っておると、わしが大好きな漫画のヒロイン早乙女 心亜ちゃんによく似ておるバジリスクのギャルに声をかけられる。


「入学する前から練習したん?」


「えっ、ま、まぁね」


 あっかん、つい嬉しくて漫画の主人公のようにキョドってしもうた。ギャルに話しかけられると無条件でキョドってしまんじゃな……主人公の気持ちがようわかるわい。


(それにしてもこのギャル、めちゃんこ可愛いのぉ)


 セミロングの艶やかな髪は頭から途中まで金色なんじゃが、肩らへんから毛先までピンク色に染まっておる。


 黒目はパッチリと大きく、化粧をしているのか睫毛が長くて肌は白く、唇も赤く輝いておった。顔は綺麗と可愛いの狭間というか、どっちにしたってめんこい。


 そしてなんといっても、これでもかと主張しているはち切れんばかりの大きなおっぱいじゃ。着崩した制服からは胸の谷間がちらりと見えており、非常に目に毒である。


 全く……なんてけしからんおっぱいなんじゃ。


 遠目でも可愛いと思ったが、改めて間近で見ると胸が高鳴ってしまうわい。本当に心亜ちゃんが現実に現れたようじゃ。

 感激過ぎてわし、もう死んでもええかも……。


「ねぇ、さっきから胸見すぎ。そうゆうの女子は分かるから気をつけた方がいいよ」


「ご、ごめん!」


 ぴゃ~~~! 恥ずかしい~~~! 死にたい~~~~!


 必死に謝っておると、ギャルは「ふふっ」と小さく笑って、


「もう謝んなくてから。それより一緒に飛ばない? あーし、魔箒で飛ぶの超得意なんだよね。他の子達より一番上手いと思う」


「そうなんだ。実は俺も得意な方なんだよね」


「へぇ、言うじゃん。じゃあ、あーしについてきなよ」


 ――ついてこられるならね。


 そう言って、ギャルはビュンと飛んで行ってしまう。

 ほう、かなり速いの。それに魔箒の制御も中々なもんじゃ。どれ、わしも負けておれんの。


 わしは魔箒に魔力を込め、加速してギャルに追いつく。


「うわ、驚いた! 本当に追いついてきたじゃん!」


「このくらいは余裕だよ」


「それなら、もっと速くいくよ!」


 わしに追いつかれて楽しそうに笑顔を浮かべるギャルは、さらに加速して速度を上げる。

 驚いた、まだ速くなれるんかい。よ~し、それならわしも頑張っちゃうぞい!


 わしもギャルに追いつこうと加速したんじゃが、追いつく寸前にある物が目に入ってしまう。


「く、黒!?」


 ひらひらと舞うスカートの奥から、黒いおぱんつが視界に入る。


 ま、まさかギャルのパンティーをこの目で見ることができるとは!


 我が生涯に一片の悔い無し! じゃ!

 やっべ、興奮したせいか鼻血が……。


「あっか~ん!」


 パンティーを見て興奮したわしは、魔箒の制御が上手くできず落下してしまう。

 なんとか心を落ち着かせ、魔箒に再度魔力を流して操作し、地面スレスレで止まることができた。


(あっぶね~もう少しで死ぬとこじゃった! ギャルのパンティー恐るべし……)


「ねぇ大丈夫!?」


「あ、うん。なんとか」


 追いかけてきたギャルが着地すると、血相を変えてわしのもとに駆け寄ってくる。

 無事を伝えるや否や、彼女は大きく息を吐いて、


「良かった~、凄い勢いで落ちてくから心配したじゃん」


(きゅん!)


 まさかこんなに心配されるとは思っておらんかった。

 あっかん、マジで惚れそうなんじゃが。


「あんたやるね。あーしほどじゃないけど、結構速いよ」


「ありがと。君も凄いじゃん、あんなに速く魔箒を飛ばせるなんて」


「まぁね! あーしは飛ぶのが大好きだから、これだけは他の誰にも負けたくないんだ。あーしはキララっていうんだ、あんたは?」


「俺はアル、よろしく」


 キララって名前なんか。

 キラキラネームっぽいが、良い名前じゃな。彼女に似合っておる。


「アルね。今度また飛ぼうよ、授業とは別にさ」


「えっ、いいの?」


「あーしが誘ってるんだからい~に決まってんじゃん」


 なんと、まさか誘われるとは!

 もしやこれ、デートの誘いってやつなんか!? 流石はギャル、わしにできない事を簡単にやってのけるんじゃな。ちゅきになっちゃうて。


「あの野郎、キララと仲良さげにしやがって」


「フェニックスの分際で調子に乗りやがって」


「立場を弁えさせてやるか」


 わしがキララと楽しく話していると、突然横槍を入れられてしまう。


「おい、ちょっと上手く乗れるからって調子に乗るなよな」


「そーだそーだ」


「キララから離れろよ」


 急になんじゃこいつら、せっかくキララと楽しくお話しとったのに。

 ってこいつ、さっきクリスと言い合っていたショウ・バーバリアンとかいう奴じゃな。他の二人は取り巻きかの。


 わしは変な言いがかりをしてきたショウ達に、肩を竦めながら答える。


「調子には乗ってないだろ。上手く乗れるのは本当なんだから」


「その態度が調子に乗ってるって言うんだよ。そんなに自信があるなら俺と魔箒で勝負しようぜ」


「ちょっとショウ、やめなよ」


「キララは黙ってろ。バジリスクがフェニックスに舐められる訳にはいかないんだよ。それで、どうなんだよ? 別に断ったって構わねぇんだぜ」


 突然ショウから勝負を申し込まれてしまう。

 それも、下卑た笑みを浮かべながら煽り散らかしてきおった。


 はは~ん、読めたぞ。こやつら、キララに良い所を見せるのと同時にわしの無様な姿を見せつけようとしておるな。


 学園漫画にこやつ等のような悪役は必ずといっていいほど登場するから、こやつ等の考えていることぐらい分かっちゃうんじゃよね。


 いいじゃないか。そっちがそのつもりなら、わしもカッコいいところをキララに見てもらうとするかの。


「いいだろう、その勝負乗った」


「ほう、良い度胸じゃねぇか。セゲール先生、フェニックスの生徒と勝負してもいいですかぁ!?」


「しょ、勝負だって? だ、ダメだよ。今は授業中なんだから……」


「はぁ!?」


 ショウがセゲール氏に許可を得ようとするが、敢え無く断られてしまう。

 なんじゃもう、とんだ肩透かしを食らってしもうたの。


「構わん、やってよし」


「ええ!? ちょ、ジョセフ先生、いいんですか!?」


 横から出てきたジョセフ氏が、わしとショウの勝負を許可してくる。


 この陰険教師、普段はおっかなくて厳しいんじゃが、こういう勝負事に関しては意外に頭が柔らかいんじゃよな。


 ジョセフ氏はわしを横目に、セゲール先生にこう告げる。


「ああ、構わん。この程度なら授業の範囲、揉め事にもならんな」


「さっすがジョセフ先生、話が分かりますね! という事だ凡人、もう逃げられねぇぞ(へへ、キララの前で赤っ恥を晒してやるよ!)」


「別に逃げないって」


 という事で、わしはショウと勝負することになった。


 ぐふふ、青春っぽくなってきたの!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ